Clarisとして初のオープンプラットフォームとなる「FileMaker 19」リリース。同社CEOにクラウド戦略と日本での展開、競合との差別化を聞いた

2020年6月16日

Clarisは、社名をFileMakerから現在のClarisへ変更してからはじめてのFileMakerのメジャーバージョンアップとなる「FileMaker 19」をリリース。そしてFileMaker CloudやClaris Connectを含む「Claris Core」をAWS東京リージョンからの提供開始なども発表しました。

参考:FileMaker CloudがAWS東京リージョンからサービス提供開始。JavaScriptに対応したFileMaker 19も発売

同社の製品はカスタムソリューションを迅速かつ容易に構築できる、いわゆるローコード/ノーコードと呼ばれる分野に属します。

データベースソフトウェアのFileMakerはその代表的な製品の1つであり、さらに同社は2019年8月の社名変更と同時に、サービス連携によるワークフロー構築を実現するクラウドサービス「Stamply」の買収とこれを「Claris Connect」として展開することを発表。ローコード/ノーコード分野のラインナップを充実させることで、同社のポジションをさらに強固なものにしようとしています。

同社はこのローコード/ノーコード市場をどう見ており、これからどのような製品と戦略を展開するつもりなのでしょうか。

Claris CEOおよびクラリス・ジャパン株式会社 社長Brad Freitag(ブラッド フライターグ)氏と、Claris プロダクトマネジメンおよびデザイン担当バイスプレジデントのSrini Gurrapu(シュリニ グラプ)氏に聞きました。

fig ブラッド フライターグ氏(左)、シュリニ グラプ(右)。インタビューはオンラインで行いました

FileMaker 19は同社初のオープンプラットフォーム

―――― 最新バージョンとして登場した「FileMaker 19」のハイライトを教えてください。

フライターグ氏 私たちにとって最初のオープンプラットフォームを提供する、というのがFileMaker 19のハイライトです。FileMakerのJavaScriptライブラリを使うことで、デベロッパーがアドオンやコンポーネントを構築できるようになりました。

プロフェッショナルなデベロッパーが開発したアドオンやコンポーネントを用いることで、プロフェッショナルではない、いわゆるシチズンデベロッパーの方々はFileMaker 19を基盤にリッチなアプリケーションを作れるようになります。

オンプレミス版のFileMakerで構築したソリューションは、ワンクリックでFileMaker Cloudへデプロイできるようになっています。

またAppleの機械学習ライブラリであるCoreMLによる機械学習モデルを組み込んで、レコメンデーションなどを実現できます。

5月21日にはAWSの東京データセンターにClaris Coreを載せる形での展開も始めます。

―――― グローバルなクラウド戦略の中で、AWS東京データセンターでの展開はどのような位置づけなのでしょうか?

フライターグ氏 私たちのグローバルなクラウド戦略には2つの側面があります。1つは各地域のニュアンスを大事にすることです。具体的には、それぞれの地域でのデータの主権の問題に対応できるということやローカライズ、そしてパフォーマンスのことも含めて考えています。ですので、アメリカ、アジア、欧州など、できるだけ多くのデータセンターでの展開を考えています。

もう1つは、クラウドの独立性を担保するということです。現在AWSとは密接な連携をしていますが、私たちの製品はMicrosoft AzureでもGoogle Cloudでも動くように設計されており、将来必要があればそれらとも連携していきます。

グラプ氏 ご存じの通りクラウドにはアジリティやエラスティシティといった特長も備えています。私たちの製品においてもこうした特長はそのまま利用できていますし、サーバの管理運用なども不要です。そのうえでFileMakerは、オンプレミスでも、プライベートクラウドでも、パブリッククラウドでも一貫した体験を得ることができます。

―――― そういえばClaris本社社長のフライターグさんはクラリス・ジャパンの社長も兼任していますね。

フライターグ氏 日本での戦略や日本でFileMakerが長い期間成功してきたこと、そして私たちにとって日本はアメリカに次いで2番目のマーケットであることを考えても、日本におけるガバナンスをもっと強化することとして、このようなアサインメントが適切だろうと考えた結果です。

アプリケーションの需要に追いつくにはローコード/ノーコードが必須

―――― Claris Connectについての日本での展開についても教えてください。

フライターグ氏 Claris Connectの戦略は、できるだけ多くのコネクタを開発するところにあります。そして私たちが重要だと考えている、グローバルにおけるCRMや課金などのサービスとのコネクタは揃いました。

一方で日本市場で人気のあるサービスも存在しています。例えば電子契約サービスの「クラウドサイン」やチャットサービスの「Chatwork」などです。こうしたものにも対応していきたいと考え、今回こうしたサービスに対応したコネクタのリリースも発表しました。

今後も日本で人気のあるサービスに対応したコネクタをリリースしたいと考えています。また、コネクタキットによってパートナー自身がコネクタを作れるようにもしています。

―――― FileMakerとClaris Connectは代表的なローコード/ノーコードツールの1つです。Publickeyでも多くの読者がこの分野に注目しています。御社はこのローコード/ノーコードツールについてどう見ているのでしょう?

フライターグ氏 プロフェッショナルデベロッパーにとって、ローコード/ノーコードツールが脅威になる、ということはないでしょう。この数年を見ても、コンピュータサイエンスの知識を持っている人の重要さはますます高まっていますし、技術的なイノベーションが進む中でその需要はますます高まっています。

一方で、これからの10年を考えるとさらに多くのアプリケーション開発が求められると見られています。この需要に対応するにはローコードツールを活用するしかないでしょう。

組織の中でガバナンスポリシーをきちんと設定し管理できるようにしつつ、ローコードツールなどでプロやシチズンデベロッパーがアプリケーションを作っていかないと需要に追い付けないと思います。これは弊社だけでなく市場全体がそうした動きになっていると思います。

Googleやマイクロソフトとの差別化は?

―――― GoogleはApp Sheetを買収し、マイクロソフトもPower Toolsを強化するなど、ローコード/ノーコード市場に注力しています。こうした競合他社に対してClarisはどう差別化を図っていきますか?

フライターグ氏 私たちはプロフェッショナルからシチズンデベロッパーにまで対応した、もっとも包括的な製品群を提供しているという強みがあります。コミュニティにも長年にわたってコミットしてきました。

このコミットメントは、ローコード/ノーコードという言葉が登場する前からずっとしてきたものです。そしてFileMaker 19では将来のデベロッパーによる利用にまで見据えた機能が入っています。こうしたことが私たちの強みです。

また、マーケットプレイスにもさらに投資をしていきます。プロのデベロッパーが開発したコンポーネントやアドオンを公開し、シチズンデベロッパーが利用するためのマーケットプレイスが今後重要になるでしょう。これに投資、強化していくことで、私たちの将来はさらに強いものになると考えています。

―――― ありがとうございました。

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Junichi Niino(jniino)
IT系の雑誌編集者、オンラインメディア発行人を経て独立。2009年にPublickeyを開始しました。
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