ソフトウェアテストの実行を機械学習で効率化する。Jenkins作者の川口氏が立ち上げた「Launchable」で実現しようとしていることとは(後編)

2020年6月15日

Jenkinsの作者として知られる川口耕介氏は、昨年米国で新会社「Launchable」を立ち上げ、日本にもその100%子会社であるLaunchable Japanを近日中に立ち上げ予定です。

Jenkinsの登場がテストやビルドの自動化を促進し、ソフトウェアの開発生産性を向上させたことは明らかでしょう。川口氏によると、Launchableは機械学習などの技術を用いてそれをさらに前進させるものだとしています。

インタビューを行った5月末の時点で、同社は米国に6人、日本に4人と10人ほどの体制で製品開発を進めています。

果たしてLaunchableはどのようなビジョンで何を実現しようとしているのか、同社共同創業者兼共同CEOの川口氏と、Launchable Japanのプリンシパルソフトウェアエンジニアの庄司嘉織氏に話を聞きました。本記事は前編に続く後編です。

fig 川口氏(左)と庄司氏(右)。インタビューはオンラインで行いました

Launchableの製品はサービスとして提供する

―――― Jenkinsはオープンソースソフトウェアとして開発されました。Launchableはどのような形で利用可能になるのでしょうか?

川口氏 これはソフトウェアそのものよりもそこに集まっているデータと機械学習のモデルに意義があると思っていて、それを余分な手間をかけずにすぐ使ってもらえるようにするためのは、サービスとして提供するのが一番いいと思うので、そういうの形態を予定しています。

いま、欧米でいくつかの大きな企業のソフトウェア開発部隊と密接なやりとりをして製品検証などをしているので、日本でも製造業とか金融業とかWebサービスの企業とか、日本のソフトウェア開発をしている人たちともいっしょにやりたいなと思っています。

テストについてのこういう問題を抱えている、というところには、ぜひ弊社のWebサイトに来ていただければ一緒にやれるプログラムになっている。

庄司氏 こういうのってデータがすごい大事で、データがあるほど正確になります。川口さんと話しているときに、もしかしたら汎用的なモデルができるかもしれないと。例えば、ここを修正したらここがバグる可能性があるといったようなことが分かるとか。

そういうことが、ベータテストに参加してもらえるほどデータが増えて、みんながハッピーになっていくことになると思うので、貢献いただけると思えるならぜひベータプログラムに参加していただきたいと思います。

fig LaunchableのWebサイト。βテストはここから申し込める

欧米のスタートアップシーンと日本に橋を架けたかった

―――― 川口さんはいま米国に住んでいるので、米国で起業することは自然なことだと思いますが、Launchable Japanを立ち上げた理由はどこにあるのでしょうか。

川口氏 僕も日本のテクノロジーコミュニティとそれなりにつながりがあって、日本にも優秀な技術者がいることは肌感覚として知っていました。

一方で、スタートアップシーンは人のネットワークでできていて、こっちの投資家や起業家のネットワークは日本にまでは広がってなくて、こっちの人たちは日本が視野に入っていない。それがくやしいな、という気持ちもあった。両方を知る数少ない人間としていつか橋を架けたいと思っていました。

そういうと慈善事業みたいに聞こえますが、僕には見えていてほかの人に見えてないものがある、というのは僕にとってアドバンテージだな、とも思ったんですね。

これをうまく活用すればほかの人たちよりうまいことやれる、自分の得意なことを活かすことにもつながるんじゃないかと思って。

エグゼキューションをきちんとできればビジネスとして回せる

―――― Launchableの技術的なビジョンについてはお伺いしてきましたが、すでに資金調達などもされているわけですので、ビジネス上のゴールはイメージされていますか?

川口氏 ゴール、というのが僕の中で必ずしも正しい問いの立て方ではないようにも思っていて、エグゼキューション、実際に世の中に価値を提供するということがきちんとできれば、ビジネスとして回せるようになるはずだと考えています。

そしてビジネスとして回せるようになると、より大きな資源を投入できるようになって、具体的にはより優れたエンジニアやマーケティングのスタッフや、そういうことができることで、さらに大きなインパクトを残せる。

それをきちんとやれば、最終的に、例えば会社買収されるとか、IPOするとか、そういう結果はあとからついてくると思っています。

それよりも、やっていてやりがいを感じるかどうか、ということが大事だと考えています。CloudBeesもまだIPOとかしていませんが、でもあそこで働いた9年間は僕にとってかけがえのない経験をさせてもらって、そういう旅路をまたメンバーと一緒に過ごすことができれば、それは意義あるものだと考えています。

―――― 庄司さんはLaunchable Japan側のエンジニアのまとめ役だとすると、どういうチームにしていきたいですか?

庄司氏 会社が目指している世界は、いい意味でエンジニアに自由を与えるものだと思います。テストに縛られていたものを解放する、そういうところにインパクトを与えられるチームを作るには、自分たちにもインパクトを与えなければならない。エンジニアとして正しくインパクトを出しながら、お互いに刺激を与えられるようなチームを作れたらなあと思っています。

―――― ありがとうございました。

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