マイクロソフト、Linux版の.NETをDocker上でデモ。Visual Studioからリモートデバッグ可能
マイクロソフトは先週開催した同社のイベントConnect();で、.NETコアランタイムと.NET server frameworkのオープンソース化、およびLinux版とMacOS X版オフィシャルディストリビューションのリリースを発表しました。
- [速報]マイクロソフト、サーバサイドの「.NET Core Rutime」と「.NET Framework」のオープンソース化を発表。C#コンパイラやASP.NETなど
- [速報]マイクロソフト、「.NET server framework」のLinuxとMacOS X用オフィシャルディストリビューションを発表。.NETアプリケーションのビルド、実行が可能に
これにあわせて同社は、Linux上のDockerコンテナの上でC#で記述されたASP.NETのアプリケーションを実行し、Visual Studioからリモートデバッグを行う様子をデモで公開しています。
いままでC#やASP.NETといった.NET環境に依存したアプリケーションはWindows Serverでしか実行できませんでした。しかし今後マイクロソフトがオフィシャルな.NET環境をLinuxとMacOS Xで提供することで、.NETアプリケーションはこれらのプラットフォームでも実行可能になります。
Azure→Linux→Docker→.NETランタイム→ASP.NET→Visual Studio
今回のデモは、Microsoft Azureのクラウド上でLinuxを起動、そのDockerエンジンにLinux版の.NETコアランタイム上でASP.NETで開発したアプリケーションを含むDockerイメージをデプロイし、実行するというものです。
デモを行ったのは、マイクロソフトのJay Schmelzer氏。
Microsoft AzureにはDocker Hubが統合され、Dockerイメージがデプロイ可能になります。
WindowsネイティブなDockerクライアントもリリース予定。WindowsクライアントからDockerコマンドでDockerイメージを展開、実行します。
このDockerイメージにはLinux版.NETコアランタイム上のASP.NETアプリケーションが含まれており、アクセスするとWebページが表示されます。
これでMicrosoft Azure上のLinux上のDockerコンテナの上でASP.NETが走っていることになります。
Webページを見ただけでは本当にLinux上で走っているかどうかは分からないので、このASP.NETに対してVisual Studioでアクセスし、リモートサーバ上のコードにブレークポイントを設定します。
Webサイトを操作してからVisual Studioを見ると、ちょうどブレークポイントで実行が止まっています。この状態でOS環境をチェックすると、UNIX上で走っていることが分かります(画面の赤枠は新野による)。
サティア・ナデラ氏の「デベロッパー!デベロッパー!デベロッパー!」
マイクロソフトはこの1カ月、サーバサイドにおける大きな発表を相次いで行いました。
- Dockerと提携し、次期Windows ServerでDocker採用
- .NETコアランタイムと.NET server frameworkのオープンソース化
- Linux版、MacOS X版の.NETコアランタイムと.NET server frameworkのオフィシャルディストリビューションの発表
- フル機能の無料版「Visual Studio Community 2013」の提供開始
これにより今後は主要なサーバOS全てで、.NETアプリケーションが開発、実行できるようになりますし、.NET環境込みでDockerイメージとしてパッケージすれば、簡単に.NETアプリケーションをLinuxやMacOS Xに(そしてDockerに対応したWindowsにも)デプロイできるようになるわけです。
これはデベロッパーに対して.NET環境の魅力を高めると同時に、.NETの開発環境として最高のソフトウェアであるVisual Studioの魅力を高めることになります。さらにMicrosoft Azureも、どんなOSにも対応し、Dockerにも対応し、Visual Studioと緊密に連携できるクラウドとしての魅力をデベロッパーにアピールすることになるでしょう。
マイクロソフトにとって、もっとも大事なビジネス上の資産はWindowsでもVisual Studioでもなく、マイクロソフトテクノロジーのエコシステムを形成するデベロッパーたちです。前CEOのスティーブ・バルマー氏がつねに「デベロッパー!デベロッパー!デベロッパー!」と叫び続けたのは、それが同社にとって本当に重要だからなのです。
そして現CEOのサティア・ナデラ氏も、TechCrunchの記事「MicrosoftのCEO、サティア・ナデラ、Apple、Googleと比較して自社の本質を的確に指摘」の中で、次のように述べたとされています。
私の考えでは、デベロッパーがアプリケーションを開発できるようにするプラットフォームを提供し、また誰であれコンピューティングに関連する人々が所望の成果物を作れるようにする数々のツールを提供するところでこそ、Microsoftが真価を発揮し、本当の差別化を行えるのだと私は考えている。
この1カ月で発表されたさまざまな施策はすべて、いかにマイクロソフトテクノロジーをデベロッパーに対して魅力的に見せるか、という視点で貫かれています。それこそが同社の生命線だとナデラ氏は考えているからです。
ナデラ氏はバルマー氏のように人前で「デベロッパー!デベロッパー!デベロッパー!」と叫ぶことはありません。しかしその代わりに矢継ぎ早に打ち出されたここまでの施策は間違いなく、バルマー氏よりも大声で「デベロッパー!デベロッパー!デベロッパー!」と叫ぶナデラ氏の声が込められているはずです。
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