ITは観光産業をいかに活性化できるか。経営の効率化と外国人旅行者受け入れ ― AIIT起業塾#4 ―[PR]

2016年4月21日

「インバウンド」「爆買い」などの言葉をよく耳にする昨今、ITを観光分野において積極的に活用する動きが高まっています。観光分野に関連する事業・企業とITとの融合、革新を議論する場である「AIIT起業塾#4 観光×IT」が、2015年12月20日、産業技術大学院大学秋葉原サテライトキャンパスで行われました。

観光分野における日本のIT活用は世界に比べ10年以上遅れていると言われます。また、日本の人口減少に伴い、観光業界は海外からの外国人観光客を相手にしなければならない状況になっています。そのため、ITを積極的に活用し、効率よくサービスを提供しなければなりません。「観光×IT」をテーマに、観光分野の現状・課題に対するアプローチを5名の登壇者が講演しました。

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観光の現状とIT活用

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イー・リゾート代表の釼持氏は、国内外の事例とともに観光の現状とIT活用について語りました。氏は、北海道ニセコひらふ地域を含む多くのスキーリゾートを再建してきました。現在は、観光事業のコンサルタントとして活動しています。

日本の人口減少に伴い、日本人観光客のみを相手にすることで観光産業を維持できなくなりつつあります。そのため、今後は外国人観光客をいかに観光地に集めるかが重要になります。その現状について、世界に比べると見劣りがすると氏は言います。実際、フランスやスペインのような観光一流国は対人口比100%を超えています。しかし、日本は対人口比10%(2014年)を超えたところです。今後どこまで伸ばせるかが重要であると氏は主張します。

日本の観光産業が成長するためには、外国人観光客の増加が必要であるとともに、対応の仕組み作りが重要であると氏は指摘します。例として、某居酒屋チェーンのタッチパネルメニューのように、メニューの直訳だけでなく外国人客が安心して利用できる仕組みが挙げられました。このように、実際に目にするものとITの組み合わせで高い満足度を実現することが重要であると氏は語ります。ITで外国人観光客との結びつきを強くした企業が今後勝ち残れると氏は主張します。

観光産業の低い収益性や従事する人材についても氏は言及します。北海道ニセコひらふの場合、外国人観光客の増加により、名産品であるジャガイモ価格や宿泊単価の上昇を実現しました。それは、地域ブランド力の向上でもあります。他地域でこうしたことを実現するには、日本版DMO等による集客体制の構築が今後の鍵となります。

市民×観光×IT

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会津大学(福島県会津若松市)の藤井氏は、新しい観光の形を模索しています。味噌汁を例にした散逸構造に倣い、地域の観光においても対流(対話)が先に存在し、構造がその後に生まれると氏は主張します。

写真のように静的なものではなく、市民の生活のような動的なものを観光資源とすることが重要ではないかと考えています。そのように観光の形を変えるため、ITが効果的ではないかと氏は語ります。生活そのものが観光資源になり得る一方、市民が関わるための入り口を用意しなければならないと氏は言います。例えば、地域の古い写真をデジタル化する場合、写真と関連する物語を高齢者が用意し、デジタル化を若年者が行う形になります。

別の例としては、Data for CITIZENがあります。本Webサイトでは、会津若松市のデータを提供する一方で、市民からのデータリクエストを受け付けています。また、ITはツールであり、データの管理である運用を考慮することの重要性を氏は指摘します。「市民の関与」、「シンプルな運用」と「多言語展開技術の応用」による、ITを活用した今後の地域観光を示唆する内容でした。

観光集客に役立つ海外発のソリューション

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ルックアットミー・ジャパン株式会社の高橋氏は、デジタル資産管理ソフトウェアのLookatmeを中心として観光メディアガイドの現状と今後について講演しました。

観光客は、Webサイト、口コミ等の方法で旅行先を決定します。その内約4割はマスメディアを経由することになります。つまり、観光地への集客のためにはマスメディアへのアピールが重要になります。製作予算・時間が限られるため、マスメディアは番組や記事に無加工で使える写真や動画を必要としています。そのため、版権管理が可能な形でデジタルデータを提供できるツールが望まれていました。

Lookatmeは、こうした要望を満たすソフトウェアです。写真だけでなく動画を扱うこともでき、ダウンロード履歴の管理等の機能も備えています。マスメディアは、海外から直接アクセスし、必要な写真・動画を利用できます。ルックアットミー・ジャパンが2015年11月に設立され、今後はR&D機能をもつ見通しであるとのことです。

外国人旅行者受け入れ環境の構築に活きるSquare

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Square株式会社の川北氏は、決済サービスの現状や今後の展望について語りました。

日本では現金以外による支払の割合が低いと氏は指摘します。当然ながら、そのような国に来る外国人観光客は支払方法に困ることになります。事業者は、現金以外の支払方法に対応しているだけでなく、それを明確に表示することも重要です。

クレジットカードの導入には、導入・維持費用の発生、入金までの時間差等のデメリットが伴います。Squareは、そうした障壁を取り除くべく、アメリカ、カナダと日本において同社のミッションである“Make Commerce Easy”に取り組んできました。実際、野沢温泉村や京都の小規模事業者等が導入しました。

ICカードに対応したクレジットカードのリーダーやApple Payへの対応等、常に変化するという姿勢をもつ同社の今後が楽しみであると感じました。

クラウド活用による旅館改革への挑戦

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陣屋コネクト(神奈川県秦野市)の宮崎氏は、老舗旅館の経営再建にITを活用した体験と、その過程で創りだしたシステムである陣屋コネクトについて講演しました。紙の台帳による予約管理を行っていた旅館において、6年前に現状分析を行いました。その結果、可能な業務をコンピュータに任せるという方針を立て、情報の見える化を目指すことにしました。その結果作り上げたのが陣屋コネクトです。

陣屋コネクトにより、ホテル・旅館で発生する業務に必要なすべての機能を管理できると氏は主張します。例えば、到着した顧客情報の反映や清掃が必要な部屋の確認等の業務が該当します。同システムはクラウドで提供されているため、PC、タブレット等により、これらの情報を「いつでも」、「どこでも」利用者が確認できます。

開発以外に普及の重要性についても氏は言及します。陣屋旅館ではトップである宮崎氏が紙やホワイトボードを廃止し、率先してシステムを使うことで普及に努めました。結果として普及に成功し、日々の業務を以前の半分以下の人数で回していると言います。

他の事業者にも使ってもらうため、ソリューション専門の会社である陣屋コネクトを興しました。今後はIoTやビッグデータ等の活用も試していくと氏は語ります。

パネルディスカッション

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5名の登壇者がパネラーとなり、会場の質問への回答や観光の課題・展望等について語りました。

釼持氏は、アジアのマーケットについての意見として、中国より一人当たりの消費が大きい国であるベトナムと、その他にタイ、マレーシアを含む3ヶ国の外国人観光客が伸びてくると予想するとともに、香港からの観光客数の減少についても言及します。また、民泊について、悪意をもって始められるようになったのが問題であると指摘します。マンション問題については、管理規則を確認し、事前の予防が重要であると言います。

高橋氏は、Lookatmeの機能を追加で紹介しました。カテゴリやアルバムという分類機能の他、提供側がマスメディアへリーチできるキャンペーン機能があります。それを使うと、新着写真・動画のプッシュ通知を既存ユーザへ送ることができます。

藤井氏は、行政からの権限委譲の例として、震災時の石巻と多賀城の例を挙げました。当時ボランティアの管理をした多賀城ではなく、行政による管理を早々に諦めた石巻の方が、ボランティア経験者が現地に関与し続けています。また、関わりをもった役場担当者の地位が向上することで、行政の外への権限委譲がしやすくなると指摘します。対話によりネットワークを作ることで、後のアウトプットやプロセスが発生します。下(対話)の部分が大事であり、戦略的にではなく、とりあえず対話を行っていると言います。

川北氏は、Squareの日本進出が遅くなった理由として、認知度を上げるためのカード会社との業務提携やクレジットカード使用率推移予想等に時間を費やしたことを挙げました。また、コストダウンについての質問への回答のなかで印象的だったのが、本格的なカード決済の導入ではなく、手軽に始められるというのがSquareの特長であるという言葉です。

宮崎氏は、現場からの意見をもとに陣屋コネクトを改良しています。しかし、現場からの意見をすべて反映するではなく、時には運用を変更する場合もあると言います。そのなかで、陣屋旅館でも使いたい機能については優先順位を高めるということをしています。

事業者は単純な方法や手順でITを活用できる時代であり、観光業界におけるITの活用が今後も進んでいく可能性を感じられるイベントでした。

AIIT起業塾について

産業技術大学院大学が主催する「AIIT起業塾」は、広く一般の方々が参加できるオープンな勉強会です。IT・デザイン・マネジメントなどを活用し、様々な産業分野で新しい事業構築や問題解決をしている先駆者達が登壇し、講演します。また、自由なディスカッションする機会も設けられています。

Twitterの ハッシュタグ「#aiit_startup」では新しい情報だけでなく随時質問や要望を受け付けています。今後も引き続き開催予定ですので、ぜひご参加ください。

また、この「AIIT起業塾」は、文部科学省の「高度人材養成のための社会人学び直し大学院プログラム」に採択された産業技術大学院大学「次世代成長産業分野での事業開発・事業改革のための高度人材養成プログラム」の一環として開催されました。

執筆:吉岡明日葉=産業技術大学院大学 修了生

(本記事は産業技術大学院大学提供のタイアップ記事です)

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