アジャイル開発の契約は「準委任」が適切、契約前にユーザーとベンダの共通理解が大事。IPAが「モデル契約書」やチェックリストなど公開。

2020年4月1日

情報処理推進機構(IPA)は、ユーザー企業が開発ベンダにアジャイル開発手法を用いたシステム開発を発注する際の、契約書の見本などを含む「「アジャイル開発版『情報システム・モデル取引・契約書』(本版)」を公開しました

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本作はスクラムを想定したアジャイル開発を外部委託する際の、契約条項とその解説、および補足資料で構成されたもの。

IPAは本作を作成するにあたり、ユーザー企業とベンダ企業が緊密に協働しながら適切に開発を進めることができるモデル契約となるように、ユーザー企業、ベンダ企業、業界団体、法律専門家の参画を得て検討を重ねたとしています。

契約前チェックリストも

本作の作成に関わったIPAの「DX対応モデル契約見直し検討ワーキンググループは」、ユーザー企業とベンダが契約する前に、以下の2つのことを理解しておくことが必要だと説明します。

  • ユーザ企業及びベンダ企業が、開発に着手する前にアジャイル開発に関する適切な理解を有していることを確認し、その活用に対する期待を共有しておくこと
  • 相互にリスペクトし、密にコミュニケーションしながらプロダクトのビジョンを共有して緊密に協働しながら開発を進めること

そのうえで、ユーザー企業がアジャイル開発の利点を生かすには、十分なスキルとノウハウを有するベンダ企業を選定するだけでは足りず、プロダクトの方向性及び内容を決めるための主体的かつ積極的な関与が必要となり、相応の負担を伴うとも指摘。

そして契約前にユーザー企業と開発ベンダのあいだで、アジャイル開発を進めるうえで重要な理解が共有されているかどうかをチェックする「契約前チェックリスト」も本作に含まれています。

契約前チェックリストには以下のような項目が含まれています。

  • プロジェクトの目的・ゴール
  • プロダクトのビジョン
  • アジャイル開発に関する理解
  • 開発対象
  • 初期計画
  • 本契約に関する理解
  • 体制(共通)
  • ユーザーの体制
  • ベンダの体制

契約は「準委任契約」が前提

モデル契約書は、あらかじめ特定した成果物の完成に対して対価を支払う「請負契約」ではなく、ベンダ企業が専門家として業務を遂行すること自体に対価を支払う「準委任契約」を前提として作られています。

準委任契約を前提とした理由として、アジャイル開発では開発プロセスの中で、開発する機能の追加・変更や、その優先順位の変更が生じることがあること、プロダクト(一 部の場合もある)を一旦リリースした後も、利用者からのフィードバックに対応するなど、さらなる機能追加や改善が行われることがあること、アジャイル開発の強みとしてその時々にユーザ企業が真に必要としてい る価値を優先して実現できることがあること、などが挙げられています。

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