Googleはなぜノーコード開発ツールのAppSheetを買収し、1年半前に正式版になったばかりのApp Makerを終了させるのか?

2020年1月29日

Googleは先日、コーディング不要でアプリケーション開発ができる「AppSheet」の買収を発表しました。しかしGoogleはノーコード開発ツールのApp Makerを2018年から提供しており、同社の業務アプリケーション開発ツールの主役がどちらになるのか疑問が持たれていました。

その疑問に対し、Googleは明確な答えを明らかにしました。App Makerの終了を発表したのです

これでGoogleがG Suite向けに提供するノーコード開発ツールはAppSheetが主役になることが明確になりました(そのほかにFormsのような簡易なツールも引き続き提供されます)。

App Makerは2018年に正式版となった開発ツールですが、約1年半で終了が宣言されることとなりました。今後App Makerは4月に新アプリ開発ができなくなり、2021年1月にサービス提供が終了となります。

GoogleはApp Makerを終了する理由を「Due to low usage」(利用率が低かった)からと説明しています。なぜApp Makerの利用率が低く、そしてAppSheetではそれが改善できるとGoogleは考えるのでしょうか?

それは、App MakerとAppSheetのそれぞれの特徴から推測できると思います。

AppSheetはなぜ有望なのか?

App Makerは、おおまかにいえば従来のプログラマ向けビジュアル開発ツールの延長線上にあるようなツールでした。画面にフィールドを並べ、プロパティによって設定を行い、データソースと接続する、などの操作がマウスでできる、というものです。

fig App Makerは画面左のウィジェットを中央に並べて画面と機能を作っていく

一方、AppSheetはまずデータソースを設定します。するとAppSheetがそのデータソースのフィールド名などを基にアプリケーションの種類やユーザーインターフェイスでの見せ方を機械学習などを用いて推測し、こんなアプリケーションがよいのではないか? というプロトタイプアプリケーションが自動生成されます。

fig2AppSheetではデータソースを設定すると、自動的に画面右のプロトタイプが生成される

開発者は、それをカスタマイズしていくのです。

プロトタイプとして生成されるアプリケーションは、最初はデータの参照機能だけが備わっています。例えばこれに、データの「追加」「変更」「削除」機能を追加するという設定を画面上で行うと、自動的にこれらに対応するボタンが画面の適切な位置に追加され、それぞれのボタンを押すと画面フィールド上でデータの追加や変更、削除もできるようになっていて、データベースにも反映されるようにアプリケーションが自動的に変更される、ということになります。

AppSheetのほうがよりモダンで、機械学習などによる発展の余地があり、しかもプログラマでないユーザーにとっても開発しやすいツールである、といえるのではないでしょうか。

またAppSheetはG Suiteだけでなく、Office 365やSalesforceなどのSaaS、AWSやAzureのデータベースサービスなどさまざまなプラットフォームに引き続き対応していきます。これにより今後のユーザー獲得への期待とそれをG Suiteユーザーへと転化できる可能性の面でも、Googleにとって魅力的なものであると考えられたのではないでしょうか。

Tags: Google Cloud プログラミング言語 Google

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Junichi Niino(jniino)
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