「すべてのインテリジェンスはエッジのx86コンピュータに移行する」。VMwareのマーチン・カサド氏が語る、ネットワークの技術トレンド

2013年4月5日

OpenFlowのデプロイは、オーバーレイ型とホップ・バイ・ホップ型の2つがあります。オーバーレイ型を実装する代表的な製品が、VMwareに昨年買収されたNicira NetworksのNVPです。先月、VMware製品に統合され、VMware NSXとなりました。

「正しいアプローチはオープンソース」:カサド氏に聞く、VMware NSXはどこまでオープンか - @IT

Niciraはなぜオーバーレイ型を選択したのでしょうか。Niciraの創業者で、現VMwareネットワークチーフアーキテクトを務めるマーティン・カサド(Martin Casado)氏へのインタビューが、@ITの記事「カサド氏に聞く、VMware NSXはどこまでオープンか」として掲載されています。興味深い発言が続いていますので、@ITの許可を得て引用します。

すべてのインテリジェンスはエッジのx86コンピュータに移行する

カサド氏は、ホップ・バイ・ホップ形式で使われるような物理ネットワーク機器をOpenFlowで制御することには取り組まないのか? との質問に対し、物理的なネットワークは単に帯域幅を提供するパイプ役に徹する存在になってきており、「すべてのインテリジェンスはエッジのx86コンピュータに移行する。これがマクロトレンドだ」と言い切りました。

カサド氏の発言。

 ネットワーキングに関するマクロなトレンドとして、クラウドやWeb 2.0の大規模デー<タセンターにおいては、物理ネットワークが非常にシンプルでフラットな帯域幅を提供するだけの存在になってきた。こうしたデータセンターにおける物理ネットワークは、トラフィックをポイントAからポイントBに移動する以外にほとんど何もしない。さらに、データセンター内では、トラフィックのマトリックスや通信タイプに関係なく、こうした方法が最適か最適に近いということは、数学的に示せる。

 ヴイエムウェアとも、Niciraとも、OpenFlowとも関係なく、すべてのインテリジェンスはエッジのx86コンピュータに移行する。これがマクロトレンドだ。エッジで動くサーバはセグメント化やセキュリティ、ビリング、アカウンティングを実行できる。これはソフトウェアに機能をプッシュできるという素晴らしいモデルであると同時に、パフォーマンスの面からいっても最適解だといる。われわれはNSXで、これと同じことをやろうとしている。われわれは物理ネットワークが生の帯域幅だという前提のもとで、インテリジェンスをエッジのx86に移行する。

 Googleがやっているように、OpenFlowをWANのコアに使うのはとても面白い。しかし、これをそのまま、データセンターには持ち込めない。データセンター内で、技術的にこれを適切に実行することはできないと私は考える。常時変化するトラフィックパターンに追従することばかりを考えなければならないからだ。従って私は、オーバーレイが正しいアプローチだと思っている。エッジオーバーレイを使っているかどうかにかかわらず、すべての最大級のデータセンターはわれわれと同じアプローチをとっている。

QoSやトラフィックのフロー制御などのインテリジェンスの機能は、これまでスイッチやルータ、ファイアウォールなどのネットワーク機器に埋め込まれていました。カサド氏は、そうしたインテリジェンスはエッジのx86サーバ上の仮想スイッチへと移行し、物理ネットワーク機器はトラフィックをポイントAからポイントBへ届けるだけのシンプルなものになってきている、と説明しているのです。だから、オーバーレイを選択したのだと。

しかしこうしたアーキテクチャ上の優劣ではなく、そろそろ製品が顧客にどう役に立つかを話そう、とカサド氏。

 こういう議論は際限がない。ある時点でアーキテクチャについて語るのはやめ、顧客にとっての価値や顧客事例での実証について語るべきだ。これには議論の余地がないからだ。ハイパーバイザの初期にも、完全仮想化か準仮想化かという議論があった。しかし今では、だれも気にすることはない。

 実際の顧客における導入例に基づいて、特定の製品の優劣を語るほうが、はるかに話しやすい。われわれはすでに、サービスチェイニングやQoS、SLAを備えた多数の本格導入例を持っている。

 私自身は、基盤技術について語ることが苦ではない。だが、それは人々を混乱させやすい。私が心待ちにしているのは、今後基盤技術よりも、実際に製品同士を比較できるようになることだ。本格提供が進められてきたのは、実質的にはわれわれの製品のみだ。他の製品が出てくれば、横並びで比較できるようになる。そうすれば、技術レベルでの正当化というゲームをプレイする必要がなくなる。

カサド氏の、技術だけでなく製品についての大きな自信が伝わってきます。

Software-Defined Networkやネットワーク仮想化の市場はこれからが本番。彼らの製品が市場でどう評価されていくのでしょうか。

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