GraalVMは今後Javaとは独立してバージョンアップへ。Java以外のPythonやJavaScriptに注力する方針を発表
オラクルはGraalVMの新たな方向性として、これまでJavaと同期させていたバージョンアップのタイミングを見直してGraalVM単独のタイミングでバージョンアップをすること、そして今後はJava以外の言語、例えばPython(GraalPy)やJavaScript(GraalJS)などに注力することを明らかにしました。

GraalVMはJavaエコシステムトレインに乗っていた
GrallVMはOracle Labの実験的プロジェクトとして登場した、複数のプログラミング言語を実行する機能などを備えた高性能なランタイム実装です。
Graal JITコンパイラや事前(AOT)コンパイラなどを備えた高性能なJava実行系に加えて、Graal JITコンパイラ上に構築されたTruffleと呼ばれる言語実装フレームワークを用いてJavaScript、Python、Rubyなどを始めとした複数のプログラミング言語の実行系も備えています。
そしてGraalVMは、2023年に無償の「Oracle GraalVM」ディストリビューションの提供が始まると同時に、GraalVMディストリビューションのバージョンアップをJavaのバージョンアップと同期させてきました。
Javaがバージョンアップするそのタイミングで、OpenJDKやOracle JDKと同じくGraalVMもバージョンアップし、最新機能が利用できるようになったのです。
このように複数のソフトウェアが同じタイミングでバージョンを揃えてリリースされることを、複数の客車を接続した列車(Train)に例えて「リリーストレイン」(Release Train)と表現することがあります。
つまり2023年以後、GraalVMはJavaエコシステムにおいてリリーストレインを構成していたと言えます。
今回の発表は、GraalVMをこのJavaエコシステムのリリーストレインから切り離す、ということです。つまりGraalVMのバージョンアップサイクルをJavaのサイクルから切り離し、GraalVMが独立したバージョンアップとリリースサイクルを持つことを意味します。
Javaランタイムの取り組みはProject Leydenに集中
GraalVMがJavaエコシステムトレインから切り離される理由として、GraalVMの優れたJITやAOTコンパイラの技術がOpenJDKへ移転されてきているという点が挙げられます。
この技術移転開始は2022年に発表されており、OpenJDKのProject Leydenでいまも進行中です。
参考:オラクル、OpenJDKに静的なネイティブイメージの生成機能を組み込む方針を明らかに。GraalVMのOpenJDKへのコントリビュートで
オラクルはこのProject Leydenの進捗状況に基づいて、今後のJavaランタイムの取り組みはProject Leydenを始めとするOpenJDKに集中する時期が来たのだとしています。
この説明通り、今後のJavaランタイムの進化はOpenJDKに集中することになるのでしょう。
GraalVMは今後PythonやJavaScriptなどに注力
では今後のGraalVMは何にフォーカスするのかというと、今後はJava以外の言語、例えばPython(GraalPy)やJavaScript(GraalJS)などにフォーカスすることを明らかにしています。
Javaのバージョンアップに歩調を合わせる必要がなくなることで、それらの人材やリソースを他言語の実行系の進化に振り分けることができるようになるのでしょう。
今後のGraalVMの詳細については別途発表があるとのことです。