クラウドネイティブのためのKubernetesなどをテレコム基盤にどう適用するのか? その課題やリスクとは。CNTOM 2023[PR]

2024年1月16日

通信事業者や通信機器メーカー、クラウド事業者、オープンソース開発者らを集め、今後のネットワークの進化にむけた技術や標準化およびユースケースを具体的に紐付ける議論を行う場として、イベント「Cloud Native Telecom Operator Meetup 2023」(以下、CNTOM 2023)が、11月28日に東京⼤学 山上会館で行われました。

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国内では通信事業者による5Gネットワークのサービスが本格化している一方で、このイベントではその先を見据え、次世代の6Gや通信インフラのオープン化やクラウドネイティブ化に関する議論が行われました。

この記事ではCNTOM 2023で行われたセッションの中から、主要なセッションをピックアップして内容をダイジェストで紹介していきましょう。

6G and Open RAN Standards

基調講演1として行われたVIAVI Solutions 千葉恒彦氏の「6G and Open RAN Standards」は、「6G」がどのようなネットワークを目指すのかを示す内容でした。

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千葉氏によると、国際的な無線周波数資源や衛星軌道資源などを管理する「ITU-R」(国際電気通信連合 無線通信部門)による6Gのユーセージシナリオでは、5GのユーセージシナリオであったeMBB(enhanced Mobile Broadband:拡張されたモバイルブロードバンド)、mMTC(massive Machine Type Communication:大量の端末によるコミュニケーション)、URLLC(Ultra-Reliable and Low Latency Communications:超高信頼かつ低レイテンシ)がそれぞれ、Immersive Communicaton(没入的コミュニケーション)、Massive Communication(大規模コミュニケーション)、HRLLC(Hyper-Reliable and Low Latency Communications(圧倒的高信頼かつ低レイテンシ)に新たに置き換えられ、さらに新たに次の3つ、「Ubiquitous Connectivity」(ユビキタスコネクティビティ)、「Intagrated AI and Communication」(AIとコミュニケーションの統合)、Integrated Snesing and Communication(センシングとコミュニケーションの統合)が加えられ、より高性能で高機能な方向に進むことが示されました。

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その上で、「Sustainability」としてあらゆる機器において省エネルギーを意識することなどを始めとして、「Connecting the unconnected」「Ubiquitous Intelligence」「Security/privacy/resillience」などの要素も重視されるとのこと。

「もともと5Gにあったものをもっと高機能にしていきましょう、というのが基本的に6Gだと思っていただければと思います。当然ですけれど、AIやセンシングといったところはクラウドでどう運用していくかが非常に密接に関係します。つまり6Gでは、ある特定の機能をクラウド化するという問題ではなく、全てにおいてクラウドが非常に大きなトピックになってます」(千葉氏)

さらに6Gに向けて、これまではブラックボックスとなっていたRAN(Radio Access Network:基地局などの無線アクセスネットワーク)もオープンにしていかないとクラウドネイティブを実現するのが難しいため、ホワイトボックス化し構築にオープンソースも使えるようにするという流れが既にあり、O-RANアライアンスが重要な役割を果たしている、と千葉氏は話しました。

経営の視点からクラウドネイティブを考える

続いて「経営の視点からクラウドネイティブを考える」と題された基調講演2に登壇したのは株式会社 企(くわだて)のクロサカタツヤ氏です。

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クロサカ氏は2年前のCloud Operator Days Tokyo 2021ではパネルディスカッションのモデレータとして登壇し、昨年のCloud Operator Days Tokyo 2022では基調講演に登壇しており、今回で3年連続の登壇となります。

クロサカ氏は、4Gまではユーザーが人間であると想定した上でいかに効率よくサービスを提供すればいいかを考えておけばよかったが、今起きているのは、それだけでは問題がすまないということだと指摘します。

それが「産業のワイヤレス化」です。産業のワイヤレス化とは、ビジネスユーザーが無線や通信を使って自分たちが持っているサービスを提供していくのかということ。2020年代後半から2030年代に想定されるサービスの例として、人口動態変化に伴う都市機能の改善を担うスマートシティや、MaaS(Mobility as a Service)によるモビリティサービスの変革、ヘルスケアのリアルタイム化などが挙げられました。

クロサカ氏は、こうしたユースケースに対するケイパビリティをどう確保していくのかが重要だとし、そうしたなかでユーザー企業が求めているのは、特定事業者や技術に依存しない自由や、通信ネットワーク上での信頼の確立、売り上げ効率の改善、そして資源に対するリスクヘッジとしての環境対応などだと説明します。

こうしたさまざまな要求を実現するためにクラウドネイティブなアプローチは非常にフィットしているのではないか、として、会場に集まった聴衆に対して「皆さんに出世していただかなくちゃいけない」と呼びかけました。

クラウドネイティブなテレコム基盤にまつわるよもやま話

続いて1つ目のパネルディスカッション「クラウドネイティブなテレコム基盤にまつわるよもやま話」では、もともとクラウドネイティブなアプリケーション基盤のために開発されたKubernetesが、それとは異なる要件を持つテレコムにおける使用に向いているかどうか、などの議論がソフトバンク、KDDI、楽天モバイルのエンジニアのあいだで交わされました。

fig写真左から、ソフトバンク株式会社 川上雄也氏(モデレータ)。ソフトバンク株式会社 高野祐介氏、楽天モバイル株式会社 外山達也氏、KDDI株式会社 辻広志氏

モデレータの川上氏は、クラウドネイティブなシステムでのテレコムにおける独特の要件として、顧客に提供している通信サービスのネットワークと、その対向となる通信システムのネットワークでIPアドレスの重複が発生することや、信頼性要件として通信サービスのネットワークと保守のためのネットワークの分離などが挙げられるとしました。

これに対してソフトバンクの高野氏は、現時点でのソリューションとして、IPアドレスの重複については通信サービスのシステムと通信システムでの対向のNATを介すこと、もしくはMultusと呼ばれるKubernetesのプラグインを用いてPodに複数のネットワークインターフェイスを定義すること、などが考えられるとしました。

KDDIの辻氏は、たしかにテレコムの要件をKubernetesで実現するのは難しいとしながらも、コンテナでやるという流れからは逃れられないところがあり、こうしたソリューションでいくしかないのかな、と発言。

楽天モバイルの外山氏も、テレコム向けの実装をコミュニティが取り込んでいく、改善していくような動きがあれば嬉しいと、現在のKubernetesでテレコム業界が求めているさまざまな要件を満たすにはコミュニティの活動も含めて多くの課題が残されているとしました。

クラウドネイティブの成功例から学ぶ

その後、日本IBM、レッドハット、VMwareなど主要ベンダのテレコム向けソリューションの紹介を挟みつつ、さらに3つのパネルディスカッションが行われています。

パネルディスカッション2の「クラウドネイティブの成功例から学ぶテレコムクラウドが向かうべき方向性」では、パネリストとしてAWS上で自社サービスを開発している楽天ラクマ 西野翔太氏と、クラウドでのコンサルティングやシステムインテグレーションなどを行っているクラスメソッドの佐藤雅樹氏の2名が、楽天モバイル 壬生亮太氏の司会により、それぞれのクラウドネイティブな開発における経験談や教訓を話しました。

楽天ラクマでは3年かけて自社のフリマサービスのシステムをクラウドネイティブ化したと説明。その理由として、コンテナ化によって大規模な開発チームでの開発やテストが容易になり、環境もスケールしやすいためだと説明されました。

クラスメソッドの佐藤氏は、顧客がクラウド化を進める要因として、オンプレミスだとサーバなどの調達に時間がかかるが、クラウドではすぐに環境が構築できるためスピードが高まることが挙げられると説明。

その後、クラウド上での開発チームの体制や運用のアジリティ、クラウドならではの運用やデプロイなどを中心に議論が進む一方で、テレコム業界における堅牢なシステム運用ゆえに時間がかかる運用プロセスとの違いに関する指摘などが行われました。

クラウドネイティブなテレコムの運用を考える

パネルディスカッション3の「クラウドネイティブなテレコムの運用を考える」では、KDDIの辻広志氏がモデレータ、楽天モバイルの岡田淳氏、KDDI木場仁美氏、NTTコム エンジニアリングの山下昴氏が登壇。

テレコムにおける運用自動化、CI/CD、GitOpsといったクラウドネイティブな運用についての議論の中で、NTTコム エンジニアリングの山下氏は基盤設備の故障警報が発生した場合に、状態確認、復旧作業、復旧確認などを人手を介さずに行えるようにしたところ、人手を介してやっていた場合よりも15倍以上迅速に対応できるようになったという取り組みを紹介。

KDDI木場氏は、KubernetesのクラスタをVNF(Virtual Network Function)としてデプロイするためのパッケージを開発し、その中味をGitで管理していることを紹介しました。

サービス継続のためのお困り事座談会

最後のパネルディスカッション「サービス継続のためのお困り事座談会~複雑化したシステムの中で、各々要素のライフサイクル管理難しくないですか~」は、ハードウェアやOpenStack、Kubernetesのような基盤ソフトウェア、そしてその上で稼働する多数のアプリケーションのそれぞれが独自のアップデートのタイミングなどを持ち、異なるライフサイクルが組み合わさっている大規模なシステム、しかもテレコムの要件として基本的に止めることができない高信頼性が要求されるシステムの運用について、悩みを共有しようという内容でした。

ソフトバンクの高野祐介氏は、Kubernetesのアップデートサイクルが6カ月ごとなのに対して、その上に載っているアプリケーションはKubernetesのバージョンが上がるたびに動作確認が必要だが、そのテストには何カ月もかかってしまうため、テストが終わる頃にはもうすぐ次のKuberneesのバージョンが出てしまう、という悩みを語り、いくつかの対策は考えられるものの、いまのところ対応に正解はないとしました。

NTTコミュニケーションズの梶浦悠生氏は、利用していたオープンソースソフトウェアのメンテナンスをベンダと協力しつつ自分たちでも積極的に行っていたが、そのプロジェクト本体のほうでメンテナーがいなくなってしまったと発言。自分たちで自由にコントリビューションするパスがなくなってしまい、オープンソースを利用する際の難しさに直面し、これについてすごく悩んでいるところだと説明しました。

クラウドネイティブをテレコムに適用する課題を共有

本イベントは全体を通して、もともとインターネットアプリケーションや業務アプリケーションのために構築されてきたクラウドネイティブのソフトウェア群を、テレコムという異なる要件のシステムに適用する際の課題やリスクが、キャリアやベンダにおいて共有されるものになったといえるでしょう。

Cloud Native Telecom Operator Meetup 2023 (CNTOM 2023)

(この記事はCloud Native Telecom Operator Meetup実行委員会の提供によるタイアップ記事です)

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Junichi Niino(jniino)
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