国内通信キャリアの現役エンジニアが語る、通信キャリアにおけるクラウドネイティブ化の現実と課題。Cloud Operator Days Tokyo 2021[PR]

2021年9月28日

クラウドの運用者に光を当てようというオンラインイベント「Cloud Operator Days Tokyo 2021」(CODT2021)では7月中旬から8月下旬まで60のセッションがオンデマンド配信されました。

そしてこのイベントのクロージングとも言えるライブイベントが8月27日に開催され、2つの基調講演、2つのパネルディスカッション、そして優秀なセッションを表彰するアワードセレモニーなどが行われました。

1つ目の基調講演として行われたKubernetesプロジェクトの共同設立者 クレイグ・マクラッキー氏によるセッション「Kubernetes and the Cloud Native Journey」の内容は、別の記事「Kubernetesは、ITを「チケットドリブン」から「インテントドリブン」へ変えていく。Cloud Operator Days Tokyo基調講演」で紹介していますので、ぜひご覧ください。

この記事ではそのライブイベントから、パネルディスカッションの1つとしてCODT2021の共催で行われた「Cloud Native Telecom Operator Meetup 2021」(CNTOM2021)のパネルディスカッション「あれからどうなった?ソフトウェア化(Cloud Native)のウソホント」と、優秀なセッションを表彰するアワードセレモニーの内容をダイジェストで紹介しましょう。

あれからどうなった?ソフトウェア化(Cloud Native)のウソホント

Webサービスや業務アプリケーションにおけるクラウドネイティブ化やクラウドの利用は、今後のあるべき姿であるとしてすでに多くのIT技術者によって受け入れつつあります。

では、Webサービスや業務アプリケーションとは求められる性能、機能、信頼性などの要件が大きく異なるとされる通信事業者にとって、クラウドネイティブ化やクラウドの利用における現状や課題はどうなっているのでしょうか?

5G時代にむけた通信事業者のネットワークインフラの進化について技術・標準化・オープンソース・アカデミックの観点から議論を行う会議として行われたCNTOM2021では、8月27日に行われたライブイベントで、パネルディスカッション「あれからどうなった?ソフトウェア化(Cloud Native)のウソホント」が行われました。

ここでは、ソフトバンク、KDDI、NTTドコモ、楽天モバイルのそれぞれの現場で活躍しているエンジニアが登壇して行われたディスカッションの内容の一部をダイジェストで紹介しましょう。

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クロサカ氏 株式会社 企(くわだて)のクロサカタツヤと申します。このセッションのモデレータを務めさせていただきます。

クラウドネイティブは大きく盛り上がっている、バズワード化しているところです。日本では来年、5Gのスタンドアロンが早いところでは始まるわけで、5GC(5Gのモバイルコアネットワークシステム)が本格的に普及していく中でクラウドとどう向かい合っていくのか、非常に大きなテーマであると同時に、本当に動くの? というような疑問をお持ちの方もいると思います。

できるかぎり、そういったところに迫っていこうと思います。

では、お一人ずつ自己紹介をお願いします。

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ソフトバンク株式会社の古川大介さん。

古川氏(ソフトバンク) 古川です、よろしくおねがいします。私は2005年、当時のボーダフォンの頃この世界に入ってきました。当初は交換設備の保守運用、2008年ごろからシステムネットワーク系の開発業務、導入業務に従事しています。

今回のクラウド系の業務については、2016年にNFV基盤、NFV推進課という業務の担当となりまして、約5年になります。

クロサカ氏 続きまして、KDDI株式会社の辻広志さん、よろしくおねがいします。

辻氏(KDDI) KDDIの次世代自動化開発本部の辻と申します。2016年頃、世間でNFVだとなったときに、NFVをはじめたということで、かれこれ5年くらいNFVをやっています。

クロサカ氏 株式会社NTTドコモの清水和人さん、よろしくおねがいします。

清水氏(NTTドコモ) 私は所属している部署が、「R&Dイノベーション本部 ネットワーク開発部 5Gコア担当」と言うところで、バズワード満載の部署になっています(笑)。

2019年までLTEのコアネットワーク、EPCと呼ばれるやつですね、これを開発をしていました。最初は皆さんと同じように交換機で始まったのですが、途中からEPCを仮想化するんだということでいろいろとプロジェクトに巻き込まれまして、そこから仮想化の沼にはまり、抜け出せなくなったというところです。

クロサカ氏 最後は楽天モバイルの外山達也さん、よろしくおねがいします。

外山氏(楽天モバイル) 楽天モバイルのテレコムコンテナプラットフォーム課というところに所属しています。2007年から通信ベンダで業務をしておりまして、後期にはテレコム向けのアプライアンスに載るアプリケーション開発などをしていまいた。

2019年に楽天モバイルに入社しまして、おもに5G向けのコンテナプラットフォームのインフラ開発や構築業務などを担当しています。

通信キャリアがクラウドネイティブ化で苦労しているところは?

クロサカ氏 今回の本題の1つということで、NFVの苦労話みたいなものをみなさんにうかがえればと思っています。

クラウドネイティブとかNFV(Network Function Virtualization)、SDN(Software Defined Network)とかは、2015~2016年頃からやらなくちゃねという話はありましたが、ここ数年かなり急激に盛り上がってきたところだと思います。

前回のパネルディスカッションから2年がたちましたが、この2年でどのような苦労があったか、といったお話をうかがえればと思います。

清水氏(NTTドコモ) SR-IOV(ネットワークインターフェイスなどの単一デバイスを複数の物理デバイスのように見せる機能)かDPDK(ネットワーク処理のためのオープンソースのライブラリ)とかは何年も前から使ってますが、いまだに悩まされます。

仮想化してるはずなのに、なんでこんなにハードウェアに悩まされるんだろう、みたいなのが多いですね。

クロサカ氏 なんでそんなに難しいんですか?

清水氏(NTTドコモ) 枯れてきたところもありますが、ユーザーがそこまで多くないのでまだ枯れてないところもあります。業界でノウハウが回ってないところもあるのではないかと。

古川氏(ソフトバンク) 同意です。クラウド化、仮想化されているのでハードウェアを選ばず自由に動けてオートスケール、オートヒーリングできるはずと言われながら、蓋を開けてみると、SR-IOVで(デバイスに)ひもづいちゃったとか、CPUをピンニング(固定化)してますとか、そこは他社さんも同じなのではないかと思います。

この2年で変わったことといえば、私はKubernetesではないかと思います。

やっぱりレイヤが増えていくことで複雑化するので、自動化を同時に進めていかないと、今後たちいかなくなると思います。

辻氏(KDDI) みなさんの言うことは100%アグリーで、そのうえで別の視点で話すと、ソフトウェア化でオープンソースソフトウェアが増えてきましたと。

いままで通信キャリアはベンダやメーカーのものを買って、それを入れれば動いていましたと。ところがオープンソースソフトウェアを使うと、(バグがあっても)それはオープンソースソフトウェアの問題で、アップストリーム(オープンソースソフトウェアのオリジナルのソースコード)が修正されていないのでそのままですとか。

これについては通信キャリアの人間が直接コントリビューションできればよかったのですが、誰もやっていなかったので、ずっとバグが残り続けている、みたいなところがあって、そういうオープンソースとの連携がうまくできてこなかったことはキャリアにとって課題だなと思っています。

クロサカ氏 クラウドネイティブの理想と現実として、困ったときにはどういう風に問題を解決しているのでしょうか?

辻氏(KDDI) やはりオープン化していくなかで、広く深くいろいろ知っている必要があるのですが、そんなエンジニアってどれだけいるのと。なかなかいないんじゃないかというのは肌で感じていてい大変なところですね。

いままではベンダさんの製品はベンダさんがすべて知っていました。でもオープン化になっていくと、ベンダさんも大変になってきて、なかなか答えはないですね。

ですから、いまは自分たちで頑張ろうというのは自分たちのチームでは意識しているところです。

古川氏(ソフトバンク) 内製といいますか、自分たちでやっていこうとなると、やはりそれをやっているチームなり個人にノウハウが集中していくのは事実ですね。

各社のトップはクラウド化のメリットと現場の苦労を理解しているか?

クロサカ氏 そうした人たちは業界にとってのアセットになってくるのかなと思うのですが、ここで次の質問としては、みなさんの会社のトップマネジメント、つまり社長の方々は、みなさんがこうした苦労をしていることをわかっているのでしょうか? ということです。

仮想化やクラウド化やNFV化は長期的に見ればこの業界のメリットだといえると思いますが、そうしたことをトップマネジメントの方々は理解しているでしょうか?

外山氏(楽天モバイル) ここは私からいかなくてはいけないんでしょうかね(笑)。弊社は新規参入だったので、他社とは状況が違うところがあると思っていて、特にクラウドネイティブはキャリア参入の当初からトップダウンでいわれていたので、理解があると思います。

清水氏(NTTドコモ) 社長に認識はしてもらっていると思います。ただ、いままで仮想化とかクラウドネイティブ化が進んできたのはコアネットワークの方がメインでした。でも携帯って電波の方をイメージするじゃないですか、同じ考え方をすると、基地局とかの仮想化が最近いろんなところから話が上がってきているので、そうするとより意識してもらえるようになるのではないかなと思います。

キャリアでクラウドネイティブに取り組むエンジニアは出世できる?

クロサカ氏 とすると、最後の質問ですが、オープン化やクラウドネイティブを進めていくと、みなさん出世できるのでしょうか?

辻氏(KDDI) ここ(クラウドネイティブ等)ができる、それを通信と絡めてできる、というエンジニアは世界的にもそうそういないと思うので、出世できるかどうかはわかりませんが(笑)、これを武器にはしていきたいと思っています。

古川氏(ソフトバンク) 通信業界ってある程度特殊な業界で、できるだけ同じものを長く使いたいとか、ソフトウェアアップデートはできるだけしたくないみたいなところがありますが、そのなかでクラウドだけは新しい技術にどんどん追随しなくてはいけなくて、そういうところにいるのは出世かどうかはわかりませんが、価値があることだと思います。

外山氏(楽天モバイル) みなさんご存じの通り理想と現実のギャップは大きく存在しますが、理想の姿についてはおそらく皆さんアグリーだと思いますので、それを実現するためにどうやるのか、知識やノウハウはかなり武器になると思います。

清水氏(NTTドコモ) モバイルキャリアって閉じてるところがあって、例えばキャリアの業界標準を勉強したところでそれが何かの役に立つかというと業界の外にでると役に立ちませんと。

けれどモバイルキャリアの中にいて、(クラウドネイティブなどの)スキルが取得できるというのは、社内の出世とは別ですけど、個人のキャリアとしては有益なのかなと思います。

クロサカ氏 低成長時代の日本で、これをやったら成長するぞというドメインがあるのはとても貴重で、これをやっていれば大丈夫というテクノロジーというか分野、そういうものがここにあるというのを伝えていけると、このコミュニティをさらに広げていけるのではないか、と思いました。

みなさん、ありがとうございました。

「輝け!クラウドオペレーターアワード2021」授賞式

パネルディスカッションに続いて、CODT2021の60セッションのなかから優れたセッションを表彰する、「輝け!クラウドオペレーターアワード2021」授賞式が行われました。

受賞セッションと、各審査委員からの受賞理由、そして受賞者からのコメントを紹介していきましょう。

■ヤングオペレーター賞
若手のインフラエンジニアで優れた内容のセッションに対して贈られます。下記の5セッションに賞が贈られました。

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■実行委員会賞
実行委員会により、印象深かったセッションに対して贈られます。下記のセッションに賞が贈られました。

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長谷川章博 実行委員長のコメント
大規模システムの裏側を余すことなく語っていただくという希少性、先進性というところで選ばせていただきました。

受賞コメント
小中氏 3カ月という短い期間で、以前はさばくことができなかったトラフィックをさばくために最も期待できる手段を採用し、その知見をこの場で発表することができてよかったです。引き続き技術の力で課題解決して、よりよいサービスを提供していきたいと思います。

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■視聴者賞
視聴者数が多かったセッションとして、下記のセッションに賞が贈られました。

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審査委員 松下康之氏のコメント 非常によくまとまっていて、ベンダにとってもベストの組み立て方、しゃべり方の配分、ベンダの方、ユーザーの方、コメントもすごく自然に出ているといった点もよかったです。

受賞者のコメント
NewRelic 清水氏
今回のCODT2021のテーマ「運用者に光を」ということで、今回われわれがサポートしている実際の運用者であるドコモの宮川様に光を当てることができたのが、大変うれしく思っています。

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NTTドコモ 宮川氏
タイトル通りSREを初めてみたいなという方に見ていただけたのかなと思い、参考になるところがあったのならうれしいです。

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■地味だけど重要で賞
審査委員による議論の結果、内容は地味であるが重要な内容を提起したセッションとして、下記のセッションに賞が贈られました。

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審査委員 新野淳一のコメント 一般的にクラウドでは、責任分解点とされるものがあってベンダとユーザーの責任は、そこできれいに分かれていると思われているが、現実にはそうじゃないんだと、もやもやするところがあるんだという、重要な問題提起を具体的な事例で示していただいて、これは多くの人に見ていただくべきセッションだと評価し、賞を授与させていただきます。

受賞者のコメント
JPCERT 佐々木氏 我々としては、サービスを提供される方とユーザーの間に、まだまだ課題や気をつけなくてはいけないポイントがあると思っていて、そういったところを伝えられたことはよかったと思います。

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■クラウドネイティブで組織を変えるで賞
審査委員の議論により、クラウドネイティブで組織を変えていく様子が評価され、下記のセッションに賞が贈られました。

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審査委員 高橋正和氏のコメント
ダウンしたら国に怒られるなどコンサバティブにならざるを得ないなかで、マニュアルでの操作をZabbixやGitHubを使うようにしていくなど、やっている内容もすごいですし、カルチャーやスキルを伝えていくところも大変だったのではないかと、大変興味深く拝見しました。

受賞者のコメント
運用に関する自動化や仮想化の話って夢のような理想的な話が多い印象があったのですが、私たちは背伸びせずに自分たちで手を動かしてできたことや苦労したことをありのままに話すようにしました。このセッションで同じような仕事をしている人たちの課題解決に役立ったり、仲間意識をもっていただけるとすればうれしいです。

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■大賞
審査委員の議論により、もっとも優れたセッションとして以下のセッションに賞が贈られました。

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審査委員長 関谷勇司氏のコメント
このセッションはこのCODTのまさに本筋で、クラウドを提供する側として長期間安定して運用するために欠かせないバージョンアップがいかに苦労するかよくわかりましたし、その苦労がまさにこのイベントの本筋であると審査員一同満場一致で大賞といたしました。

受賞者のコメント
クラウドのサービスを提供していて、そのバージョンアップをするというのは、なかなか体験できることではないので、全部ではないものの、つらかった点などをできるかぎり公開することで、これからバージョンアップする方々が同じ轍を踏まないようになればいいなと思い、セッションを作りました。

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審査委員長 関谷勇司氏によるセッション全体の講評
どのセッションもみなさんの実体験に基づいていて、クラウドをインフラとして使われる側もあれば、提供する側の苦労もありました。クラウドがどれだけうまく使えるかはこれからの大きなポイントになると思いますし、そのためにもこのイベントは来年はさらに発展すべきものだと思います。

国内にこれだけクラウドのオペレーション、クラウドを使ったシステム構築に挑まれている方がたくさんいて、感銘を受けました。来年以降もこのイベントが活性化するように、実行委員も、また審査員もまた来年、さらに工夫をしていきたいと思います。

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このパネルディスカッションや表彰式、そしてもう1つのパネルディスカッション「パネルディスカッション②「クラウド技術、自動化技術が基盤 “運用者” にもたらした効果と功罪」」などが行われたCODT2021ライブイベントは、特設ページで動画のアーカイブが公開されています。興味のある方はぜひご覧ください。

LIVE EVENT – Cloud Operator Days Tokyo 2021 – #CODT2021

ON DEMAND SESSIONS – Cloud Operator Days Tokyo 2021 – #CODT2021

(本記事はCloud Oprator Days Tokyo 2021実行委員会提供のタイアップ記事です)

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Junichi Niino(jniino)
IT系の雑誌編集者、オンラインメディア発行人を経て独立。2009年にPublickeyを開始しました。
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