1200人以上の全社員がリモートワーク。GitLabが公開する「リモートワークマニフェスト」は何を教えているか?

2020年2月28日

新型コロナウイルスの影響などでいま、多くの企業がリモートワークの導入を進めており、それによって多くのビジネスマンもリモートワークへの興味を高めているところでしょう。リモートワークは従来の働き方とどう違うのか、リモートワークにおいて組織として生産性を高めるにはどうすればよいのでしょうか。

そのリモートワークを徹底的に突き詰め、そのノウハウを惜しげもなく公開している企業があります。GitLab inc.です。

社員全員がリモートワークで、今年11月には株式公開を予定

同名のソースコードの管理サービス「GitLab」を提供する同社は特定のオフィスを持たず、1200人以上いる全社員がリモートワークで働いています。

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タヌキをアイコンとする同社は2011年に創業者の個人プロジェクトとしてスタートし、2014年に企業化。

2015年に著名なベンチャーキャピタルであるY Combinatorの投資を受けました。

その後順調に成長を重ねて現在では10万社以上のユーザーを抱え、今年2020年11月には株式公開を予定しています

1200人以上いる社員は世界66カ国に分散しており、全社員の名前と肩書き、職種、地域をWebサイトで見ることができるようになっています。日本にも4名在籍していることが分かりますが、それぞれ東京、横浜、京都、鹿児島と、日本国内でさえ別々の場所です。

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同社は自社を「世界最大のオールリモートカンパニー」と説明。リモートワークのための方法論やカルチャーを全社的に展開し、同時にそれを公開しています。

例えば、社員募集のページでは、良き人生をおくるために労働時間ではなく結果を重視。世界中どこでも働くことができて、業務は基本的に非同期で行われ、仕事に必要だと思われるもの、例えばスタンディングデスク、コワーキングスペース、自主学習などのための費用は事前申請の必要なく支出が許可され、コーヒーチャットのようなカジュアルなコミュニケーションも推奨されること、などが説明されています。

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リモートワークのためのマニフェストやガイドブックを公開

さらに、リモートワークのためのガイド「GitLab's Guide to Remote Work」、リモートワークのマニフェスト「Remote Manifest」、そして社員マニュアルとも言える「GitLab Handbook」などまで公開されています。

いちばん簡潔に説明されているRemote Manifestを見てみましょう。

fig4 文字がつぶれないように、横3段組を縦に組み替えました

内容を訳してみました。

1)本社よりも、世界中で採用して世界中で働く
2)労働時間を決めるよりも、柔軟な労働時間を
3)口頭で説明するよりも、書面にして知識を記録
4)オンザジョブトレーニング(OJT)よりも、やり方を書面に
5)知る必要があるときだけ教えるよりも、情報公開を
6)ドキュメントをトップダウンで管理するよりも、誰でも編集できるように
7)同期的なコミュニケーションよりも、非同期的なコミュニケーションを
8)労働時間よりも、仕事の成果を
9)非公式なコミュニケーションチャネルよりも、公式なコミュニケーションチャネルを

もちろん同社が公開している情報は基本的に同社自身がベースになっているため、すべてのリモートワークに適用できることではありません。しかし、リモートワークに取り組む組織や個人のための重要な示唆が含まれていると思います。

次に「GitLab's Guide to Remote Work」を見てみましょう。これはGitLab社員がリモートワークをするに当たって必要な心構えから環境構築、働き方まで、必要と思われる知識を網羅した詳細なドキュメントです。

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その一部として「Getting Started」の「What not to do」に並んでいる項目を挙げてみます。

Do not replicate the in-office/colocated experience, remotely
Do not transfer all in-person meetings to virtual
Do not assume that everyone has access to an optimal workspace
Do this, not that
Do not assume that remote happens overnight
Do not assume that remote management is drastically different
Don't assume your existing values can remain static
Contribute your lessons

「リモートでオフィスやコロケーションの体験を再現しようとするな」「一夜にしてリモートで働けるようになると思うな」「リモートのマネジメントは大きく異なるもの、と思うな」「あなたの既存の価値がずっと続くと思うな」など、ちょっとどきっとする項目もありますね。ぜひ詳しい内容まで読んでみてください。

そして、さらに膨大なドキュメントとして公開されているのが、GitLabの社員マニュアルともいえる「GitLab Handbook」です。

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こちらには企業のカルチャー、CEOによるKPIやOKRなどの説明。社史、業務の進め方、評価と給料の決め方、部門毎の仕事の進め方など、社員として必要な知識がほぼすべて網羅されています。

例えば報酬に関する項目「Total Rewards」には、報酬の決め方、評価のされ方、インセンティブ、ストックオプションなどが説明され、さらに「Compensation Calculator」では、自分の役割や役職、居住地(地域の物価が給与にある程度反映されるため)などを入力していくと給与額が計算できるページまであります。

これだけ会社の仕組みをすべてオープンにしているのは、リモートマニフェストの、3)口頭で説明するよりも、書面にして知識を記録、5)知る必要があるときだけ教えるよりも、情報公開を、などがきちんと実現されているからでしょう。

これらのドキュメントは英語で、しかも量も膨大です。しかし興味があるところだけでも、リモートワークで浮いた通勤時間を利用して読んでみると新たな発見があるのではないでしょうか。

参考記事

2017年にGitLab.comが大規模障害を起こしたときも、すべての対応はリモートワークで行われ、その様子もすべてYouTubeで公開されました。こうした危機に直面したときの対応にも、同社のカルチャーが色濃くうかがえます。

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Junichi Niino(jniino)
IT系の雑誌編集者、オンラインメディア発行人を経て独立。2009年にPublickeyを開始しました。
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