2020年のIT投資はオリンピックが理由で増加の勢いに陰り? 総従業員数に対するITスタッフ比率は明確な上昇トレンド。ITR調査結果

2019年12月12日

調査会社のITRは、製造や建設、小売り、金融、情報通信、公共など、国内の主要産業をほぼ網羅したIT投資動向などの調査結果をまとめた「国内IT投資動向調査報告書2020」を発表。その概要を記者発表会で明らかにしました。

有効回答数は2826件で、回答者は国内企業に所属するIT戦略やIT投資の意思決定に関与する役職者。同社による調査は今回で19回目。

2020年のIT投資は「増額傾向を維持するものの勢いには陰り」

IT投資の増減を指数で表した「IT投資増減指数」(IT予算を増やす企業をプラス、減らす企業をマイナスとして積み上げた指数)では、過去4年間連続での増加傾向が終わり、2020年度予想は減少する見通しです。

ただし、過去2年について見ると2018年度は34%だったのが2019年度は35%と増えて2007年以来の高水準となっており、2020年を見ると前年を下回ったものの「0」は下回っていないなどのことから、同社は「増額傾向を維持するものの勢いには陰り」と説明。

fig1

2020年度が前年を下回った理由として、同社取締役/シニアアナリストの舘野真人氏は「明確な理由は推測するしかないが、2020年は東京オリンピックがあるため、約11カ月として予算を組む傾向があるように思う。また新規プロジェクトがスモールスタートになる傾向も高くなっているようだ」とコメントしています。

新規プロジェクトがスモールスタートとなるのは、クラウドによる従量課金制の普及が背後にあるのかもしれません。

IT投資のおける新規投資も低下トレンド

IT予算に占める新規投資比率も継続的な低下トレンドが見られ、2019年度は30.7%にまで減少しています。

fig2

この新規投資はなにを目的にしているのか、調査結果では業務効率化が38%ともっとも多く、続いてビジネスの成長、業務継続となっています。

fig3

総従業員数に占めるITスタッフ比率は明らかな上昇トレンド

一方、明確な上昇トレンドが見られるのが「総従業員数に占めるITスタッフ比率の経年変化」です。2016年度には6%を超え、2020年度計画では7.2%まで上昇。

内訳を見ると、この上昇トレンドをけん引しているのがITスタッフにおける正社員の増大であることが分かります。

fig4

正社員が増えているとなると、内製による業務アプリケーションや顧客向けアプリケーションの開発が活発化しているのではないかと期待されますが、前述の新規投資の目的のトップが業務効率化であることや、正社員の増加の背景に「業務部門からIT部門への配置転換もそれなりにある」(舘野氏)などから、おそらく増加した正社員はおもにDX(デジタルトランスフォーメーション)などを含むIT関連の戦略や企画の立案を、業務知識などを基に取り組んでいるのではないか、と推測されています。

(12/12 12:20 追記:IT予算の動向について、当初「減少傾向」としていた表記を、よりグラフが示す状態に合わせて「勢いに陰り」に改めました。これに合わせて本文を追記し、タイトルを一部変更しました)

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