低消費電力、高密度のARMサーバを何に使うのか? ARM Server DAY

2013年1月4日

昨年2012年12月21日、「ARM Server DAY」が都内で開催されました。いま、クラウドやデータセンターではx86サーバが主流となっていますが、電力利用効率に優れ、高密度実装が可能なARMサーバへの注目が高まっています。

ARMプロセッサは現在、サーバ向け64ビット版のプロセッサが開発中で2014年に製品版が登場する予定。イベントでは、ARMサーバの現状やロードマップ、そして期待などについて語られました。

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ARMの64ビットは2014年に登場予定

ARMの現状とロードマップなどを、小川忠氏のプレゼンから紹介します。

Coretex-Aシリーズには5種類あり、最新のCortex-A15がこれから出荷開始になるが、現行のプロセッサはすべて32ビットプロセッサ。このほかにRシリーズやMシリーズなどがある。コアは基本的に同じARMv7。

ARMv7は32ビットの命令セットで、ARMv8が64ビット。基本的に命令セットは上位互換にしようというのがARMの考え方。

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ARM TechCon 2012で説明されたARMv8コアは、A57がハイパフォーマンス、A53がエネルギー効率を重視し、A57を「ビッグコア」A53を「リトルコア」と読んで、「big.LITTLE」と言っている。big.LITTLEでは、性能が必要なときにはビッグコアを、低電力にしたいときにはリトルコアを使うことでトータルの消費電力を下げようとしている。

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これがタイムライン。ファーストシリコンが2013年、ファーストプロダクツが2014年。ただ、ARMからはARMv8のソフトウェアエミュレートが無償で提供されています。

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ARMサーバを何に使うのか?

イベントの後半では、出席者がARMサーバに期待する用途や期待などの発言が続きました。低消費電力のおかげで、より高密度実装が可能になる一方でそれほど強力なプロセッサ性能は期待できないと予想されるARMサーバにどのような用途が考えられるのか、その一部をここで紹介します。

分散ストレージベンダ社員
「分散ストレージの開発をしていると、Calxeda(ARMプロセッサを用いた高密度サーバを開発しているシステムベンダ)のようなハイパースケール型のサーバはマッチするのではないかと思っているので、評価をしていきたいなと思っています」

ホスティングサービス社員
「細かいサービスをたくさん動かすシステムを提供しているので、軽量サーバは使えるかなと思っている」

大手SIベンダの社員
「ARMのプレイヤーがエンタープライズのクリティカルな勘所を理解しているかは疑問。ただ、そこをあきらめることでできることもたくさんあるので、そこを見てみたい。評価ボードが安くなったら調べてみたい。ARMは絶対性能ではインテルには追いつかないと思うため、電力効率で攻めるしかないと思う」

大手メーカ企業社員
「データセンター系のサーバを担当している。データセンターでは省電力サーバのニーズが高まってきていて、ARMサーバにはそうしたメリットがあると聞いて勉強しにきた。エンタープライズ向けの利用はまだ先だとは思うが」

Hadoopソリューション提供企業社員
「Hadoopのような何千台もサーバをつなぐソリューションでは、ARMサーバの消費電力が少ない点で注目しており、使えるかなと思っている」

ARM社員
「まずみなさんがいちばん知りたいのは、ARMがサーバ分野で本当にやる気があるのか? という点だと思うが、やる気はある。例えば、ARMで社外向けのWebサーバを立てており、ARMのドキュメントのダウンロードはARMサーバでやっている。ARMサーバはアーキテクトのレベルで以前から取り組んでいた。ただ、マーケティングや営業は、モバイルや組み込みなどのコンシューマ系をずっとやってきていて、エンタープライズ系は現在のサーバ市場のシェアが0%ということもあって、これから学んでいきたい」

大手外資系サーバベンダ社員
「このアプリはそんなにCPUパワーはいらないんじゃないか、というのがけっこうあって、しかも増えてきている。そうするとインテルとは違うCPUでもいいんじゃないかとずっと思っていて、ARMがでてきてベンチマークをとったりと注目している」

仮想化ソフトウェアベンダ社員
「Coretex-A15ではコアに仮想化対応機能が入っている。そこでみなさんがARMプロセッサでも仮想化を使いたいのかどうか。A15はインテルで言うEPT (Extended Page Table)やIOMMU(Input/Output Memory Management)も持っているはずで、一方インテルのATOMはVTXはサポートしているけれどEPTはない。しかし2014年に向けてインテルも気合いの入ったプロセッサを作っているらしいので、ATOM対ARMでの仮想化がどうなるか見極められるのではないかと。ARMやATOMのような高密度サーバで、OSや仮想化のようなファットなものが変わる時期が来るのか知りたい」

データセンター社員
「データセンターって、ネットワークと電気と土地を貸しているようなもので、サーバの消費電力が大きいとラックの真ん中にブレードサーバが鎮座しておしまい、あとはスカスカでなんのためのブレードサーバなんだよ、ということになる。もっと電力消費効率を追求しなければならないと思っている」

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Junichi Niino(jniino)
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