Amazonがプライベートクラウドのサービスを開始、「プライベートクラウド」がバズワードから現実に

2009年8月27日

Amazon Virtual Private Cloud

Amazon Web Servicesが、Amazonクラウド内にプライベートクラウドを設定できるサービス「Amazon Virtual Private Cloud」(以下、Amazon VPC)のβ運用を開始したと発表しました。いままでバズワードとして広がっていたプライベートクラウドに対して、間違いなく大きなインパクトとリアリティを与えるサービスとなるでしょう。

プライベートクラウド内でインスタンスを立ち上げる

Amazon VPCの利用には、まずAmazon VPC内にプライベートクラウドの領域を作成し、プライベートIPアドレスの範囲を割り当てます。これで他から分離されたプライベートクラウドの領域を確保できたので、そのプライベートクラウドに対してIPsecを使ったインターネットVPN経由でアクセス可能になります。

続いて、プライベートクラウドに対して通常のAmazon EC2の利用時と同様にインスタンスを設定していくことで、プライベートクラウド内でサーバリソースを立ち上げていくことができます。

説明によると、Amazon VPCの利用に際しアマゾンとの長期的な契約などは必要なく、Amazon EC2などを利用するのと同様に、利用するときに利用量に応じて支払いが発生するだけとのこと。

VPNの構築には、IPsecに対応したルータが必要となりますが、Amazon Virtual Private Network Administrator Guideには、シスコのCisco IOSとジュニパーのJunOSについては具体的な設定サンプルが掲載されてます。

Amazon VPCの特徴

Amazonは、Amazon VPCの特徴を4つ挙げています。少し意訳しつつ紹介します。

分離されたネットワーク
Amazon VPCは利用者が指定したIPアドレスによって接続され、他から完全に分離されたプライベートクラウドを提供します。

フレキシブル
利用者自身のデータセンターにあるサーバと同じように、Amazon VPC内のサーバを管理できます。サブネットの設定やIPアドレスの割り当てなどは柔軟に設定可能です。

ハイブリッド
企業内に存在する既存のサーバ群と、Amazon VPCのプライベートクラウドのハイブリッドな構成により、ハードウェアに投資することなくスケーラブルなデータセンターを構築できます。

信頼性
Amazon VPCは世界有数の技術によって支えられたクラウドアーキテクチャによって構築され、高い信頼性を提供します。

企業内の開発環境やアドホックな運用、バックアップ用途など

Amazon VPCの特徴を見てみると、企業にとって非常に魅力的なサービスであると思えます。企業は初期投資ゼロで自社のデータセンター内に仮想的なプライベートクラウドを持つことができるようになりました。これから企業にプライベートクラウド関連のソフトウェアやハードウェアをあれこれ売り込もうと考えていたベンダにとって、脅威以外のなにものでもないでしょう。

企業の情報部門でサーバが必要になったとき、もう物理的なサーバを購入する必要はなく、Amazon VPCでインスタンスを立ち上げるだけで済みます。物理的なサーバを購入することとAmazon VPCとでは、コストも時間も比較にならないほどAmazon VPCが有利です。

例えば開発環境の構築や試験的なソフトウェアの導入などには、Amazon VPCは非常にフィットするはずですし、企業内のサーバのバックアップやディザスタリカバリのためにインスタンスを予約したり、データのバックアップを定期的に行ったり、といった用途にも使えるでしょう。

いままでのAmazonクラウドは基本的にネットに公開されたサービスだっため、利用の主役はネットサービスの基盤としてクラウドを用いるネットベンチャーなどでした。しかし今回のAmazon VPCの登場は、企業にとってプライベートクラウドを一気に身近にするものであり、企業の情報システムにおけるクラウド活用を促進する大きな一歩だといえるでしょう。

そして、もし必要になったときにAmazon EC2のインスタンスをそのまま社内データセンターにあるサーバへと移行できたり、優先度が低くなった社内サーバの処理をAmazon VPC内のインスタンスへと移行するといったことができるようになったらもっと便利になるはずです。企業は物理的なサーバへの投資や運用コストをもっと効率のよい状態にすることができるでしょう。

Amazon VPCの先には、そうした仮想プライベートクラウド(アウタークラウド)と社内データセンター(インナークラウド)のあいだで柔軟な運用を可能にするツールなどが登場してくるのではないかと予想しています。

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Junichi Niino(jniino)
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