IPA、日本におけるオープンソース戦略形成に向けた現状と展望をまとめた「2024年度オープンソース推進レポート」公開
IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)は、日本におけるオープンソース戦略形成に向けた現状と展望をまとめた「2024年度オープンソース推進レポート」を公開しました。
レポートでは、オープンソースは無料の道具ではなく私たち全員が担い手となるべき社会的な「公共財」として捉え直した上で、技術的主権の確保と共創社会の実現に向けた国家的戦略の構築を提言しています。
調査は2024年12月17日から2025年2月14日にかけてWebアンケートを実施。企業による回答では、ソフトウェアやシステム開発に携わる企業の情報システム部門(ベンダー企業の場合は技術部門など)の部門長クラス(意思決定層)に回答をお願いすることが想定されました。
2025年4月7日時点で企業から799件の回答を得ており、これがこのレポートの分析対象となっています。
回答を得た企業の種別はユーザー企業が82.8%と多数を占め、続いて受託開発ソフトウェアベンダーが9.1%、パッケージソフトウェアベンダーが2.8%、ユーザー系情報システム子会社が2.5%などとなっています。

この記事では、このIPAのレポートからポイントとなる調査結果をいくつか紹介しましょう。
オープンソースの利用ポリシーは80%が「なし」
オープンソースの利用において、企業がポリシーを制定しているかどうかを問う質問では、ユーザー企業の約80%が「ない」、あるいは「分からない」と回答。ベンダー企業においては、「ない」が30.8%、「分からない」が19.7%となっています。

OSPOが存在するのは2%、検討が1.1%
オープンソースの管理や戦略策定などを担うオープンソースプログラムオフィス(OSPO)の設置状況は、回答全体では「OSPOが存在する」が2.0%、「設立を検討している」が1.1%。ベンダー企業に限っても、それぞれ6.8%と4.3%で合計してようやく10%超という状態です。
IPAはこの結果を受けて、OSPOが認知されていないのか、必要性が理解されていないのか、詳細な調査は必要かもしれない、としています。
ユーザー企業の大多数は自社ソフトをOSSにしない

自社で開発したソフトウェアのオープンソース化状況については、全体としては「積極的にオープンソース化している」は0.9%。「一部オープンソース化している」が3.8%。ベンダー企業ではそれぞれ5.1%、14.5%となっています。ここから、ユーザー企業は大多数が自社ソフトウェアのオープンソース化に取り組んでいないことが示されました。

企業が組織としてコミュニティに参画しているか?
企業が組織としてオープンソースのコミュニティに参画しているかどうかを問う質問に対しては、金融業以外のユーザー企業で「国際プロジェクトやコミュニティへの参画や貢献活動をしている」が1.7%、「国内プロジェクトやコミュニティへの参画や貢献活動をしている」が1.3%。金融業はそれぞれ0%でした。
ベンダ企業ではそれぞれ7.7%、1.7%となりました。

OSSへの課題の多くは、理解不足から来る不安
最後にオープンソース利用時の課題についての質問では、IPAが「『メンテナンスや運用に不安がある』『会社にルールやポリシーが存在しない』『商用サポートがない』といった“理解不足からくる不安”と言えるものが並んだ。」と分析しています。

IPAは今回の調査結果から、多くの企業がオープンソースを導入・活用する一方で、OSPOの未整備や、利用ポリシーの策定不足といった課題を抱えている現状が浮き彫りになったと分析。
利用ポリシーがあればオープンソースの利用に伴うリスクマネジメントが組織的に行いやすくなり、OSPOの存在はオープンソースの活用や貢献の推進力として機能するため、これらの整備の遅れや認知不足は、オープンソースコミュニティとの連携を遠ざけ、結果として技術力や開発スピードの停滞を招く可能性があるとしました。
その上で、オープンソースの利用ポリシー策定のためのガイドライン及びひな型の整備や、OSPO設置を支援するための事例紹介・ツール提供などが有効であると考えられ、同時にライセンス管理やリスク対応に関する入門ガイドの整備や啓発を進めることで、ガバナンス強化とコミュニティとの連携促進が期待されるとして、行政機関がこれらをリードすることを提案しています。
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