Amazon CTOのVogels氏が予言する、2022年に注目すべきテクノロジー5選。AI支援による開発、あらゆる場所がエッジに、低軌道衛星によるアプリの変革など

2022年1月5日

2022年はIT業界においてどのようなテクノロジーが注目されるのでしょうか。

過去10年にわたり、IT業界における技術の進化をけん引してきた企業の1つといっていいAmazon.comのCTOであるWerner Vogels博士は、同社の2021年12月1日付のブログ「Tech predictions for 2022 and beyond」で、2022年に注目すべき5つのテクノロジーを予言しています。

fig

Vogels博士の予言は、単にテクノロジーのトレンドを示すだけではなく、AWSという巨大なクラウドサービスが2022年の今、どのように進化しようとしているのかを推し量る上でも貴重なものではないでしょうか。

博士のブログに書かれたポイントを引用しつつ、5つの予言を見ていきましょう。

figAWS re:Invent 2021に登壇したVogels博士

予言1:AIが支援するソフトウェア開発の定着

機械学習やAIを活用したソフトウェア開発の支援は、ここ数年の大きなトレンドと言えます。

AWSは2019年に機械学習を用いて自動的にコンピュータがコードレビューをしてくれる「Amazon CodeGuru」を発表していますし、マイクロソフトもVisual Studioに機械学習を用いたコーディング支援機能であるIntelliCodeを搭載しました。

fig1

Vogels博士は、2022年にはこうした機械学習によるソフトウェア開発支援が定着するだろうと予言しています。ブログから引用しましょう。

Imagine a scenario where a builder describes how they want an app to operate, and then the tools interpret the request through natural language processing and deliver back the fully functional code. On the backend, ML techniques will also check for software bugs and continuously verify that the software is doing what it is supposed to do. This kind of ML-supported software development will be a game-changer by allowing more people across an organization to help define and build software and software-driven products.

例えば、アプリの開発者が、アプリをどのように動作させたいかを記述すると、ツールが自然言語処理によってその要求を解釈し、完全に機能するコードを返すというシナリオを想像してみてください。バックエンドでは、機械学習機能がソフトウェアのバグをチェックし、ソフトウェアが想定されたように動作しているかどうかを継続的に検証するのです。このような機械学習によってサポートされるソフトウェア開発は、組織を横断してより多くの人がソフトウェアを開発できるようになり、ソフトウェアによって動作する製品を作れるようになるという点で、ゲームチェンジャーだといえます。

Vogels氏は、いわゆるローコード/ノーコード開発、あるいはシチズンプログラマと呼ばれる分野や人々にまでも、機械学習によるソフトウェア開発支援は影響を及ぼすだろうと指摘しているようです。

予言2:あらゆる場所にクラウドのエッジが

クラウドはデスクトップPC上で動作するWebブラウザだけでなく、スマートフォンやタブレットのようなモバイルデバイスからもアクセスされ、オフィスや店舗や工場や倉庫などのさまざまな場所で利用されています。

2022年はこうしたクラウドと接続されたエッジが、さらに多種多様になるとVogels博士は予言します。これは予言というより、AWSの進化をそのまま表現しているようにも読めます。

ブログから引用しましょう。

The shift we’ll witness in 2022 is the cloud becoming highly specialized at the edges of the network. To fully realize the benefits of the cloud in workshops and warehouses, in restaurants and retail stores, or out in remote locations, there must be tailored solutions at the edge. The parallels to Amazon Scout in the cloud are devices like Amazon Monitron and AWS Panorama, purpose-built devices that bring cloud capabilities to the edges of the network to do a specific job. They bring all of the high security, advanced features, and speed of delivery of the cloud, but they can be placed almost anywhere in the world. Yet, rather than isolated boxes sitting someplace, these devices become true extensions of the cloud with a link back to all of its core capabilities.

2022年に私たちが目撃する変化とは、クラウドがネットワークのエッジにおいて高度に専門化する、ということです。 工場や倉庫、レストランや小売店あるいは遠隔地などにおいて、クラウドがその利点を十分発揮するためには、そのエッジごとに個別最適化されたソリューションが必要です。クラウドにおけるAmazon Scout(新野注:Amazonが開発している自動配達用の自律荷物車)と似ているのが、Amazon Monitron(新野注:産業機器の振動などをモニタするセンサー内蔵のデバイス)やAWS Panoramaのような、ネットワークのエッジにクラウド機能をもたらす専用デバイスです。クラウドの高いセキュリティ、高度な機能、提供スピードのすべてを備えつつ、世界のほぼどこにでも設置することができます。そしてこれらのデバイスは、どこかに置かれた孤立した箱ではなく、クラウドの真の延長となり、クラウドのすべてのコア機能に接続できるのです。

figAmazon Monitron

クラウドのエッジとして、ソリューションごとに最適化された専用デバイスが登場し接続される事態が進む。すなわちIoTの現実化が進む、と言い換えてもいいのかもしれません。

予言3:スマートスペースの登場。特に介護現場において

予言3は、予言2でのクラウドエッジのソリューションを介護現場において具体化させているもののようにも見えます。

スマートスペースとは、壁や天井やドア、トイレ、ベッドなど部屋のさまざまな場所にセンサーを組み込み、センサーから送られてくるデータをクラウドで分析することで、人間に対してさまざまなサービスを提供できる空間のことです。

Vogels氏の予言は、日本でIoTサービスを提供しているZ-Worksの事例からインスパイアされたものだと説明されています。ブログからその部分を引用しましょう。

The problem Z-Works faced was how to offer smart and attentive care for seniors in Japan when there are fewer and fewer people available to do the job. The solution this company arrived at was to arrange sensors in beds and throughout rooms in senior homes and connect all of them to the cloud for continuous data analysis. The sensor arrays don’t just monitor vital signs. Because they run machine learning models trained in the cloud, the sensors can also tell if a person goes to use the bathroom and simply doesn’t return. In that case, the system can notify someone on duty to check on the resident’s well-being. In essence, it is a very human response made possible by a very smart space.

Z-Worksが直面したのは、人手不足の日本でいかにスマートできめ細かいシニアケアを提供するかという問題でした。同社がたどり着いたソリューションは、高齢者施設のベッドや部屋のあちこちにセンサーを配置し、それらをすべてクラウドに接続して継続的にデータ分析を行うことです。センサー群は単にバイタルサインをモニターするだけではありません。クラウドで実行している機械学習モデルにより、トイレに行ったまま戻ってこない場合もセンサーが感知。その場合、システムは勤務中の誰かに通知し、居住者の健康状態を確認することができます。要するに、非常にスマートな空間が可能にする、人間的な対応なのです。

今後数年の間に、私たちはさまざまな場面でスマートスペースが実現するのを目にするだろうとVogels博士は予言しますが、そのなかでも高齢者介護ほどインパクトのあるものはないと指摘しています。

予言4:サステナビリティのためのアーキテクチャ

日本でもSDGsについて注目度が高まっていますが、日本国内のITエンジニアがシステムを設計、構築するときに、いわゆるサステナビリティについて重要なプライオリティをもって考慮する、ということはほとんどないのではないかと思われます。

一方で、AWSのような地球規模でITインフラを展開する企業にとって、サステナビリティへの配慮はわれわれが考える以上に重要な位置を占めるものとなっています。

そしてVogels博士は2022年にはシステムの開発者たちがシステムやアプリケーションを開発する場面において、サステナビリティを意識した意思決定をするようになるだろうと予言しています。

Developers will take an active role in reducing the carbon footprints of their applications. This will happen in a variety of areas, like taking into account where in the world they choose to run their applications to take advantage of green energy in the grid, considering the time needed to process a task, or even specifying the chipset they use.

開発者は、アプリケーションの二酸化炭素排出量を減らすために積極的な役割を果たすようになるでしょう。例えば、送電網のグリーンエネルギーを利用するために世界のどこでアプリケーションを実行するかを考慮したり、タスクの処理に必要な時間を考慮したり、あるいは使用するチップセットを指定するなど、さまざまな領域でこうしたことが行われます。

予言5:低軌道衛星による安価な通信が新しいアプリをもたらす

今後5年で2万機以上が地球の低軌道に配置される予定です。この衛星により構築される衛星ネットワークは、世界中に高速で安価なブロードバンドを提供することになります。

これが実現されたとき、まったく新しい種類のアプリケーションが登場するかもしれないとVogels氏は説きます。

With ubiquitous connectivity, we start to unlock use cases that simply aren’t possible today. Try to imagine what happens in schools when every kid can use the same learning tools, or when small and medium-sized businesses get hold of digital tools they need to win more customers, grow their businesses, and create jobs in rural and remote communities around the world.

ユビキタスコネクティビティがあれば、現在では不可能なユースケースを実現することができます。すべての子供が同じ学習ツールを使えるようになったら、学校で何が起こるか想像してみてください。また、中小企業がより多くの顧客を獲得し、ビジネスを成長させ、世界中の地方や遠隔地のコミュニティで仕事を創出するために必要なデジタルツールを手に入れたらどうなるでしょうか。

そしてインテリジェントなスペースが地域や国といった空間へと広がっていくと。

Ubiquitous connectivity will take us from intelligent spaces to intelligent cities, intelligent countries, and finally, toward an intelligent world.

ユビキタスコネクティビティは、インテリジェントスペースからインテリジェントシティ、インテリジェントカントリー、そして最終的にはインテリジェントワールドへと私たちを導いてくれることでしょう。

最後はかなり風呂敷を広げた感じもしますが、2022年はIoTや衛星通信と言ったクラウドの周辺における変革が、クラウドを含めたIT業界にイノベーションをもたらしそうだ、というのがVogels博士の予言を読んだ筆者(新野)の感想です。みなさんはどう感じられたでしょうか。

このエントリーをはてなブックマークに追加
follow us in feedly




カテゴリ

Blogger in Chief

photo of jniino

Junichi Niino(jniino)
IT系の雑誌編集者、オンラインメディア発行人を経て独立。2009年にPublickeyを開始しました。
詳しいプロフィール

Publickeyの新着情報をチェックしませんか?
Twitterで : @Publickey
Facebookで : Publickeyのページ
RSSリーダーで : Feed


最新記事10本