JenkinsやSpinnakerなどの開発をホストする「Continuous Delivery Foundation」発足。CI/CDの普及とエコシステムの発展を促進

2019年3月13日

Linux Foundationは「Continuous Delivery Foundation」の設立を発表しました

Continuous Delivery Foundationは、次の4つの価値を基本原則とするとされています。

  • Continuous Deliveryは開発者やチームに力(パワー)を与え、高品質のソフトウェアの迅速な開発を実現できると信じます
  • オープンソースソリューションはソフトウェアデリバリのライフサイクル全体を包括的に解決できると信じます
  • コラボレーションと相互運用性を通じてオープンソースのエコシステムやベンダニュートラルなプロジェクトを維持し、育成していきます。
  • これらの考えを支持し、実践しているひとたちのプラクティスの共有や改善を促進します。
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具体的な活動としては、Jenkins、Jenkins X、Spinnaker、Tektonの開発をホストします。そして技術的な方針などを決定するためのTechnical Oversight Committee (TOC)がまもなく設立される予定です。

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Jenkinsはビルドやテストなどを自動化し、Continuous Integration/Continuous Delivery(CI/CD)を実現する上で欠かせないソフトウェアとして知られています。

Jenkins XはJenkinsをGitとKubernetes環境に特化させることで構築や運用を大幅に自動化したものです。

参考:「Jenkins X」発表。Git/Docker/Kubernetesに特化したことでCI/CD環境の構築運用を自動化

Spinnakerは、マルチクラウドに対応したContinuous Deliveryの作業を自動化するツールです。もともとNetflixが開発しオープンソースとして公開したもの。以前からGoogleも開発に参加していました。

参考:Google、継続的デリバリに対応したデプロイ自動化ツール「Spinnaker 1.0」リリースを発表。GCE/GKEだけでなく、AWS、Azure、OpenStackなどマルチクラウド対応

TektonはCI/CDを実現するためのオープンソースコンポーネント群であり、それらを組み合わせることでKubernetesや仮想マシン、ベアメタルなどさまざまなプラットフォームにデプロイを行うパイプラインを柔軟に構築できます。Tektonの目標は、こうしたパイプラインやワークフロー、ソースコードへのアクセスなどを定義する業界標準仕様を作り上げることにあります。

Jenkinsの開発者である川口耕介氏は、Jenkinsプロジェクトのブログに記事「Jenkins is joining the Continuous Delivery Foundation」をポストし、なぜJenkis/Jenkins XがContinuous Delivery Foundationへ参加するのかを説明しています。

そのなかで川口氏は、Continuous Delivery FoundationのアイデアはもともとJenkinsプロジェクトが言い始めたことだったと言って過言ではない(I don’t think I’m exaggerating much to say the whole idea of the CDF started from the Jenkins project.)とし、Continuous Delivery Foundationの設立を歓迎し、期待を表しています。

CI/CDをスムーズに実現できるようにするためのエコシステム

Continuous Delivery Foundationのミッションとしては、おそらく前述のオープンソースの開発をホストする以上に、エコシステムの発展が重要だと推測されます。

というのも、CI/CDの実現には、ソースコードリポジトリからコードを取得し、ビルドツールと連携してビルドを行い、テスト環境へデプロイしてテストを行い、品質判定ののちに本番環境へデプロイするといった手順を自動化することになります。

これにはCI/CDツール本体が多くのツールやプラットフォームと連係することが必要ですが、現在のところこれらをきちんと組み合わせるには、さまざまなツールやプラットフォームに関する知識や試行錯誤が求められることが多くあり、一般にそれほど容易なことと見られていません。

CI/CDが普及し発展するには、より簡単かつ迅速にCI/CDのパイプラインを構築できることが求められるはずです。

そのためContinuous Delivery Foundationは、CI/CDにおける主要なオープンソースソフトウェアの開発をホストしつつ、こうした課題を解決し、より簡単にCI/CDを実現するためのエコシステムの構築にも注力していくことになるはずです。

そこで鍵を握るのは、Tektonの目標として掲げられているパイプラインやワークフロー、ソースコードアクセスなどを定義するための標準仕様策定になるのではないでしょうか。これらを定義することで、さまざまなソフトウェアやツールを組み合わせてCI/CDのパイプラインを実現できるようになるからです。

Jenkins/Jenkins XやSpinnaker、Tektonには、これら標準仕様やAPIなどが積極的に実装されていくかもしれません。

また、Continuous Delivery Foundationの現時点でのスポンサーも、そうしたエコシステム構築を歓迎し、積極的に関わっていくのではないでしょうか。

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Continuous Delivery Foundationは、5月にスペイン バルセロナで開催予定のKubeCon/CloudNativeCon EU 2019の初日となる5月20日に、イベント「Continuous Delivery Summit」を開催予定であることもあわせて発表しました。

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Junichi Niino(jniino)
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