AWS、オープンソースベンダのライセンス変更による商用サービスの制限は「顧客を見ていない」と反論

2019年12月23日

RedisやMongoDB、Kafka、Elasticsearchなどのオープンソースソフトウェアの開発元企業が、AWSなど大手クラウドベンダがそのオープンソースを用いたマネージドサービスを提供して大きな利益を上げていることに反発して、ライセンスを変更するなどで商用サービス化を制限する動きがあることは、今年の1月の記事で紹介しました。

この動きに対してGoogleは4月、Google Cloudにオープンソースベンダによるマネージドサービスを統合すると発表し、彼らとの戦略的提携という姿勢を打ち出しました。

fig13Google Cloud Next '19で、オープンソースソフトウェアベンダが提供するマネージドサービスをGoogle Cloudに統合することが発表された

AWSは商用ライセンスへの変更を問題視し、独自ディストリビューションを作成

一方のAWSは、同社が提供しているマネージドサービス「Amazon Elasticsearch Service」で用いているオープンソースのElasticsearchの開発元であるElasticが、ソースコードの一部を商用ライセンス化したことに異議を唱えました。

具体的には2018年2月、Elasticがオープンソースにおける新たなビジネスモデルを模索するためとして、GitHubで公開しているElasticsearchのコードの一部を商用ライセンスに変更すると発表しました(新野注:実際にはもう少し複雑なので、詳しくはリンク先の記事をご覧ください)。

AWSはこれに対し「イノベーションのフォーカスがオープンソースディストリビューションから外れる」などと異議を唱え、今年3月にオープンソースライセンス下のコードだけで構成されるElasticsearchの独自ディストリビューション「Open Distro for Elasticsearch」を作成。あくまでElasticsearchのオープンソースライセンス維持にこだわる姿勢を見せています。

もちろんAWSは広くオープンソースを支援する姿勢を見せています。同社自身がFirecrackerSmithyといったオープンソースソフトウェアを公開していますし、今年10月にはオープンソースプロジェクトに対してAWSを利用できるクレジットの無償提供プログラムを発表。Rust言語やJulia言語、AdoptOpenJDKやCloud Native Computing Foundationなどがすでに対象となっていることなどを明らかにしています。

ニューヨークタイムスのコラムにブログで反論

そうしたなかで、AWSはあらためて、オープンソースベンダのライセンスの変更による商用サービスの制限は「顧客中心でない」などとする意見を表したブログ「Setting the record straight on AWS and open source」を12月16日付けで公開しています。

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このブログはニューヨークタイムスに掲載されたコラム「Prime Leverage: How Amazon Wields Power in the Technology World」に反論するために書かれたもの。

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ニューヨークタイムスのコラムは、前述したElasticsearchの例を挙げつつ、AWSがオープンソースをコピーして自社サービスとすることで大きな儲けを出しているという、おおむねオープンソースベンダの主張に沿った内容になっています。

AWSで反論ブログを書いたのは、同社のAnalytics and ElastiCache担当バイスプレジデント、Andi Gutmans氏。同氏は過去20年以上オープンソースにコントリビュートしてきたと紹介されています。

Gutmans氏は、AWSが他社のソフトウェアをコピーしクラウド上に統合することで儲けているというニューヨークタイムスのコラムの主張は、AWSを取り巻く大きなエコシステムを無視しているとしたうえで、オープンソースベンダがライセンス変更により商用サービスを制限する動きに対しては「顧客を見てない」(not customer-focused)という論を展開しています。

その部分を引用しましょう。

Customers use open source because it’s supposed to be open, available to run anywhere, and easily used on-premises and in the cloud with whichever providers customers choose to use in these environments. Customers have repeatedly told us that they want AWS to offer managed services for Elasticsearch and other popular open source projects.

顧客がオープンソースを使うのはそれがオープンであるからで、オンプレミスでもクラウドでもどこでも実行が容易なために、その環境のプロバイダを顧客が選択できるからです。そして顧客は繰り返しAWSに対して、Elasticsearchやその他ポピュラーなオープンソースのマネージドサービスの提供を要請してきました。

A number of maintainers of open source projects build commercial companies around the open source project. A small set of outliers see it as a zero-sum game and want to be the only ones able to freely monetize managed services around these open source projects. As such, they have gone back and altered the open source licensing terms, co-mingled truly open source with proprietary code, and tried to make it hard for customers to use other providers’ managed services in the cloud.

多くのオープンソースのメンテナーは、そのオープンソースに関連する企業を設立しています。少数の部外者はこれをゼロサムゲームと見なし、これらオープンソースのマネージドサービスによるマネタイズを自由にできるようにしたいと考えていました。そこへ彼らが戻ってきて、オープンソースのライセンス条件を変更し、真のオープンソースに彼らのプロプライエタリなコードを混ぜて、顧客が彼ら以外のプロバイダによるクラウドでのマネージドサービスの利用を困難にしようとしました。

This is not customer-focused, not what customers want, and not why customers started using the open source project in the first place. We are committed to making sure that open source projects remain truly open and customers get to choose how they use that open source software – whether they choose AWS or not.

これは顧客を見ておらず、顧客が望むものでもなく、そもそも顧客がオープンソースを使い始めた理由とも相容れません。私たちはオープンソースプロジェクトが真にオープンなままであり、AWSが選ばれるかどうかにかかわらず、顧客がオープンソースソフトウェアの使用方法を選択できるようにすることにコミットしています。

AWSとしては、オープンソースはオープンのままであることが顧客のためなのだという主張です。

一方、オープンソースの開発元企業としては、クラウド時代にあって現状のオープンソースモデルではビジネスが困難になるとして、なんとかしたい立場。両者の言い分は引き続きすれちがったままです。

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Junichi Niino(jniino)
IT系の雑誌編集者、オンラインメディア発行人を経て独立。2009年にPublickeyを開始しました。
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