国内で「オープンソース/Open Source」の商標登録の一部を取り消す審判請求。関連する商標関係者への調査依頼

2018年8月1日


私たちが普段使っている「オープンソース」や「Open Source」という語は、有志数名が集まった団体「Open Source Group Japan」が商標登録を行っています。これは、類似した商標の登録を敵対的な企業などによって行われることで、オープンソースという名称の利用を制限されないための処置だそうです。

ところが、 2018年6月に株式会社OPENSAUCEより、商標登録の一部を取り消すことについて審判を請求する不使用取消審判が請求されたと、Open Source Group Japanの佐渡秀治氏が明らかにしています

Open Source Group Japanはこの不使用取消審判に対して黙認するか、もしくは商標の使用を立証する答弁書を提出するかの判断を早急に下さなければいけないそうです。答弁書を作成する場合、オープンソース商標がどれだけの範囲で利用されているか実体を把握する必要があるため、Open Source Group Japanはオープンソース商標の利用調査を行うとしています。

「オープンソース」をブランドとして商品やサービスを提供しており、下記の分類に該当する場合、Open Source Group Japan(board@opensource.jp)もしくは佐渡秀治氏(Twitter:@shujisado)に連絡をしてほしいとのことです。

調査は8月6日までとされています。

本件に関する詳細についての文書「オープンソース商標についての解説と不使用取消審判への対応のお願い」が公開されています。この文書はGNU Free Documentation Licenseで公開されているため、全文を以下に転載します。

該当する商標に関係される方や、商標として利用されていることをご存じの方は、ぜひ調査へのご協力をお願いします。

(追記 2018/8/1 14:45 OPENSAUCE社からのコメントが公開されています「弊社の知財活動に関する一部投稿に関して | OPENSAUCE®」)

(転載ここから)

オープンソース商標についての解説と不使用取消審判への対応のお願い

オープンソース運動初期の頃に日本国内の有志数名が集まったOpen Source Group Japanというグループがあります。このOpen Source Group Japanでは、日本国内において2002年から「オープンソース/Open Source」という商標(登録4553488号)を登録していますが、今月になり同登録商標に対して不使用取消審判が請求されたという連絡を弁理士事務所から受けました。

この審判請求に対して使用確認等の反証を行うか否かは8月上旬に決定することにしておりますが、我々のグループでは本商標がどれだけ利用されているか全容を把握しているわけではありませんので、我々が早急に利用事例の確認をするためには広く一般に事案を周知する必要性があること、また、不使用取消審判という言葉のイメージや審判の請求元が出願している商標の影響から、今後の「オープンソース」という名称の利用への懸念が広がる可能性があることを踏まえ、オープンソース商標の取得経緯、商標の影響範囲、今回の不使用取消審判に関しての正しい意味と対応方法等についてまとめることにしました。

オープンソース界隈のユーザー、開発者、企業のほとんどには影響しない事案ではありますが、関係者はご一読のほどお願いいたします。なお、オープンソース商標取得経緯をご存知の方は、1項や2項を読み飛ばして頂くと良いでしょう。

1. オープンソース商標の取得経緯

オープンソース商標については「オープンソース商標について」でオープンソース商標(登録4553488号)の取得経緯 が書かれていますが、もう少しだけ詳細に説明しておきます。

2000年当時、日本国内ではLinux/オープンソースバブルといった状況の中、Linux商標に 関しての係争が発生していました。簡単な時系列は旧日本Linux協会の「Linux商標調査のページ」にまとめられておりますが、この騒動関連ではLinux関連雑誌の出版社やLinux関連サービス事業者に商標利用料の請求がされるといった実ビジネスへの影響も発生し、オープンソース業界に大きな教訓を残しました。

この問題の発生直後、ある二文字の一般名詞を先頭につけたオープンソース/Open Sourceの類似商標が特許庁に対して出願されました。この商標出願元が一般的なオープンソースとは何の関係もない可能性が高く、Linux商標と同様、もしくはさらに敵対的な出願のように当時の我々には見えました。そこで、弁理士に相談したところ、その類似商標の登録によってオープンソースという名称の利用を制限される可能性があるとの説明を受けました。

そこで我々は急遽Open Source Group Japanという団体の体裁を整え、既にドメインだけを取得していたopensource.jpをその本拠とし、この問題に対応することにしました。1998年2月からのオープンソース誕生の経緯を含めた様々な証拠書類を即座に揃え、その類似商標が却下されるべきという情報提供を行いました。それとほぼ同時に、一般的に知られるオープンソースとはくの無関係の第三者がオープンソース商標を登録し、オープンソース関連の経済行為に障害となる危険性を無視できないと考え、我々自身でオープンソースコミュニティのためのオープンソース商標の登録を出願したのです。

この後、問題の発端となった類似商標については2001年に商標登録の出願が却下され、対して我々のオープンソース商標の出願は二度の拒否査定と手続補正を経た後の2002年3月に商標登録が認められました。これが現在のオープンソース商標(登録4553488号)です。

なお、任意団体では商標の権利者になれないために当初の権利者はこの記事の著者である佐渡秀治と他個人一名の共同所有という形になっていましたが、個人で所有することでの社会生活面へのデメリットが大きく、2012年からは全ての権限をOpen Source Group Japanが行使するという覚書を用意した上で、佐渡が100%所有するOSDN株式会社に権利者を移動しています。

2. オープンソース商標の影響範囲

前項のような経緯で取得されたオープンソース商標でありますが、我々が商標取得を目指したのは悪意を持った第三者がオープンソース商標を取得することを防止するという一点の目的のみであり、このような目的から当然この商標はコミュニティの誰もが自由に利用できるということにしています。利用に際して登録商標であることを示す必要は一切ありませんし、また、我々が利用料を徴収したり、利用に対して何らかの制限を加えるといったことも一切行っておりません。

また、2001年に我々の商標出願は二度の拒絶を受けておりますが、その中でオープンソースという名称については 「『コンピュータのソフトウェアのソースコードを公開して、誰にでも自由に改良できるようにすること』の意味合いを認識する」、「例えば、『書籍、カタログ、パンフレット』 に使用するときは、単に商品の内容(品質)を表示したにすぎないと認めます。」 と特許庁側から指摘がされています。これはいわゆる我々が一般的に使用している意味合いでのオープンソースは既に一般名称であることを当時の特許庁として認めていることを意味しています。ほぼ同時進行していた類似商標への我々からの情報提供において、我々自身が同様の主張を展開して問題の類似商標は却下されるべきとの意見を出しており、それが認められたとも取れます。

我々の商標登録出願が最終的に認められたのは、この特許庁として一般名称であると考えるオープンソースに該当する部分から若干外れた領域だけに指定商品役務を補正したからです。 J-PlatPat等で登録4553488号を調べてみれば分かることですが、我々が取得したオープンソース商標は、区分としてIT領域で一般的な16類, 35類, 41類, 42類を押さえてあるものの、指定商品は一見するとオープンソースとはあまり関係がなさそうな商品が指定されています。これは、出願当初のにおいては当時のオープンソース業界が置かれていた混沌とした状況を踏まえ、一般的に想定されるオープンソースという語の範囲よりもより広い範囲で取得を目指したものの、拒絶を経たことで、そこから一般名称としての範囲に含まれるでだろう役務、商品を抜いた形で補正したことが影響しています。ソフトウェアのソースコードそのものが該当する9類で取得されていないのは、このような理由に依るものです。

この結果、コミュニティが一般的に使用しているソースコードのライセンス形態や開発手法に関わる流れにおいてのオープンソースという語の利用については、そもそも我々が取得しているオープンソース商標が影響する範囲にはありません。当然ながら、一般名称として誰もが自由に使用することができます。

オープンソース商標(登録4553488号)の影響範囲は、16類, 35類, 41類, 42類の指定商品だけであり、一般的に想定される使用では影響することはほぼありません。ただし、一般名称としてのオープンソースという語の利用から少し外れた利用には影響することがあります。かつて存在したSI業者であるテンアートニ(株)が調味料のソースをオープンソースと名付けて自社のオープンソースビジネスの販促用の利用をしていましたが、このような利用が一般名称としてのオープンソースからは外れた語の利用としての典型的なものとなります。

テンアートニのオープンソースプレゼント!!

一般名称としてのオープンソースとオープンソース商標の利用の境界が明確でない領域もあるかもしれませんが、我々は一般名称と同様に自由にその語が利用されるされることを望んでおり、一般名称としてのオープンソースに対して大きな悪意が向けられない限り、我々が何らかの権利を行使することはありません。

3. 2018年6月請求の不使用取消審判について

2001年以降、我々のオープンソース商標に関しては特に大きな変化はありませんでしたが、先月18日に一部の指定商品に対して不使用取消審判が請求されました。請求人は「[https://opensauce.co/ 株式会社OPENSAUCE]」(金沢市)であり、料理レシピを共有するプラットフォーム提供などを行う事業を計画している会社のようです。

不使用取消審判とは、継続して3年以上日本国内において使用されていない場合、当該商標登録を取り消すことについて審判を請求することができるものであり、競合する他人の商標登録を取り消したい場合等で使用されることがある手続きです。このOPENSAUCE社の商標出願については後述しますが、不使用取消審判が請求されている以上、我々としてはこれを黙認するか、もしくは商標の使用を立証する答弁書を提出するかの判断を早急に下 さなければいけません。

しかしながら、我々Open Source Group Japanではオープンソース商標がどれだけの範囲で利用されているかといった情報は持ち合わせておらず,従って上記役務における指定商品にてオープンソース商標が利用されているという実績を把握しておりません。我々が答弁書を提出しなかった場合には、上記指定商品にてオープンソース商標を利用していた商品、サービスなどは突然オープンソース商標の範囲外ということになり、OPENSAUCE社の商標を含む第三者の商標と抵触する可能性が出てきますので、急遽問題となっている指定商品におけるオープンソース商標の利用調査を行うことにしました。

OPENSAUCE社による不使用取消審判における請求対象の指定商品役務は、以下の通りです。

もしこの指定商品役務に該当しそうなオープンソース商標を利用する製品、サービス等を提供している事業者や個人がいれば、Open Source Group Japanもしくは私(佐渡)にご連絡頂くようお願いいたします。また、そのようなサービスを知っているというだけの場合でも情報を提供して頂くと幸いです。

なお、2項で説明した通り、一般的に使用されている名称としてオープンソースという語が使われている場合には、上記の指定商品に該当していても、そもそもオープンソース商標を利用しているということに該当しないことに注意してください。一見、41類の「書籍及び雑誌の制作」は、オープンソースを冠する書籍が該当するように思えますが、本のタイトルや紹介の中でその語が使用されているだけではほぼ全て該当することはありませ ん。例えば、「Code Readingオープンソースから学ぶソフトウェア開発技法」という書籍の場合は、本のタイトルや紹介の中で一般名称的に使用されているとだけ解釈されます。

同様に35類の「経営の診断・指導及び経営に関する情報の提供」は下記のようなオープンソース関連のコンサルティングサービスが該当するように一見思えます。

しかしながら、これらもサービスの中で一般名称的に使用されていると解釈されると判断できます。

今回の問題で該当するものは、「オープンソース」をブランドとして商品やサービスを提供している場合であり、例えばオープンソース袋と名付けられたゴミ袋を提供しているケースがあれば該当する可能性が高いと思われます。また、今回の問題の対象商品ではありませんが、2項で実例として出した旧テンアートニ社が提供していた中濃ソースの「オープンソース」は、オープンソースをブランドとして使用していた分かりやすい例となるかと思います。

今回の我々の調査は残されている時間が少ないこともあり、来週の8月6日までといたします。もし該当しそうなサービスを持つ事業者や個人がいれば、それまでにご連絡頂くようお願いいたします。

連絡先 Open Source Group Japan: board@opensource.jp もしくは 佐渡秀治Twitter @shujisado

4. OPENSAUCE社の商標について

不使用取消審判を請求した株式会社OPENSAUCEと我々は現在のところ一切の接触はありません。当該会社のWebを確認してもさほど多くの情報は掲載されておりませんが、ソフトバンクの孫正義会長の実弟である孫泰蔵氏が取締役になっていることが目に付く程度です。

J-!PlatPatなどで調査すれば、登録6047765と商願2018-038735にて当該会社による「OPEN SAUCE」(呼称:オープンソース)という出願情報が確認できます。これらの出願の経過情報から類推すると、不使用取消審判を請求したOPENSAUCE社の商標出願は我々が保有するオープンソース商標と類似することを理由とする拒絶査定を受け、その対応として当該会社の出願に不都合となる指定商品に対して不使用取消審判を請求を起こしたものと考えることができます。OPENSOURCEとOPENSAUCEは全く異なる語ではありますが、呼称はオープンソースとして同一であり、また、調味料のソース(SAUCE)といわゆる我々がよく知るオープンソースという語を掛け合わせた造語であろうことは容易に想像できます。

さらに日本経済新聞の今年2月の記事によれば、OPENSAUCE社は「料理人らがレシピを共有するソフト」、「料理人らがレシピを共有化できる無料ソフト」の開発の進めているようであり、このソフトウェア、もしくはプラットフォームの名称が「OPEN SAUCE(オープンソース)」であるように推測することができます。

これを証明するように「OPEN SAUCE」(登録6047765)では、幅広い食料品、飲食関連の役務商品が記載されている他、42類「電子計算機用hプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供」という項目を見つけることができます。

このため、OPEN SAUCEというそもそも綴りが異なる語ではあるものの、呼称がオープンソースと同一であることも考えると、コミュニティが一般的に利用しているライセンスや開発手法の形態としてのオープンソースという語の利用に混乱が生じる可能性があると認識しています。

ただし、よく知られている一般名称としてのオープンソースという語の利用は、今回の不使用取消審判やOPEN SAUCE社による商標登録がどのように形で決着しようとも、3項で解説した理由から'''今までと変わらずにその語を利用することができることは、オープンソースコミュニティの皆様方に広く留意して頂くようお願いいたします。

2018年7月30日
Open Source Group Japan
佐渡秀治

本記事は、大野総合法律事務所の中村 仁 弁理士に内容の確認を頂いております。

(転載ここまで)

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