アンディ・ベクトルシャイム氏が開発中の次世代フラッシュストレージを推測してみると、EMCはサーバベンダとなる

2014年5月9日

今週最大のニュースの1つは、EMCがアンディ・ベクトルシャイム氏らのフラッシュストレージ企業「DSSD」を買収したと発表したことでした

ベクトルシャイム氏といえば、例えばサン・マイクロシステムズやアリスタネットワークスなどで数多くの技術的革新を実現してきた伝説的な人物です。その人がストレージの分野でどのような技術的革新を見せてくれるのか非常に楽しみな一方で、今回の発表ではDSSDがどのような製品を開発しているのか、具体的な説明はほとんどありませんでした。

DSSDが開発中の製品は「サーバサイドフラッシュの次章(The NEXT Chapter)を開くものだ」と説明され、次のような特徴を持つのだそうです。

fig
  • ラックスケールのフラッシュストレージ
  • 数百テラバイトのストレージもしくはメモリ
  • 桁違いのIOPS、帯域幅、レイテンシ
  • 共有ストレージアレイと同じ管理性
  • ネイティブなアプリケーションインターフェイス
  • SAP HANAのようなインメモリデータベースやHadoopのような大規模データ分析アプリケーションの性能を加速する

具体的な説明はなくとも、これらからどのようなフラッシュストレージを開発中なのか、その姿を推測することはできそうです。少し考えてみることにしましょう。

ラック型の筐体に収まる大容量フラッシュストレージ

1番目の「ラックスケールのフラッシュストレージ」ということは、この新しいストレージが従来のサーバサイドフラッシュのようにPCIeスロットに挿入するのではなく、ラック型の筐体に収まるもののようです。

そしてラック型であれば、2番目の「数百テラバイトのストレージもしくはメモリ」が示すような大容量のフラッシュメモリを搭載したストレージを実現するのは容易でしょう。「もしくはメモリ」という点は次の3番目の要素と合わせて考慮したいと思います。

メモリバス直結のフラッシュストレージ

3番目の「桁違いのIOPS、帯域幅、レイテンシ」から考えられるのは、このストレージが従来のサーバサイドフラッシュが採用しているPCIeインターフェイスよりさらに高速な方法でサーバと接続されているのではないか、ということです。

ということは、このストレージはメモリバスに直結されているのではないでしょうか。

フラッシュメモリをx86サーバのメモリスロットに装着し、超高速なストレージを実現する技術はすでにIBMが第六世代のx86サーバに採用、製品を出荷しています。これによって桁違いのIOPS、帯域幅、レイテンシを実現できます。

fig IBMの第六世代サーバが採用したメモリスロットに搭載可能なフラッシュメモリは、PCIe接続のフラッシュストレージよりもレイテンシが83%も小さいと説明されている

IBMの第六世代x86サーバでは、メモリスロットのフラッシュメモリをSAN/NASとしてアクセス可能です。ですからDSSDが開発中のフラッシュストレージもメモリバス経由でメモリとしてもストレージとしてもアクセスできるようになるはずです。これで2番目の最後の「もしくはメモリ」、そして5番目の「ネイティブなアプリケーションインターフェイス」の説明がつきます。

考えてみれば、ベクトルシャイム氏はすでにアリスタネットワークスで似たようなことを実現してきました。同社のネットワークススイッチである「Arista Application Switch」は「アプリケーションスイッチ」と呼ばれる新しいカテゴリの製品で、高速なスイッチング専用チップを用いつつx86プロセッサとメモリも搭載し、Linux OSを実行。ネットワークスイッチの上でLinuxアプリケーションが実行できるため、アプリケーションから超低レイテンシかつ高速なネットワーク処理を実現します。同社のスイッチは超高速な株取引処理などに用いられていることでよく知られています。

ベクトルシャイム氏はアリスタネットワークスでネットワークスイッチとx86サーバを統合して高速処理を実現したのと同様の発想で、DSSDではx86サーバとフラッシュスストレージを統合することで高速処理を実現しようとしているのではないでしょうか。

いかにメモリバスを共有し、共有ストレージを実現するかが課題か

技術的には高いハードルになりそうなのが、4番目の「共有ストレージアレイと同じ管理性」です。メモリバス直結のフラッシュメモリを実現するだけでなく、それを複数のx86サーバから共有できるようにしなければ共有ストレージとして利用することはできません。

このあたりの技術的課題をクリアするのに時間がかかっているため、製品の登場時期が来年になっているのではないかと想像します。

さて、これで製品の姿が想像できるようになりました。EMCが買収したDSSDが開発中の製品は、おそらくラックに複数のx86サーバが搭載され、それらが高速なメモリバスを共有。そこに大容量のフラッシュメモリが直結されることで、大容量の高速なフラッシュストレージ(そして共有ストレージ)もしくはメモリが実現されるのではないでしょうか。

この製品が実現すれば、6番目の説明のようにSAP HANAのようなインメモリデータベースを低レイテンシのフラッシュメモリを活用することで高速化できますし、複数のx86サーバでHadoopを実行した場合でも高速なストレージを活用した高速な処理が実現できるはずです。

EMCは強力なサーバを持つサーバベンダになる

そして一歩引いてこのマシンを見たとき、それはストレージというよりもストレージを統合したクラスタサーバのように見えます。

つまりEMCにとってDSSDの買収とは、EMCをストレージベンダから強力なサーバ製品を持つサーバベンダへと転換させるものである、といえるのかもしれません(同社はすでに統合サーバのVSPEXを展開してはいますが)。(追記 5/9 16:45 VSPEXはEMCからストレージとリファレンスアーキテクチャをパートナーに提供するもので、EMC自身が販売する統合サーバではありませんでした。ですので上記の補足は的外れでした。すいません)

(追記 5/9 19:00 @ITの記事「フラッシュ、「ソフトウェア化」……。EMCの「再定義」は進んでいるか」によると、どうやらNVM Express(NVMe)をインターフェイスに使うようですね)

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Junichi Niino(jniino)
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