PHPのPaaSを提供する「cloudControl」と「PHP Fog」
PHPはWebアプリケーションを構築する言語として普及していますが、これまでPHPの実行環境をクラウド上で本格的に提供したPaaSはありませんでした。最近になって2つのPHP PaaSの名前が少しずつ知られるようになってきましたので、この記事で紹介しましょう。「cloudControl」と「PHP Fog」です。
無料で利用できる「cloudControl」
cloudControlはドイツのベンチャーで、2009年に設立。2010年の7月にPHP PaaSのクローズドベータを開始し、2010年10月から正式なサービスを開始しています。課金の単位を「ボックス」という単位で管理していますが、最小の1ボックスは無料になっており、サインアップするだけで利用可能なようです。
cloudControlはAmazonクラウド上に構築されており、ロードバランスとHTTPキャッシュにPHPアクセラレータのVarnish、データベースにはMySQLを用いる構成になっています。
1つのボックスは異なる仮想サーバ上にある2つのプロセスからなっており、サーバの故障などでプロセスに異常が発生すると自動的に別のプロセスへフェイルオーバーする仕組みになっていると説明されています。このボックスを増やすことでスケーラビリティを実現するようです。
データベースはスレーブにレプリケーションされ、マスターデータベースに異常があった場合には自動的にフェイルオーバーするとのこと。MySQL以外ににアドオンとしてMemcached、MongoDB、Xeround Cloud Databaeなどが利用できます。
またチーム開発のためのリポジトリやバージョン管理ツールなども提供されています。
プライベートベータ段階の「PHP Fog」
PHP Fogはブログによると米国で昨年の8月に立ち上がったベンチャーです。今年の1月に1800万ドルの資金調達にも成功しています。
PHP FogもAmazonクラウド上に構築されたPaaSで、PHPアクセラレータのVarnishをキャッシュとして用い、Nginxをロードバランサーとし、Apache上にPHPの実行環境を構築。データベースにはMySQLを用意し、レプリケーションを行ってフェイルオーバーに備えています。
以下の説明によると、PHP FogではユーザーごとにAmazon EC2のインスタンスが割り当てられるようです。
Rather than running a shared hosting environment like the ones you may be familiar with, PHP Fog provides dedicated servers for each one of our customer applications. Each application stack also includes a caching layer, a load balancing layer, a database layer and a shared failover environment.
よく知られたシェアードホスティングのような環境ではなく、PHP Fogは顧客ごとに専用のサーバを提供する。それぞれのアプリケーションスタックには、キャッシングレイヤ、ロードバランシングレイヤ、データベースレイヤと共有フェイルオーバーの環境が含まれている。
また、すぐにインストールして利用できるPHPのさまざまなアプリケーションやフレームワーク、WordpressやJoomlaやDrupalやMedia WikiやZend FrameworkやPHP Cakeなども提供予定としています。
同社は3月19日に、共有フェイルオーバーの環境にあったセキュリティホールを突かれてシステム障害を起こしていますが、現在では復旧し問題も解決されたとしています。しかしクラウドベンダにとってセキュリティホールは致命傷になりかねません。この教訓を活かして強固なシステム設計を期待したいところです。
同社はまだプライベートベータの段階にあり、一般に利用できる環境を提供してはいませんが、イケてるハッカーが3人(3 of your smartest hacker friends)いればすぐにサインインを提供するとしています。
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