「ポストPC時代」ではなく「PCプラスの時代」だとマイクロソフト

2011年8月26日

今年はIBM PCの誕生から30周年となる年。スマートフォンやタブレットなどの新たなデバイスがPC以上に普及するという予想が確信を持って語られるようになりました。PCの時代は終わろうとしているのでしょうか?

HP to Evaluate Strategic Alternatives for Personal Systems Group

先週、PC市場でシェアトップのヒューレット・パッカードが「PC事業の分離を検討」と発表したことは、PCの時代が終わろうとしているという印象を多くの人に与えています。同社は発表の中で次のように書いています。

The personal computing market is quickly evolving with new form factors and application ecosystems.

パーソナルコンピューティング市場は新しいフォームファクターとアプリケーションのエコシステムによって急速に進化している。

IBM Leads the Way in the Post-PC Era | A Smarter Planet Blog

PCは真空管のように時代遅れになる、IBM

IBMのCTOで、30年前にIBM PCの設計に関わったMark Dean氏は、同社のブログA Smarter Planet Blogに「IBM Leads the Way in the Post-PC Era」(IBMはポストPC時代をリードする)というエントリの中で、PCは真空管やタイプライターのように過去のものになるだろうと予想しています。

they’re no longer at the leading edge of computing. They’re going the way of the vacuum tube, typewriter, vinyl records, CRT and incandescent light bulbs.

それらはもはやコンピューティングの最先端ではない。真空管やタイプライター、レコード盤、ブラウン管や白熱電球のようなものになっていくだろう。

ただしPCはなにか別のデバイスに置き換わるわけではない、ともDean氏は書いています。いままでPCで起きていたようなイノベーションは、これからはデバイスの上ではなく、人と人とのあいだに起きるのだと。

These days, it’s becoming clear that innovation flourishes best not on devices but in the social spaces between them, where people and ideas meet and interact.

今日明確になりつつあるのは、イノベーションの隆盛はデバイスの上ではなく、それらのあいだにあるソーシャルスペース、人々とアイデアが出会い、反応するところにあるということだ。

すでにPC部門をレノボに売却し、コラボレーションに力を入れている同社の戦略そのまま、という気もしますが、IBMはこのようにPCの次の時代、「ポストPC時代」を見据えているというのが分かります。

Where the PC is headed: Plus is the New “Post”

創作や協力はPCが得意、マイクロソフト

しかし、まだだ、まだPCの時代は終わらんよ! というのがマイクロソフト。公式ブログThe Official Microsoft Blogにポストされたエントリ「Where the PC is headed: Plus is the New “Post”」(PCが向かう先:プラスこそ新しい“ポスト”)では、次の2つの理由をあげてPCの時代はまだ続くのだと主張しています。

1. There are a set of important things that PCs do uniquely well, and they aren’t going away.

PCでこそ、うまくこなせる大事な事柄があり、それがなくなることはない。

2. PCs are rapidly and dramatically getting better at doing the things those companions do.

PCは急速かつ劇的にこれらのことを行うための改善が続いている。

PCで行う重要な作業とは、人がコンピュータに向かって行う4つの作業「create, collaborate, communicate and consume」のうち、先頭の2つ、Create(創作)とCoolaborate(協力)を指しています。後ろの2つ、Communicate(コミュニケート)とCosume(消費)についてはタブレットやスマートフォンが得意だが、CreateやCollaborateはPCが得意だと。

だから、「ポストPC」(PCの次)ではなく、「PCプラス」と言いたいのだそうです。

Heck, I even mentioned it in my 30th anniversary of the PC post, noting that “PC plus” was a better term.

このPCの30周年のポストでは“PCプラス”こそがよりよい言葉だと書いたのです。

しかしマイクロソフトも新しいデバイスの登場を無視することはもはやできません。それらについては9月の同社のイベント「BUILD conference」で発表するから期待してくれ、と結んでいます。

ポストPC、もしくはPCプラスのいずれになるのか? 論点はPCが今後もイノベーションを実現できるかどうか、という点でしょう。

いま、プロセッサの進化、ユーザー体験の進化、ソフトウェアの進化はスマートフォンやタブレットでより多く起きつつあり、PCはイノベーションの主流から外れつつあると多くの人が感じています。果たしてIBMがいうように、PCはこのままレガシーなデバイスになるのか、PCはイノベーションを起こし続けられるでしょうか?

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