デスクトップ仮想化、シトリックスCEOに10年先のビジョンを聞いた

2010年9月3日

シトリックス・システムズといえば、デスクトップ仮想化とアプリケーション仮想化、そしてオープンソースの仮想化ハイパーバイザを開発しているXenSourceを買収したベンダなどとして知られています。

同社がいま積極的に推進しているデスクトップ仮想化は、WindowsなどのクライアントOSと、その上のOfficeやWebブラウザといったデスクトップアプリケーションをサーバ内で実行し、実行画面だけをクライアントに表示することで、あたかも手もとのPCでアプリケーションを実行しているように見せる技術です。

こうすることで、手もとのPCにアプリケーションをいちいちインストールする必要がなくなるためPCの管理が容易になり、ローカルのハードディスクにデータを保存することもなくなるためデータ漏洩のリスクも減り、セキュリティの向上にもなります。

さらに、iPadやiPhoneといったさまざまなデバイスからデスクトップアプリケーションにリモートでアクセスできるようになるため、モバイルデバイスからもいつも利用しているアプリケーションを操作できるようになります。企業のITの運用コスト削減やセキュリティ対策、そしてモバイル対応などにより注目されている技術です。

一方で、デスクトップ仮想化の技術にはすでに10年以上の歴史があり、今後大幅な新機能や性能の向上の余地が狭まりつつなるのではとも予想されます。

また、HTML5やWebブラウザの高度化などによって急速に進化しているWebアプリケーションによるシンクライアント技術の発展は、シンクライアント市場でデスクトップ仮想化の競争相手となる可能性を多いに秘めています。

こうした中で、シトリックスは将来の製品展開や戦略をどのように考えているのでしょうか? 同社社長兼CEOのマーク・テンプルトン氏のラウンドテーブルが先週8月24日に開催されたので、質問をぶつけてみました。

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デスクトップ仮想化、次の10年のビジョンとは?

―― 3つ質問をさせてください。1つ目は製品のビジョンについてです。先ほど、2001年の時点で、10年後にはモバイルデバイスが普及し、そこからアプリケーションを利用することになるだろう、というビジョンに向かってこの10年の製品を進化させてきたという説明がありました。では、いま2010年時点で、これから先10年の製品ビジョンをどう考えていますか?

テンプルトン氏 これからは個人の生産性というのはますます重要になってくると思います。労働者もグローバルな競争にさらされるためです。そのためのビジネスコンピューティング環境では、次のことが大事だと思います。

まずはデバイスやネットワークからの独立です。ユーザーはいつでも、どこからでも、どんなデバイスからでも仕事をしたいと考えるでしょう。そうしたどのような環境でも業務ができる環境というのがこれから重要になると思います。デスクトップの仮想化、アプリケーションの仮想化といった仮想化技術はそのために使われていくでしょう。

そして、セルフサービスです。駅で切符を買ったり、ATMでお金をおろしたり、Webショッピングなど、多くの人は日常的にセルフサービスの体験をしており、それをよい体験だと考えています。しかし、エンタープライズのアプリケーションはまったくセルフサービスになっていません。必要なデータやツール、アプリケーションといったものを自分で選び、利用していく、AppStoreでiPadのアプリケーションを選べるように、こうしたセルフサービスの環境をエンタープライズでも構築していく必要があります。

そして柔軟なコンピューティング環境も必要です。要求に応じてサービスをデリバリでき、利用に応じて課金するような柔軟(Elastic)なプラットフォームが求められるでしょう。

―― 2つ目の質問はWebアプリケーションについてです。Google DocsのようなWebアプリケーションがデスクトップアプリケーションの競合になろうとしています。こうしたWebアプリケーションの進化についてどう考えていますか?

テンプルトン氏 ユーザー側の階層では、FlashやHTML5などさまざまなテクノロジーがこれから利用されるようになると思います。しかしどの技術であっても、ネイティブアプリケーションと同じように高いセキュリティが求められるはずです。

私たちの製品「NetScaler」を利用することで、Webアプリケーションでも同じように高いセキュリティを実現することができます(注:NetScalerは、トラフィック管理、アプリケーションファイアウォール機能などを備えた、Webアプリケーションデリバリの最適化ソフトウェア/アプライアンス)。

将来のデスクトップアプリケーションは、クラシックなWindowsアプリケーションと、HTML5やFlashを使ったWebアプリケーションのどちらもが使われる、ハイブリッドな環境になると思います。

―― 3つ目の質問はプライベートクラウドとパブリッククラウドについてです。いまデスクトップ仮想化を行っている企業は、そのほとんどが自身で保有するサーバルームのサーバを用いてデスクトップ仮想化のシステムを稼働させていると思います。一方で、ソフトバンクテレコムがパブリッククラウドでデスクトップ仮想化を提供するサービスなども始めています。将来、パブリッククラウドによるデスクトップ仮想化は企業にも普及していくとお考えでしょうか?

テンプルトン氏 おっしゃるとおり、初期のユーザーはインハウスのデータセンターでデスクトップ仮想化を運用しはじめており、それで満足していただいていました。

以前はセキュリティの懸念などから、顧客情報など重要なデータを社外のデータセンターに置くことはないと多くの企業は考えていましたが、セールスフォース・ドットコムが急成長しているように、顧客はコストとベネフィットの関係を考えるようになってきています。

そして、社外のクラウドにデータを置くことについて少しずつ信頼をするようになってきており、今後はパブリッククラウドとプライベートクラウドを合わせて利用するようになるだろうと考えています。

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