MS OfficeがSP2でOpenOfficeのファイルを直接読み書き可能になった理由

2009年6月1日

マイクロソフトが4月末から配布を開始したMS Office 2007用のService Pack2では、OpenOfficeが採用しているOpenDocuemntフォーマットを直接読み書きできる機能をExcel、Word、PowerPointなどに追加します。

SP2での追加機能はこれだけではなく、PDFも直接出力できるようになりましたし、マイクロソフトが作成したPDF対抗のフォーマットであるXPS(XML Paper Specification)も出力できるようになりました。

fig SP2適用後のOfficeのメニュー(分かりやすく赤線を引いています)

政府調達基準となりつつあるOpenDocumentフォーマット

マイクロソフトは2005年頃までは、MS Office 2007で直接OpenDocuemntフォーマットのファイルの読み書きはサポートしない、という見通しを表明していましたが、2006年頃にはOpenDocumentのサポートを行う方向へと変化し、2009年現在、ようやくそれを実現するところまできました。その背景には、海外の政府の調達基準として2006年以降、急速にOpenDocumentフォーマットが存在感を増してきたことがあげられるでしょう。

日本でも政府調達基準としてOpenDocumentフォーマットが指定されていると報道されています。

またこうした報道の一部に対してマイクロソフト自身が「Officeが調達要件から外れたわけではない」という火消しの発表をする、ということもありました。

OOXMLの標準化で対抗するが

マイクロソフトはこうした動きに対して、同社のOfficeが採用しているOOXML(Office Open XML)形式を標準規格にする運動を進める一方で、先に国際規格となったOpenDocumentフォーマットをMS Officeでネイティブにサポートする、という二面作戦に出たのだといえます。

それでも、文書フォーマットに関してのマイクロソフトに対する風当たりは強いものがあります。

マイクロソフトの標準化への努力が功を奏して、OOXMLは昨年2008年4月にISOの標準規格となりました。しかしその過程で「やり方が強引だ」という非難を浴びたり、標準の地位は得たものの以前として多くの政府などの団体からはODFの支持の方が強い、といった状況があるようです。

SP2でのOpenDocumentフォーマットでは互換性に批判が

また、今回のSP2によるOpenDocumentフォーマットのサポートについても、十分ではないといった批判が早速飛び出してきました。

SP2で追加されたOpenDocumentフォーマットでは互換性が十分ではない、というのがODF Allianceの主張です。上記の記事から引用します。

Microsoftは2009年4月28日に発表したOffice 2007 SP2で、ODFとの相互運用性を特徴の1つに挙げており、ODF形式のファイルを開いたり保存することができるとしていた。ODF Allianceによると、ODFベースの複数のオフィススイートとOffice 2007 SP2との間で互換性を検証する初期テストを行った結果、Office 2007 SP2のODF相互運用性には重要な不足があったとしている。

実際に互換性を確認された方のブログを拝見すると、以下のように結論づけられています。

Word - ○ Wordのテンプレートが絡まなければまともっぽい。文書構造もちゃんと再現される。
Excel - × 出力はそのままでは使い物にならない(受け手側でのポストプロセスがいる。特に出力時の情報の欠落が致命的。
Powerpoint - ○ まあまあ使える。入出力結果に手直しが必要ではあるが使えるレベル。

オフィスのファイルフォーマットを巡るマイクロソフトの二面作戦は、残念ながらどちらも苦戦中というところでしょう。次のバージョンのOffice 2010は来年前半に登場予定。今度はどのような手を打ってくるでしょうか?

Tags: Office 業務アプリケーション Microsoft

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