村井教授「絶対に個人からパワーは生まれる」、夏野氏「この25年は西暦2100年頃の教科書に載る」、Web生誕25周年パネルディスカッション「Webの現在から未来へ」(中編)

2014年3月17日

「HTML5とか勉強会」と「W3C」は、Web生誕25周年記念イベント「Webの過去、現在、そして未来」を合同で3月13日に開催しました。イベントでは村井純慶應義塾大学教授の講演に続き、村井教授、元NTTドコモ執行役員の夏野剛氏、HTML5jファウンダーの白石俊平氏、NTTコミュニケーションズの小松健作氏らをパネラーに、新野の司会によるパネルディスカッションを開催。25年のWebの歴史を振り返りつつ、これからのWebでなにが重要となるのかなどについて議論をしました。

本記事ではそのダイジェストを前編中編後編に分けて紹介します。いまお読みの記事は中編です。

fig 左から、小松健作氏、白石俊平氏、夏野剛氏、村井純氏、モデレータの新野

インターネットを作ってきた中で、痛い! と思ったこと

新野 このまま村井先生には、この先の25年の話を引き続きお伺いしたいのですけれど、これからWebはなにが大事になっていくのでしょう?

村井 やっぱり全員が使うでしょ、それからすべての産業が乗るでしょ。開発はボトムアップでできる、でもデザインはトップダウン。

新野 ボトムアップというのは?

村井 つまり、インターネットが速くなって常時接続が前提になるとWebができる。どこでもつながるようになるとモバイルができる、誰もが持てるようになるとモバイルのアプリができるわけで。下からどんどんできる。

ところがデザインはフロム・ザ・トップ。だからオレたちはは何がやりたいんだ、ということを先に考えるのは大事なこと。夢を見る。

その前提は、光ファイバが世界中をつないているとか、LTEは世界中のものをつないでいるとか、世界中のものがTCP/IPをしゃべるとか、すべてのものにWebサーバついているとか、そういう前提で考える、そういう発想がデザイン・フロム・ザ・トップだと思うので、そういう夢を見ましょうと。

新野 そういう世界が来るとして、少し続けてお伺いしたいのですが、まだ何か足りないものがあるとしたらなんですか?

村井 そこまで聞きますか。僕らがインターネットを作ってきた中で、痛い! って思ってること、やってなかった! って思っていることは、ユーザーの抽象化です。

例えば、UNIXだとUIDってなんとintger(整数)。番号ひとつで人間を表すって大丈夫かよと。だって共通のフレームワークがないでしょ、メタデータとか。いまやデジカメの写真の方が人間より標準化されたメタデータがついてますから。

人間はいろんな共通のアトリビュートとかビヘイビアとかあるでしょ、何歳ですか? 血圧いくつですか? とか、あらゆるデータがあるとして、こういうデータが全然標準化されていない。コンピュータシステムの中で人間は抽象化されてない。

これまで人間とコンピュータの世界にかなり線を引いて開発してきたな、と言う感じがして、これからもうちょっと人間を意識できるコンピュータの環境ってできるんじゃないかな、という夢は持っています。

新野 そのお話しの先には、社会システム的な話が広がってくると思うので、その話はひととおりみなさんに話を聞いた後で戻ってこようと思います。

続いて、夏野さんにも、この先の25年で大事だと思うものを教えていただけませんか。

どうあるべきというのは攻殻機動隊の中に全て描かれている

夏野 僕はですね、25年ていうと、僕はいつも言ってるんですけど、最後のラストワンフィートが解決されるんじゃないかと。

ラストワンフィートって、ここまで(おでこの手前まで)LTEで来てるわけですよ。でも、ここと人間の脳とのあいだは、目と音声とかになっちゃって、めちゃめちゃ細いバスになってて、ここが脳と直結になると思ってるんですよ。

fig ラストワンフィートの説明をする夏野氏

僕は攻殻機動隊の大ファンで、攻殻機動隊を読んでない経営者は去れと言いたいくらい、あの本が未来を予測していると本気で思ってるんですけど。

この、脳に直接情報を送るとなったときに、いまHTMLは基本的に視覚データに最適化されてるわけですよね、でもこれが脳に入ってくるといったときにたとえば、ゴーストのつぶやき、これはどうするんだと。テキストとビジュアルが混在してレイアウトされているそのフォーマットのやり方って、脳に入るときにはまた変わってくると思うんです。

例えば、視覚はオフにしてつぶやきだけとか、そういう脳に直接送るときの世界観の中でのHTMLのあり方をいまから考えておいた方がいいと思うし、ウェアラブルって、Google Glassのあんなところに表示されるのって、それってひとつの先駆的な例だと思うんですね。あの小さな領域でたくさんの画像情報を見せるのはナンセンスで、いま村井先生がおっしゃったように、簡単なIDで、どんな属性の誰がいま語りかけているのか、と考えると、ビジュアルデータとしての顔というのが本当にいいのかどうか、というのも分からなくなるじゃないですか。

脳に直接データを入れる前の段階、ウェアラブルコンピュータというのはその段階だと思ってるんです。

HTMLというフォーマットにこだわるのではなく、効率よく人間の脳に伝達する手段はなんだろう? ということを考えた方が、ウェアラブル時代に、あるいはマシン・ツー・マシンの時代には面白いのではないかと思います。

新野 夏野さんとしては、そこになにかアイデアはあるんですか?

夏野 どうあるべきというのは攻殻機動隊の中に全て描かれていますので(笑) 私がこれを視覚化する必要はないです(笑) しかしあの原作は1989年に出てますから、これはティム・バーナーズ=リーと同じくらいすげえなと、まじで思ってます。

新野 その話はW3Cのアドバイザリーボードでされたりするんですか?

夏野 アドバイザリーボードって本当に大変なんですよ、あれ。僕はアジア系ではじめて選挙で当選して、投票してくれた方、ありがとうございました。2期務めましたけど、あいつらね、攻殻機動隊は見てないけどマトリックスは見てるという。その基になったのがこれだ! みたいな。

25年後もHTML/CSS/JavaScriptは生き残っていく

新野 白石さん、小松さんにもそれぞれ、この先の25年で大事だと思われることを教えてください。

白石 HTML5とか勉強会としては、次の25年で大事な技術といったら「HTML5」としか答えようがないんですけど(笑)。まあでも、ほかの技術だと25年後生き残ってるか分からないですが、HTMLは25年後も生き残ってるんじゃないかと思っていて、なぜかというと25年たっているからです。

どの会社がつぶれようとも生き残っていくと思いますし、昔と較べれば大分筋のいい技術になってきた、というのはみなさんも思っていることなんじゃないかと思います。

僕はユーザーインターフェイスには全部HTMLが浸食していくんじゃないかと思っています。ただ、どんどんデバイスが小型化していくとマシンパワーも小さくなって、そこで動かすにはネイティブだと。でもそのなかでここはHTMLのほうがいいんじゃないか、というネイティブとWeb技術のひしめきあいがあって、そういう議論が何年も続いて、でも結局はHTMLになっていくんじゃないかなと思います。

新野 Web標準は、例えばEPUBのようにネットに繋がってないけど電子書籍を作る技術にも応用されているように、どんどん広がってますよね。

白石 Webブラウザの枠を超えて、ネットワークを切り離しても使えるし、あらゆるところに浸食していくなと思います。

小松 25年は長いですよね。

新野 長いですね。25年後に小松さんはいくつになりますか?

小松 いま41なんで……定年ですね。技術がコモディティ化するのは結構重要かなと思ってます。いまHTML5といっていて取りざたされていること自体がダサいみたいな、それがコモディティ化したときに何が起こるんだろうというのが大事だと思っていて、それはもしかしたらWebではないかもしれないですね。

≫後編に続きます。後編では、権力による阻害にみんなでどうやって立ち向かうか、などについての話。

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タグ : W3C , Web標準



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