マイクロソフトが「SMB over QUIC」ファイル共有プロトコル実装中。VPNなしでもインターネット上で安全にファイルサーバへのアクセスを実現へ

2020年9月8日

マイクロソフトが次期Windows Serverに、HTTP/3のベースとなるQUICプロトコルを搭載する予定であることは先週の記事でお伝えしていますが、同社はこのQUICをファイル共有プロトコルであるSMBのトランスポート層に用いた「SMB over QUIC」も開発中です。

最初に同社がこれを明らかにしたのは、今年の3月に公開したブログ「SMB over QUIC: Files Without the VPN」ででした。

そして次期Windows Serverの開発状況を伝える先週のブログ「Announcing Windows Server vNext Preview Build 20201」でも、QUICをHTTP/3だけでなくSMBのトランスポートプロトコルとして用いることを記しているため、「SMB over QUIC」の実装が規定の方針として進行していることは間違いないようです。

SMB over QUICは、Windows Serverだけでなく、ファイルサーバのクライアントとなるWindows 10にも実装される見通しです。

両方が揃うと、QUICに備わっている暗号化機能(TLS 1.3)により、インターネット上でもVPNを用いることなくSMB over QUICだけで安全にWindows 10からファイルサーバとなるWindows Serverへのファイルアクセスが、おそらく従来よりも高速なアクセスとともに実現されることになるでしょう。

さらにMicrosoft Azure上のファイル共有サービスである「Azure Files」へも実装予定とされているため、クラウド内外からも同様のアクセスが可能になりそうです。

YouTubeには、実際にSMB over QUICを用いたデモ動画も公開されています。

QUICがHTTP/3以外にも使われていく始まり

QUICは、Googleが高速なHTTPの通信を実現するため、2014年に開発し独自に実装したプロトコルです。

現在のHTTPはトランスポート層にTCP(Transmission Control Protocol)を用いていますが、TCPはエラー訂正機能などを備え信頼性の高い通信が可能な一方、比較的オーバーヘッドの大きなプロトコルです。そこでTCPの代わりに通信の信頼性は保証されないもののオーバーヘッドの小さいUDP(User Datagram Protocol)を用い、独自に一定の信頼性を保つ実装を組み込みつつHTTPに適した効率的でレイテンシの小さな通信を行えるようにしたのがQUICです。

QUICはまた、暗号化通信を行うTLS 1.3も含んでいます。

そして現在、HTTP/2をベースにQUICに最適化されたプロトコルとして標準化が進んでいるのがHTTP/3です。

参考:「HTTP/3」がHTTP-over-QUICの新名称に。IETFのQUICワーキンググループとHTTPワーキンググループで合意 - Publickey

さらに、QUICはHTTP/3専用のプロトコルではなく、ほかのプロトコルにも利用可能とされています。マイクロソフトが開発中の「SMB over QUIC」はそのひとつといえます。

ただし、まだSMB over QUICの実装がいつ正式リリースとしてWindows 10やWindows Serverに含まれるようになるかは明示されていません。

とはいえこれはHTTP/3だけでなく、これからいろんなプロトコルがトランスポート層としてQUICを採用していく動きの始まりの1つだといえそうです。

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Junichi Niino(jniino)
IT系の雑誌編集者、オンラインメディア発行人を経て独立。2009年にPublickeyを開始しました。
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