「ARMサーバは単にインテルプロセッサを置き換えただけではない」。ARMサーバ市場をリードするCalxedaに聞く

2013年6月24日

現在、より低消費電力で高密度な実装可能なサーバに注目が集まっており、その有力な候補として一般のサーバ向けプロセッサよりも圧倒的に電力効率の高い、ARMプロセッサを用いたサーバの登場が期待されています。

そのARMプロセッサを用いたサーバ市場で最も存在感のある企業がCalxeda(カルゼーダ)です。同社はARMプロセッサを用いたサーバのチップセットやリファレンスデザインをサーバベンダ向けに提供する企業であるため、それほど知名度は高くありません。しかし同社のARMサーバをヒューレット・パッカードがProject Moonshotで採用するなど、ARMサーバ市場をリードする立場にある企業の1つです。

台湾で行われたComputexの直後に来日した同社アジアセールス&ビジネス開発担当 Aaron Grassian氏に、x86サーバとARMサーバにはどのような違いがあるのか? ARMサーバの適用分野や今後のロードマップなどについて、インタビューを行いました。インタビューには同社の国内代理店であるアルティマにご協力いただきました。

完全なサーバ機能をチップに載せた「サーバ・オン・チップ」

まずはGrassian氏による、Calxedaの製品紹介について。

fig Calxeda Director of Asia Sales & Business Development Aaron Grasian氏

Calxedaは2008年にテキサスで創立した会社だ。ARMベースのサーバを設計するふたつのチームを社内に抱えている。ARMはとても電力効率の高いプロセッサで、これをサーバに利用するため、エンジニアチームには携帯電話メーカーに在籍したエンジニア、サーバベンダにいた経験のあるエンジニアの両方がいる。

2011年にヒューレット・パッカード向けに最初の製品を出荷し、現在はそこから第2世代、第3世代へと進んでいる。

ARMベースの優れたサーバを作るには、単純にプロセッサをARMに変更するだけではできない。わたしたちのアーキテクチャは、チップセットにI/Oやネットワーキング、スイッチ、マネジメントなどさまざまな機能が備わっている。

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完全なサーバ機能をチップに載せた「サーバ・オン・チップ」(SoC:Server on Chip)だ。4コアのCoretex-A9に、われわれが実装したL2キャッシュとメモリコントローラを加え、SATA、PCIe、イーサネットなどのI/Oコントローラ、80GBクロスバーのスイッチ、エナジーマネジメントエンジンも搭載した。これに4GBメモリを加え、全体でわずか5ワットの消費電力しかない。

これはそのEnergyCore SoCが1つの基盤に4つ搭載されたもの。これだけで4台のサーバということだ。

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ARMプロセッサはカスタマイズなどをしていないので、ARM用のLinuxはそのまま実行できる。またFedoraは先日、Calxedaをスタンダードなビルドプラットフォームに選んだと発表した。

先日のComputexでは、3つの新しいパートナーを発表した。AAEON、FOXCONN、GIGABYTEだ。

AAEONは1Uのストレージアプライアンスサーバを発表した。低消費電力のプロセッサはストレージサーバにとても適している。FOXCONNも4Uのストレージサーバを発表し、こちらは非常にパワフルなモデルになっている。GIGABYTEが発表したのは2Uのサーバで、WebホスティングやLAMPスタックの運用に向いている。

目指しているのはデータセンターの革新

続いてGrassian氏にインタビュー。

──── Calxedaは、ARMのようなプロセッサメーカーではないし、一方でデルやヒューレット・パッカードのようなサーバベンダでもなく、台湾などのOEM/ODMメーカーでもないユニークなポジションにあるように思う。御社の狙いはどこにあるのか?

私たちが目指しているのはデータセンターの革新だ。私たちから見ると、ARMは知的財産(IP)のパートナーであり、OEM/ODMは顧客になる。

モバイル向けだったARMチップをサーバに入れるには、メモリやI/O、スイッチなどのファブリックをどう作るか、大量のサーバをどう管理するのか、といったことを理解しなければならない。単にインテルのチップをARMに入れ替えてもうまくいかないのだ。

こうした細部にまで対応することが必要であり、私たちはそうしたチップやデザインをビジネスにしていく。

──── まだARMプロセッサには32ビット版しかない。サーバ向けには64ビット版が期待されるが、今後のロードマップは?

それはもう何度も聞かれる質問だ(笑)。いまいえるのは、現在の利用状況であれば32ビット版で十分快適に使えるということだ。

64ビット版ARMのハードウェアは、来年にはサンプルが手に入るだろう。しかし全体のエコシステム、LinuxやJava VM on ARMやアプリケーションといったものが揃うのには、さらに時間がかかる。そうしたものが揃って成熟するのには、そこからまだ1年2年はかかるのではないだろうか。

──── ARM版サーバでどのようなアプリケーションが期待されているのか?

もっとも問い合わせが多いのは、やはりストレージ関連だ。ほかにもWebアプリケーション、大規模なコンピュートグリッドなどもある。ビッグデータ関連でも、Hadoop、Cassandra、mongoDBなどが試されている。これらはスケールアウトの能力が高いため、ARMサーバと非常に相性がいいのだ。

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