日本国内で、ガス消火設備の放射音がデータセンターのハードディスクを破壊する可能性についてメーカーが注意喚起済み。実験でも回復不能になる事象を確認

2016年9月13日

大手金融機関INGの基幹データセンターで、消火ガスの噴射テストにより生じた激しい爆音がハードディスクなどを大量に破損、ATMやカード決済などの銀行業務が停止する深刻な事態が発生したことを報じた1つ前の記事には、非常に多くの反響がありました。

こうした消火ガス放射音によってハードディスクなどが故障を起こす可能性があることは、すでに日本国内で防災機器メーカーから注意喚起されていたとの情報を、はてなブックマークでいただきました(id:poko_penさん、ありがとうございます)。

それが能美防災株式会社が2014年2月付で公開している文書「ガス消火設備の放射音が精密機器(HDD等)に与える影響とその対策案について」です。同社のWebサイトの製品・サービスの下にある「ガス系消火設備」のトップからもリンクされています。

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その内容は、2010年9月に行われた日本建築学会大会において発表された論文で、消火ガス放射時の音圧がハードディスクドライブに影響を与える可能性が示唆されたとし、「個々の案件ごとに、対策を検討する必要があると考えております」としています。

対策の選択肢としては、ハードディスクを格納しているサーバラックなどの防音や防振対策、ガス放射開始前のヘッドの退避、ガス放射音の抑制のための静音形噴射ヘッドなどがあげられています。

仮設検証試験で回復不能になる事象を確認

この能美防災の注意喚起文書には、日本建築学会大会において発表された論文へのリンクも示されています。その論文が以下の3本で、執筆者は全員NTTファシリティーズ研究開発本部に所属していることが分かります。(閲覧は有料)。

3本の論文の結論をまとめると、仮設検証試験室を用いた実験では不活性ガス消火設備のガス放出時には最大で130デシベルを超える音圧の音が発生。この状況で市販のサーバに格納した2.5インチハードディスクが障害を発生し、回復不能になる事象が確認されています。つまり、ING銀行と同様の事象は日本でも十分に起こりうると考えられます。

これらから、データセンター内で用いられているガス消火設備によるガス噴射時のハードディスクへの影響は、珍しいことでも異常なことでもなく、どこでも起こりうる事象のようです。もしも対策をしていないデータセンターがあるとすれば、何らかの対策が求められることになるでしょう。

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