「その目的にはこのAPIを使うのが最適です」、最適なAPIをワトソンの技術で教えてくれる、米IBMが「API Harmony」発表

2015年11月16日

米IBMは、膨大なAPIの中から適切なAPIをプログラマに提案してくれる「API Harmony」を発表しました

IBM News room - 2015-11-05 IBM Unveils Matchmaking Technology to Navigate API Economy - United States

クラウドの普及と歩調を合わせるように、利用可能なAPIが飛躍的に増加しています。例えば、サーバインスタンスやネットワーク、ストレージといったアプリケーションの実行に必要なリソースの構成から、ユーザー情報、地図情報、センサーの情報の取得、アプリケーションによる分析機能や集計機能の呼び出しなど、すべてAPI経由で呼び出すことが可能になってきています。

同時に、多数のAPIを用いた疎結合によるシステム構築も一般的になってきました。

一方で、利用可能なAPIが増加して似たような機能のAPIが林立するようになり、しかもAPIごとにバージョンやオプションが多数存在するとなると、ある目的に対してどのAPIをどう利用するのがもっとも適切なのかという判断は、どんどん難しくなっていきます。

IBMが発表した「API Harmony」は、大量の情報を認識し分析する能力を備えたワトソンの技術を用いて、膨大なAPIの情報を取得、分析した上でデベロッパーの目的と照合し、適切なAPIを提案するというものです。

API Harmony provides a unique developer experience, now using cognitive technologies like intelligent mapping and graph technology to anticipate what a developer will require to build new apps, make recommendations on which APIs to use, show API relationships, and identify what is missing.

API Harmonyはユニークなデベロッパー体験を提供します。それは、インテリジェントマッピングやグラフテクノロジーのようなコグニティブテクノロジー(認識技術)を用いて、デベロッパーが新しいアプリケーションを構築する上での要件を予想し、どのAPIを使うべきかを提案し、APIの関係性を表示し、そして不足しているものを示すのです。(プレスリリースから)

コグニティブテクノロジーとは、ワトソンの基になっている技術です。ワトソンは2011年に米国のクイズ番組「ジョパディ!」で人間のクイズ王と戦って優勝したように、膨大な情報を元に、問いを認識して、その問いに対し適切に答える能力を備えています。API Harmonyはその技術をAPIの分野に適用したものです。

API HarmonyはUDDIに相当する

IBMはAPIに関する情報の記述方式を標準化する「Open API Initiative」の設立へ参加したばかりです

Open API Initiativeではマシンリーダブルな形式の記述標準化を目指しており、これを用いることで正確にAPIの振る舞いを記述し、読み取ることができます。API Harmonyでもこの標準形式を情報の取得に使うことは間違いないでしょう。

さて、このOpen API Initiativeが、かつて普及を目指したXMLベースの「Webサービス」におけるAPIの仕様を記述するための「WSDL」だとすれば、API Harmonyは「UDDI」に相当するように見えます。UDDIとは、イントラネットやインターネットで利用できるWebサービスを発見してもらうためのレジストリでした。

つまり、XMLベースの「Webサービス」を構成していた3つの要素「SOAP/XML」「WSDL」「UDDI」を、RESTful APIの時代において「HTTP/JSON」「Open API Initiative(Swagger)」「API Harmony」にそれぞれ置き換えようとしている、というのがIBMの取り組みと考えられます。

これらの技術をベースにAPIを積極的に使ってシステムを構築するだけでなく、企業間や消費者との取引にまでAPIの利用を発展させていく「APIエコノミー」を作り上げていくことが、この分野におけるIBMの大きな戦略です。

つまりIBMは単にWebサービスの技術をRESTfulに対応した技術で置き換えようとしているのではなく、APIエコノミーを実現するための基礎技術として、結局はWebサービスのときに取り組んだ技術群に対応するものがRESTfulの時代にも必要なのだ、という結論に達したのだと言えそうです。

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Junichi Niino(jniino)
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