RubyGemsの運営元が「Ruby Shield」を発表。RubyとRailsへのサプライチェーン攻撃への対策としてShopifyが4年で100万ドル(約1億3000万円)を提供

2022年7月13日

Ruby言語用のパッケージであるGemのホスティングサービス「RubyGems.org」を運営するRuby Centralは、RubyやRailsに対するサプライチェーン攻撃への対応を行うプロジェクト「Ruby Shield」を開始すると発表しました

Ruby Shieldは4年にわたり100万ドル(1ドル130円換算で1億3000万円)が投資されます。この資金はECサイト構築サービスを提供する「Shopify」の寄付によってまかなわれる予定です。

サプライチェーン攻撃への対応の必要性が高まっている

一般にオープンソースは単独で成立しているわけではなく、あるオープンソースは数多くのオープンソースによるライブラリやコンポーネントに依存しています。

そのため、何らかのオープンソースに脆弱性が発見されると、ドミノ倒しのようにそこに依存するさまざまなオープンソースにも影響します。

このようなオープンソースの依存性に着目し、悪意のある人物によってよく使われるライブラリやコンポーネントなどの脆弱性が利用され攻撃されることを一般に「サプライチェーンに対する攻撃」あるいは「サプライチェーン攻撃」などと呼ばれます。

昨年(2021年)末に発覚したJavaライブラリ「Log4j」の脆弱性は、非常に幅広いJavaのソフトウェアに深刻な影響を与えた例として、このサプライチェーン攻撃への注目度を一気に高めました。

参考:広く使われているJavaライブラリ「Log4j」に深刻な脆弱性。速やかに確認と対策を

この状況を受けて1月には米ホワイトハウスが政府関係機関や主要なITベンダを呼んでソフトウェアセキュリティに関する会議を開催。

2月にはLinux Foundation傘下のOpen Security Software Foundation(OpenSSF)が、オープンソースソフトウェアのサプライチェーン問題を改善し安全性を高めるための大規模なプロジェクト「Alpha-Omega Project」(アルファ-オメガプロジェクト)の開始を発表しました。

参考:オープンソースの安全性を高める「アルファ-オメガプロジェクト」、OpenSSFが開始。マイクロソフトとGoogleがプロジェクトリーダーに

今回Ruby Centralが発表したRuby Shieldは、こうしたサプライチェーン攻撃に対応するRubyやRails関連の動きの1つと言えるでしょう。

Ruby Central自身がこのRuby Shieldに取り組む意義をツイートで説明していますので、それらを引用します。

(なぜこれに取り組むのか? オープンソースのサプライチェーンへの攻撃は増加しており、あるレポートによると2021年から前年比650%増とされています。その間にも、すべてのオープンソースの供給と需要は爆発的に増加しています。)

(Ruby Shieldは私たちにとって、オープンソースがコミュニティのために機能する上で必要な高い信頼性を維持(そして改善)するための重要な役割を担っています。Ruby ShieldはOSSのサプライチェーンに不可欠なRubyGemsやライブラリやツールのエンジニアリング作業を4年間に渡り支援する計画です。)

(我々はエンジニアと契約しており、確実に今後数年に渡り、これまで以上に大規模なセキュリティと安定性を築き上げることができます。具体的には次のような成果を目にすることができるでしょう。 - 運用およびセキュリティエンジニアリング - bundlerなどのツールの改善 - MFAサポートの改善)

(私たちはこれまで何年もこの種の活動に資金提供してきましたが、100万ドルのコミットメント(今後4年間)とShopifyとのコラボレーションにより、この活動の拡大にこれまで以上に期待しています。)

(Ruby Centralはこのプログラムの優先順位とリソースの最適な割り当てについて全てをコントロールする予定です。また、安全性とセキュリティを向上させるために行われている作業をRuby/Railsコミュニティと共有するために、Shopifyと共同で定期的に報告書を発行する予定です)

(これを実現した素晴らしいチームの努力とサポートに感謝するとともに、このパートナーシップとより安全なコミュニティーのためのこれから数年間を楽しみにしています。)

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Junichi Niino(jniino)
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