全社員がリモートワークで働くGitLabが今日、米NASDAQ市場に上場。時価総額は約1兆2000億円に

2021年10月15日

GitLab社が米NASDAQ市場に上場を果たし、14日午前9時半(現地時間)にニューヨークにあるNASDAQ市場のオープニングベルを鳴らすセレモニーを同社共同創業者兼CEOのSid Sijbrandij氏と同社共同創業者でエンジニアリングフェローのDmitriy Zaporozhets氏が行いました

売り出し価格は77ドルで、同社の時価総額は110億ドル、日本円で約1兆2000億円となりました。

同社がサービスを提供しているソースコード管理の分野やDevOpsの分野には、マイクロソフトに買収されたGitHubという強力な競合企業がすでに存在し、それ以外にもDevOpsのためのソフトウェアやサービスを提供する企業が多数存在しています。

そうした中で、創業当初からオフィスを持たず、世界各地にちらばる社員全員がリモートワークで働く企業が急成長し、時価総額1兆円を超える企業として株式公開に成功しました。

このことは、いまリモートワークを推進している多くの組織や個人にとって、リモートワークでも適切に業務をこなし、成功できるのだという重要なメッセージとして響くのではないでしょうか。

徹底した文書化と情報公開の文化を持つGitLab

GitLabによる全社リモートワークのノウハウについては、以前「1200人以上の全社員がリモートワーク。GitLabが公開する「リモートワークマニフェスト」は何を教えているか?」で記事にしていますが、ここでその内容をあらためて紹介しておきましょう(ちなみに現時点で社員数は1500を超えたようです)。

同社がフルリモートワーク企業として成功している背景には、徹底した文書化と情報公開の文化があります。

同社が公開しているリモートワークのマニフェスト「Remote Manifest」を見てみましょう。

fig4 文字がつぶれないように、横3段組を縦に組み替えました

内容を訳してみました。

1)本社よりも、世界中で採用して世界中で働く
2)労働時間を決めるよりも、柔軟な労働時間を
3)口頭で説明するよりも、書面にして知識を記録
4)オンザジョブトレーニング(OJT)よりも、やり方を書面に
5)知る必要があるときだけ教えるよりも、情報公開を
6)ドキュメントをトップダウンで管理するよりも、誰でも編集できるように
7)同期的なコミュニケーションよりも、非同期的なコミュニケーションを
8)労働時間よりも、仕事の成果を
9)非公式なコミュニケーションチャネルよりも、公式なコミュニケーションチャネルを

知識は書面にすること、知る必要があるときに教えるよりも情報公開をすることで、いつでも非同期なコミュニケーションで必要な知識を得られるようにするなど、どれも大事なことが書かれているように見えます。

次に「GitLab's Guide to Remote Work」を見てみましょう。これはGitLab社員がリモートワークをするに当たって必要な心構えから環境構築、働き方まで、必要と思われる知識を網羅した詳細なドキュメントです。

fig5

その一部として「Getting Started」の「What not to do」に並んでいる項目を挙げてみます。

Do not replicate the in-office/colocated experience, remotely
Do not transfer all in-person meetings to virtual
Do not assume that everyone has access to an optimal workspace
Do this, not that
Do not assume that remote happens overnight
Do not assume that remote management is drastically different
Don't assume your existing values can remain static
Contribute your lessons

「リモートでオフィスやコロケーションの体験を再現しようとするな」「一夜にしてリモートで働けるようになると思うな」「リモートのマネジメントは大きく異なるもの、と思うな」「あなたの既存の価値がずっと続くと思うな」など、ちょっとどきっとする項目もありますね。ぜひ詳しい内容まで読んでみてください。

そして、さらに膨大なドキュメントとして公開されているのが、GitLabの社員マニュアルともいえる「GitLab Handbook」です。

fig6

こちらには企業のカルチャー、CEOによるKPIやOKRなどの説明。社史、業務の進め方、評価と給料の決め方、部門毎の仕事の進め方など、社員として必要な知識がほぼすべて網羅されています。

例えば報酬に関する項目「Total Rewards」には、報酬の決め方、評価のされ方、インセンティブ、ストックオプションなどが説明され、さらに「Compensation Calculator」では、自分の役割や役職、居住地(地域の物価が給与にある程度反映されるため)などを入力していくと給与額が計算できるページまであります。

リモートワークだけで運営されてきた企業がこれらを実践し改善し続けてきたことで米NASDAQ市場での株式公開を実現したのです。改めてそこにリモートワークを成功させる大事な要素がたくさん詰まっているとして、参考にすべきなのではないでしょうか。

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Junichi Niino(jniino)
IT系の雑誌編集者、オンラインメディア発行人を経て独立。2009年にPublickeyを開始しました。
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