仮想化技術の最新動向、VMware vSphere 4.1の評価は? ~ 仮想化エバンジェリストのタカハシ氏に聞く(前編)

2010年8月19日

いまIT業界の中でもっとも動きの速い分野の1つが仮想化です。VMwareやマイクロソフト、シトリックスなどの仮想化ソフトウェアベンダは相次いで新機能を備えた新製品を投入しており、一方でインテル、AMDなどのCPUベンダやサーバベンダは、協力して仮想化に最適化したハードウェアの進化に注力しています。

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ストレージ、ネットワークの分野でも、仮想化の進化に合わせた効率の良いストレージ機能、より高速化したネットワーク機能を開発しています。

こうした動向を、Publickeyにこれまで何度か登場していただいた仮想化エバンジェリストのユニアデックス 高橋優亮氏(以下、タカハシ氏)はどう見ているのか、インタビューしました(このインタビューはメールによって行われました)。

今年は仮想化の本格的な夜明け

―― 最近の仮想化のトレンド、顧客の動向などでタカハシさんが気になっていることを教えてください。

ユーザ環境の仮想化が急速に進んでいます。今年は本格的な仮想化の夜明けになったのではないでしょうか。

セミナー来場者に仮想化への取り組みをうかがうと、昨年は取り組んでいる人の方が少なかったのが、最近は全く取り組んでいない顧客は少数派です。これに伴って、ユーザの興味も「仮想化するかどうか」よりも「仮想化とどう向き合うか」にシフトしてきています。

そしてその中身も、運用上の課題、例えばプロビジョニング、バックアップ/リストアやVMスプロール(仮想マシンがどんどん増えていくこと)への対策などの懸念、近年ほとんどバズワードになっている「仮想化でクラウド」みたいな話をどう考えたらいいか、といったことが中心になっているように感じています。

vSphere 4.1の評価は、「びゅんびゅんvMotionできる」

―― 仮想化製品での最近の大きな動きといえば先月、VMwareから「vSphere 4.1」が登場したことだと思います。vSphere 4.1はどう評価されていますか?

バージョン番号的にはvSphere 4.0からvSphere 4.1へと「たった0.1」のマイナーバージョンアップなのですが、けっこう変わりましたね。感覚的には「vSphere4.3~4.5」という感じがしています。

正直、まだ評価は途中なんですが、ストレージまわりの機能の強化がいい感じですね。VAAI(vStorage API for Array Integration、ストレージの操作をサーバからストレージ自身にオフロードするといった機能)のおかげでいろいろ速くて便利になってるなと感じています。ストレージのQoS制御だとか、iSCSIやNFSのパフォーマンス向上についても検証していきますが、ここでもいい結果が出ることを期待しています。

目玉はやっぱりvMotion。本バージョンからvMotionが標準機能になりました。これは長らく望んでいたことなので、本当に歓迎しています。あ、そういえば、「VMotion」 が「vMotion」(先頭のvが小文字)になりましたね(笑)。

そのvMotionが速くなりました。さらに同時並行でvMotionできる数が増えました。これまで同時には2つしかvMotionできなかったのが、1Gbpsで4つ、10Gbpsなら8つまで同時にできるようになりました。特に10Gbps環境では「びゅんびゅんvMotionできる」感じです。

サーバ保守のために、特定のESXサーバからvMotionを使ってすべてのGOS(Guest OS)を追い出す作業はしょっちゅうあります。最近は統合率が向上してGOSが多いので、2つずつのんびり追い出すのは時間がかかって面倒でした。vMotionの効率化は現場の作業時間短縮に大きく貢献してくれます。

もちろん、DRS(Distributed Resource Scheduler、vMotionによるワークロードの自動的な分散配置)によるマイグレーションも速くなるので、過負荷状態にある時間が短縮されて、サービス向上にも寄与することと思います。

DRSと言えば、DRSとFT(Fault Tolerance)のインテグレーションが進んだのもいいですね。フェイルオーバーのターゲットを指定できるとか、かなりよくなっています。これまではサードパーティ製品を使うしかなかった領域ですが、選択肢が広がったのは歓迎すべきだと思います。

また、地味な点かもしれませんが、Virtual Socketで、GOSに対してSMPではなく、マルチコアを提供できるようになりました。一部のソフトウェアでは、CPUソケットに対してライセンス課金していますが、そうしたケースではライセンスコストの圧縮につながり、TCO削減に貢献できるかもしれません。

いくつかの機能は提供中止に

しかしこうした華やかな新機能の裏側にも目を向けると、今回のリリースでいくつかの機能が、現バージョンまでは提供するけど次期バージョン以降では提供中止するとアナウンスされました。「ESXサーバ」や、UpdateManagerのゲストOSへのパッチ適用機能などです。

これらの機能はvSphere 4.1では提供されてますが、今後はもう出ないというわけです。このあたりは、将来のアップグレードのときに運用ルールの変更が必要になる場合があるので、注意が必要です。

たとえば、ESXサーバが提供中止になってESXiのみになると、コンソールLinuxがなくなります。するとコンソールLinux上に作りこんでいた運用スクリプトを全て移行する必要が出てきます。

また、UpdateManagerのGOSパッチが使えなくなれば、何らかの別手段でパッチマネジメントを手当てする必要があります。

製品のバージョンアップについては、こうした失われていく機能についても気にしておく必要があります。

―― Hyper-V SP1のβ版もでました。Hyper-Vの新機能であるダイナミックメモリについては「効果的だ」「そうでもない」といった議論が(おもにマイクロソフトとVMwareのあいだで)あるようですが、タカハシさんはどう見ていますか?

Hyper-V SP1βの検証は本当に緒に就いたばかりで、まともなことはなにも言えないのですが、軽く試した範囲ではダイナミックメモリはマイクロソフトが主張している通りに動作をしているように見えています。まだβ版なこともあってか多々制限はありますが、一定の効果のあるシチュエーションはあるのではないかと。

ただ、実用的な、実効的な効果がどのくらいあるのかはまだこれからです。結果によってはそのうちビデオで喋ったりするかも知れません。

インタビュー後編では、デスクトップ仮想化、ストレージの動向などについて聞きます(仮想化技術の最新動向、デスクトップ仮想化とストレージについて ~ 仮想化エバンジェリストのタカハシ氏に聞く(後編))。

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