FathomDB、「スケーラブルなRDBをDatabase-as-a-Serviceで提供する」と宣言

2010年4月1日

リレーショナルデータベースはスケーラビリティに弱く、そのためにクラウド対応の大規模データベースとしてNoSQLと呼ばれる種類のデータベースに注目が集まっていることは、これまでにPublickeyの記事として紹介してきました。

FathomDB: Databases-as-a-Service

しかし、「リレーショナルデータベースはスケールする」と宣言して、それを実現しようとしているベンチャー企業があります。FathomDBです。

Database-as-a-Serviceを提供するベンチャー

FathomDBは現在、Amazonクラウド2やRackspaceの上でMySQLデータベースの運用をサービスとして提供しています。下記のような画面からセットアップするだけで、自動的に専用のMySQLが用意され、バックアップなどの面倒な運用をしてくれる、というもの。

fig FathomDBのデータベースセットアップ画面

データベースのサイズは、256MBメモリ/10GBディスクの「Pico」から、68GBメモリの専用サーバで運用する「Exa」までさまざまなスケールで用意されています。これはデータベースをサービスとして提供する「Database-as-a-Service」(DaaS)と呼ぶことができるでしょう。

しかし、こうした基本的なDatabase-as-a-Serviceであれば、例えばAmazonクラウドにはAmazon RDS(Relational Database Servic)がありますし、Windows AzureのSQL Azureも似たようなものといえます。

リレーショナルデータベースはスケールする!

FathomDBは、先週米国で行われたイベント「DEMO Spring 2010」で「スケーラブルなRDBをDatabase-as-a-Serviceで提供する」とする計画を明らかにしました。

fig DEMO 2010で発表を行うBarbara氏

FathomDBのファウンダーであるJustin Santa Barbara氏は、次のように述べています。

「だれもがSQLはスケールしないと言っている。しかし、リレーショナルデータベースはスケールできると考えており、スケーラブルなリレーショナルデータベースを提供する」

「われわれは独自の技術的アプローチで、安価なコモディティハードウェアを用いて、スケールするデータベースを実現する」

「われわれのサービスを利用するエンジニアは、スケーラビリティの心配をする必要がなく、サーバの負荷を心配する必要もない。データベースをユーティリティ化することで、ビジネスの問題にフォーカスできる」

「データベースソフトウェアを買う必要は二度となくなる。FathomDBはDaaS市場のリーダーであり、顧客はデータベースを利用する時間ごとに費用を支払えばいい」

「われわれは、従来どおりのデータベースサービスと同時に、革新的で拡張性のあるデータベースを提供していく。時代はクラウドへと動いており、われわれはクラウド時代のデータベースを作り上げていく。ぜひわれわれのスケーラブルなデータベースをみてほしい」

Barbara氏が言う、スケールするリレーショナルデータベースはどのような仕組みで実現されており、いつから提供されるのか、詳細はまだ明らかにされていません。

しかし、Barbara氏は大規模トラフィックの例としてTwitterのサービスをあげており、暗にTwitterクラスの規模に対しても対応できるほどのスケーラビリティを備えたリレーショナルデータベースを提供できる、という自信を示しています。

新しいデータベースインフラとなるか

TwitterだけでなくFacebookやDiggやそのほかネットでサービスを提供するあらゆる企業にとって、データが増えたときどうするか、利用者が増えてトランザクションが増えたときどうするかは大きな課題でしょう。それだけでなく、最近では莫大なデータを分析するニーズを抱えた一般の企業も多く登場してきています。

こうした場合、より高性能なデータベースを実現すべく高度なチューニングを行うか、あるいは高性能なハードウェアで対応するか、Memcachedのようなオープンソースを独自に組み合わせるか、はたまたNoSQLのような新しい技術にチャレンジするか。さまざまな選択肢はありますが、いずれにせよスキルのあるエンジニアを雇用し、組織的に対応しなければなりませんでした。そしてその正否がサービスの成長に重要であるにもかかわらず、それが実際にできる企業はそれほど多いとは思えません。

FathomDBが狙っているのは、そうした多くの企業にとって解決に手間がかかる部分をサービスとして請け負うことです。もしもBarbara氏がいうように、従来のリレーショナルデータベースの延長でスケーラビリティのあるデータベースサービスが提供され、しかも安価に利用できるのであれば、ネットサービスの新しいインフラとして、あるいは大量のデータを抱えた企業のデータベースインフラとして、非常に大きな可能性があるのではないでしょうか。

FathomDBは果たして本当にそうしたサービスを提供するのか。進展があればまたお伝えしようと思います。

以下が、FathomDBがDEMO 2010で行った発表のときのビデオです。

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Junichi Niino(jniino)
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