Kindle Fire搭載のブラウザ「Amazon Silk」は、クラウドとデバイスで分散処理を行う革新的なブラウザ
日本時間で昨晩、Amazonが発表したデバイス「Kindle Fire」には、クラウドとデバイスのあいだで分散処理を行う全く新しいWebブラウザ「Amazon Silk」が搭載されています。
Amazon Silkはローカルのデバイス上で動作するWebブラウザの背後に、クラウドであるAmazon EC2で動作するサービスがつねに存在し、両者が連動して高速なWebブラウジングを実現すると説明されています。Amazonはこれを「Split Browser Architecture」と呼んでいます。
これまでWebブラウザの高速化、高機能化の競争は、PCやモバイルデバイスなどで動作するソフトウェアの進化を意味していました。しかしAmazon Silkの登場で、この進化がクラウドを巻き込むものに広がりました。
グーグルやマイクロソフト、モジラ、オペラなどのWebブラウザベンダの戦いに、Amazonはとんでもない方向から飛び込んできたのです。
Amazonが公開している解説動画から、その仕組みをみていきましょう。
デバイスとクラウドが連係して高速化を実現
Dynamic Split Browsingでは、デバイス側だけでなくクラウド側にも同じブラウザのサブシステムが動作しており、状況によってどちらの機能の能力をどれだけ利用するかが最適化される。
Webページを表示するには、名前解決やTCPハンドシェイク、コンテンツの取得など、細かいやりとりを何度もサーバと行い、そのためにユーザーは待たされている。
これらの処理をクラウドの能力で行うことで、わずか5ミリセカンドで終えてデバイス上にWebページを表示できる。この違いは典型的なWebサイトで実感できるだろう。
Amazon EC2上に無制限なキャッシュを用意し、イメージ、CSS、JavaScriptなどを置くことで高速化をはかれる。
同時にコンテンツの最適化を行う。例えば3MBの画像をAmazon EC2で50KBに最適化してからデバイスに送る。
機械学習により、利用者のパターンを学習する。ニューヨークタイムスのトップページを開いたら、次はどのカテゴリをクリックするのか予測してロードしておく。
Silkの名前の由来は、よりよいブラウザを実現するためにデバイスのKindle FireとクラウドのAmazon EC2を強く結びつける、という意味からとったもの。
マイクロソフトやグーグルは追随してくるか?
コンテンツ最適化やサーバ側でのキャッシュなど、モバイルデバイスのWebブラウジングを支援する技術はこれまでありましたが、それらすべてを組み合わせ、さらに機械学習まで投入して徹底した作り込みを実現し、それをデバイスと統合したサービスとして展開できるのは、豊富なリソースを安価に提供するAmazon EC2を展開するAmazonならではです。
アップルがiPhone/iPadで成功した背景に音楽やアプリケーションのマーケットの仕組みが存在したように、Amazonはタブレットで成功するためにデバイスとクラウドとの連係を深く考え抜いたことが見て取れるようです(果たして今の日本のデバイスメーカーにできるでしょうか)。
Amazon Silkが多くの利用者から支持されることになれば、グーグルやマイクロソフトなど、クラウドを保有するWebブラウザベンダも黙ってはいないでしょう。Webブラウザの進化は、Amazon Silkの登場で新たなステージに入ったのかもしれません。
以下がAmazon Silkの仕組みを解説した動画です。
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