EMCがNASストレージベンダのアイシロン買収を計画

2010年11月15日

ストレージベンダ最大手のEMCが、NASストレージベンダのアイシロン・システムズの買収を計画していると報道されています。

アイシロンはファイルサーバ機能を持つNAS(Network Attached Storege)を提供するストレージ専業ベンダ。スケールアウトストレージと呼ばれる、複数のストレージユニットを積み重ねていくことで柔軟にストレージ容量と冗長性を高める機能を最大の特徴としています。

fig Isilon IQ スケールアウトNAS

従来のストレージは、ストレージを構成するディスクが壊れたとしてもデータを失わないようにする冗長機能としてRAIDを採用していましたが、アイシロンでは最大144台までクラスタ化が可能なストレージユニットに、自動的にデータを分散して保存することで独自の冗長性を備えるとともに、ストレージユニットを増やすことでシステム全体の容量が増えていくスケールアウト機能を実現しています。

こうした独自の信頼性と大容量などにより、同社は大容量ストレージのニーズが高い映像メディアやコンテンツ分野などに強味を持っていましたが、一方でVMwareの仮想環境にも対応するなどエンタープライズ分野へも注力しています。

ストレージが成長市場である理由は仮想化の広がり

ストレージ市場では、8月に3PARの買収をめぐってデルとヒューレット・パッカードが火花を散らしてから、3PARの次はどこが買収されるのか注目が集まっていました(参考:ストレージベンダ、次に買収されそうな候補トップ10)。

いま、多くの企業がサーバ仮想化を採用していますが、サーバ仮想化が普及することによってそれまで企業内で分散されていたサーバが集約されると、当然のようにそれぞれのサーバごとに分散されていたストレージも集約されることになり、より大規模で高速なストレージのニーズが高まります。

さらに仮想化ではサーバ間で仮想マシンの移動(VMotionやLiveMotionなど)を行うためには、サーバ間でストレージを共有しておく必要があるため、それまでサーバに内蔵されていたストレージ(DAS)をSANやNASといった外部ストレージへと移行しておく必要があります。

こうした仮想化の普及やサーバ集約といった業界のトレンドを追い風にして、高性能大容量なSANやNASストレージ市場は現在成長分野となっており、どのサーバベンダもストレージのラインナップの充実を急いでいるのです。

特にアイシロンが得意とするストレージのスケールアウト機能は、今後のストレージの柔軟性や信頼性を方向付ける重要な機能といえ、同社は遅かれ早かれどこかの大手ベンダに買収されると考えられていました。EMCはそうした動きに先手をとったといえるでしょう。

しかしデルが3PARの買収を宣言したあとでヒューレット・パッカードが待ったをかけたように、もしかしたらEMCのアイシロン買収に対抗するベンダが登場してもおかしくありません。

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