アドビCTOのケビン・リンチ氏「いつかはHTMLがFlashに取って代わるとしても、遠い将来のことだ」

2010年2月4日

HTML5という競合技術の登場、そしてアップルのiPadがサポートしないことを明確にしたことで、Flashの将来を不安視する意見が増えつつあります。

Open Access to Content and Applications (Adobe Featured Blogs)

いままでアドビシステムズはこうした意見に対して直接の反応を示すことはほとんどなく、FlashやOpen Screen Projectの進捗とロードマップなどの表明によってFlashの先進性や将来性を訴えてきました。

しかしついに同社のCTO ケビン・リンチ氏は、iPadがFlashをサポートしない理由と、HTML5について同社がどう考えているのかを、同社のブログに「Open Access to Content and Applications」というエントリをポストすることで表明しました。

リンチ氏は同社のデベロッパー向けの顔として、イベントなどで積極的に同社の技術をアピールする役回りを果たしてきた人物です。

FlashをiPadに移植する用意はできているが

リンチ氏は、iPadがFlashをサポートしないことについて次のように書いています。

So, what about Flash running on Apple devices?

さて、アップル製デバイスのFlash対応についてはどうか?

(略)

We are ready to enable Flash in the browser on these devices if and when Apple chooses to allow that for its users, but to date we have not had the required cooperation from Apple to make this happen.

われわれは、もしアップルがユーザーのためにそれを許可するのなら、これら(アップル)のデバイスのブラウザにFlashを対応させる準備はできている。しかし、アップルからはこれまでそうした協力依頼は一切ない。

iPadにFlashが移植されないのはアップルの意志である、というのはやはり確かなようです。

アドビはアップル以外のデバイス、スマートフォンやネットブック、タブレットPCなどへのFlashの移植を同社のOpen Screen Projectを通じて進めていることを、グーグルのNexus OneにFlash 10.1が移植されることなどを引き合いに出して紹介しています。

Now we are at an important crux for the future of Flash. A wide variety of devices beyond personal computers are arriving,

われわれはいま、Flashの将来にとって重要な時期にいる。PCを超えてさまざまなデバイスが登場しつつあるのだ。

タブレットPCやスマートフォンへの移植を積極的に行うことでFlashの将来は明るいことを、リンチ氏は訴えています。

HTML5の問題を指摘するリンチ氏

Flashの競合技術とされるHTML5について、リンチ氏は「長期的にはどこかでHTMLがFlashのニーズに取って代わるだろうが」と意外な切り出しをしています。

Longer term, some point to HTML as eventually supplanting the need for Flash, particularly with the more recent developments coming in HTML with version 5. I don't see this as one replacing the other, certainly not today nor even in the foreseeable future.

長期的にはどこかでHTMLがFlashのニーズにとって代わるだろう、とりわけ現在開発中のHTML5が。しかし、それが単純に置き換わるとか、今日や予想できるほどすぐにそれが起きるとは思わない。

そしてアドビはHTMLとその進化をサポートするけれども、Flashの方が高機能で高信頼だと書いています。

Adobe supports HTML and its evolution and we look forward to adding more capabilities to our software around HTML as it evolves. If HTML could reliably do everything Flash does that would certainly save us a lot of effort, but that does not appear to be coming to pass.

アドビはHTMLとその進化をサポートするし、その進化に合わせてわれわれのソフトウェアにも新たな機能を追加できることを期待している。もしHTMLがFlashのすべての機能を同等の信頼性でできるのなら、われわれも助かる。しかし、そういうことにはなりそうもない。

その理由としてリンチ氏が挙げるのがブラウザごとに異なるビデオフォーマットの実装。

so users and content creators would be thrown back to the dark ages of video on the Web with incompatibility issues.

ユーザーやクリエイターはこの非互換製の問題によってビデオの暗黒時代に放り出されるだろう。

Flashを標準と共生させるメッセージこそ期待する

HTML5に対するアドビのスタンスは、昨年6月の記事「『アドビ vs Web標準』の決着はどうなる」での同社のエバンジェリストのスタンスと基本的には変わっていません。HTML5はまだ問題を抱えており、Flashは優れていてずっと先をいっている、というスタンスです。

アドビ的にはこれは正論だし現実的な主張だとは思いますが、HTMLの進化に期待している多くのデベロッパーたちに冷水をかけるような主張が、アドビにとって有利に働くとはあまり思えません。

これまで下記のいくつかの記事で書いてきたように、アドビは今後FlashもHTML5もJavaScriptも含むAIRのような標準ベースの新しいアプリケーションプラットフォームへ進むべきだし、そこで競争してほしいと思っています。そしてそのための開発ツールが収益の1つの柱になると考えれば、あえてHTMLに対して競合的なポジションをとらず、HTMLもFlashもどちらも積極的にサポートするベンダとなり、デベロッパーが使いやすい方を使ってくれればいい、というニュートラルなポジションでいるべきでしょう。

マイクロソフトはかつて、Webブラウザなどで自社技術にこだわり標準を軽視したことで多くのWebデベロッパーにそっぽを向かれました。いまあらためて「標準を重視しています」と方向転換をアピールしていますが、それが浸透するにはまだ多くの時間が必要でしょう。

アドビのFlashはフォントや3Dの技術などHTMLにはない機能も備えた素晴らしい技術ですが結局は独自技術の1つに過ぎません。Flashを標準と競争させるのではなく、いかに共生していくのか、そうしたメッセージがアドビから発信されることを期待します。

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タグ : Adobe , Flash , HTML5 , Web標準



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