ブロケードがなぜ身売りを考えるのか? 理由は「コンソリデーション」と「イーサネット」

2009年10月13日

Network Specialist Brocade Up for Sale - WSJ.com

10月6日付けのウォールストリートジャーナルの記事「Network Specialist Brocade Up for Sale」(日経による日本語の記事)をきっかけに、SANのトップベンダであるブロケードが自身の身売りを検討していることがIT系のさまざまなメディアで報じられています。身売り先として、ヒューレット・パッカード、そしてサン・マイクロシステムズの買収手続き中であるオラクルなどの名前も挙がっています。

ブロケードは、サーバとストレージを接続するネットワーク、SAN(ストレージエリアネットワーク)のトップベンダであり、昨年にはファウンドリーネットワークスを買収してスイッチやルータを扱うLANベンダとしても存在感を高めてきました。同社の製品はデル、ヒューレット・パッカード、サン・マイクロシステムズ、EMCなど多くのベンダがOEMや再販を行っており、最近ではIBMもそれに加わって自社製品としてブロケード製品を扱っています。

このようにSAN市場のリーダー的な位置を占めつつ、この1年の業績や株価も特に落ち込んだわけではない同社は、なぜ自分自身をどこかの企業に買ってもらいたい、という考えを持つのでしょうか?

株価のグラフを見ると、ウォールストリートジャーナルが6日に同社の身売りを報じる少し前から株価が急上昇していることから、市場は同社の考えを支持し期待していることが分かります。

fig 過去1年間の米ブロケードの株価。身売り報道の直前から急騰している。ロイターの株価情報から引用

同社を含むストレージ業界、ネットワーク業界になにが起きているのでしょう?

ハイテク業界で進む「コンソリデーション」

ウォールストリートジャーナルは、ブロケードの身売りを報じた記事の中でこのことを次の言葉で表しています。

The tech industry is in the midst of a long-predicted consolidation.

ハイテク業界は、永らく予想されていたコンソリデーション(統合)の真っ最中だ。

同紙は、デルが情報処理サービス会社のペロー・システムズを買収し、ゼロックスがやはり情報処理サービスのアフィリエーテッド・コンピューター・サービシズ買収したことなどをコンソリデーションの例としてあげています。また、オラクルがサン・マイクロシステムズを買収したこともコンソリデーションが目的であることは言うまでもないでしょう。

身売り先として名前があがったヒューレット・パッカード、オラクルなどは、ブロケードを買収することでサーバ、SAN、LANをすべてワンストップで提供できるようになります。それゆえに売却先の候補と思われています。

多くの顧客は自分でサーバとSAN、LANを個別に選んで最適解を見つけるよりも、それをベンダにまとめて提供してもらう方がよいと考えるようになっています。これは以前のエントリ「オープンシステムの幼年期の終わり」にも書いたように、オープンシステムが成熟してきた結果、システム構築の際の選択肢が非常に増えて複雑になる一方で、技術と互換性の進化によってどれを選択しても一定以上の性能を得られるようになりました。顧客は苦労して最適な組み合わせを選ぶよりも、ワンストップソリューションを望むようになってきた、というわけです。

シスコが、ヒューレット・パッカードやIBMなど付き合いの深いサーバベンダの反感を買ってまでサーバの開発に乗り出し、自社製品として販売をはじめたのは、このコンソリデーションのトレンドに乗ってLAN、SAN、サーバをワンストップで提供する環境をいち早く整えるためでしょう。

ブロケードはシスコを競合として強く意識しているはずで、そのシスコがコンソリデーション戦略で先んじたとあれば、長期的な視点でブロケードが生き残るためにサーバベンダとの統合を選ぶのは合理的な戦略と言えそうです。

ファイバーチャネルはイーサネットへ統合される

しかしブロケードはすでに主要なサーバベンダにOEMなどで製品が採用され、顧客にとってワンストップショッピングは実現されているといえます。なぜわざわざ身売りまで検討することになるのでしょう?

それはSANの技術動向に関係していると想像します。現在、SANはファイバーチャネルで構築されるのが一般的です。ホストバスアダプタ、ファイバーケーブル、SANスイッチなどの専用ハードウェアが用いられます。

しかし今後はFCoE(Fibre Channel over Ethernet)と、イーサネットのパケットロスやレイテンシを向上させたCEE(Converged Enhanced Ethernet)によって、SANの物理層がイーサネットに統合される方向にあります。ファイバーチャネル用のハードウェア機器は不要になってしまうのです。

そしてSANがイーサネットで構築できるようになれば、競合ベンダはSAN業界だけにとどまらず、LANベンダが入り乱れてくることが容易に想像されます。競合が激しくなる上にさらにイーサネットベースともなれば価格も急落するかもしれません。これは顧客にとってはどちらもうれしいことですが、ファイバーチャネルのSANで築いてきたブロケードの強みが薄れていく可能性は大でしょう。

そうなる前に手を打つためのアクションの1つとして、「どこかのベンダーに自社を売却する」という選択をブロケードは選択していると考えられます。

ウォールストリートジャーナルの報道によると、同社は売却先が見つからない可能性についても検討しているとのことです。この選択肢は売却先との交渉を有利にするためのブラフなのかもしれませんが、あるいはシスコのように、自身でサーバを開発する、あるいはさらにネットワークベンダを買収してSAN、LANどちらの市場でもさらに優位性を高めるといった、よりアグレッシブなオプションも考えているのかもしれません。

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タグ : FCoE , IT業界動向 , ストレージ



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