メディアにもアーキテクチャがある。だからアーキテクトが必要だ

2009年3月11日

オンラインのメディアと紙のメディアで僕がいちばん違うと思う点は、オンラインのメディアにはアーキテクチャが求められる、ということです。

紙のメディアである新聞、雑誌、書籍などにアーキテクチャがないわけではありません。しかしそのアーキテクチャは、表紙があり、目次があり、記事ページがあってそれを読者が順番に読んでいく、という構造以外にあまり選択肢がありませんし、ほぼ不変でもあります。

おのずと紙メディアの責任者である編集長の仕事は基本的に、編集者や著者などからあがってくる、テキストや画像やレイアウトのクオリティを管理することが中心になります。

オンラインメディアはどうでしょうか? オンラインメディアはご存じのとおり、紙メディアよりもずっと複雑な構造をしています。

まずページのレイアウトからして、オンラインメディアは広告と記事が1つのページに混在しています。ページのどの部分に広告を入れるのか、大きさや数はどうするのか、テキストにするのかグラフィックにするのか、などを考えなければなりません。

読む順番はさらに複雑です。読者はどのページからでも読み始める可能性があるのです。読者にどのようなインデックスページを用意し、ナビゲーションを提供し、どう誘導したいのか。関連記事をどこに載せるのか、ランキングは載せるのか載せないのか、新着記事はどこで紹介するのか。メディアの特性や読者の傾向などを考えながら決めなくてはなりません。

さらにオンラインメディアでは読者との対話もコンテンツの一部として想定されます。掲示板をつけるのか記事ごとにコメントしてもらうのか、掲示板ならどんなシステムを採用するのか。記事との連携はあるのか、対話の責任者は設けるのかどうか。そもそも読者と対話する機能を設けるのかどうか。

そのほかにも、SEO、ほかのメディアとの連携、ECサイトなどのサービスとの連携などさまざまな要素があります。

これら全体を整合性のある形でひとまとめに考えることは、メディアのアーキテクチャを考えることにほかなりません。しかも、いちどアーキテクチャを決めたからといってそれがずっと続くことはありません。毎週のように微調整を繰り返し、必要ならば半年ごとにリニューアルを繰り返したとしてもおかしくないのです。そしてその作業の大半が、実は編集者とではなくエンジニアと対話することで実現されていくのです。

ゆえに、オンラインメディアの責任者に求められる仕事はアーキテクトとしての役割が重くなります。記事すなわちテキストのクオリティ管理だけでなく、コード、つまりサイトを構成するHTML/CSSやCMSを含むサイト全体の仕組みに対するクオリティ管理もできなくてはなりません。

いまオンラインメディアの責任者は歴史的経緯から紙メディアの編集長のように選ばれ、紙メディアの編集長のような仕事、テキストのクオリティ管理が中心になっていると思います。しかしオンラインメディアがさらに進歩していくためには、アーキテクトの能力を備えた編集長、それはもう編集長という名前ではないのかもしれませんが、そういうポジションの人がもっと育ったり活躍できたりする必要があるはずです。

オンラインメディアの半分は編集者が作りますが、もう半分はエンジニアが作っているのです。

そうしたメディアのアーキテクトが育つためには新興のメディアで新しい人がもっとチャレンジしたり、スピンアウトしたりするといいのですが、既存のメディアからはなかなか出てきていませんね。そもそもまだ国内ではメディアが生まれる数も少ないですし。それよりも、ブロガーから成長していくといったケースのほうが可能性があるのかもしれません。

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カテゴリ 編集後記 / おもしろ
タグ  メディアの未来


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