マイクロソフトがGPLを採用した理由は仮想化市場で勝つための戦略

2009年7月22日

マイクロソフトがLinux用のデバイスドライバを開発し、GPLの下でオープンソースとして公開した、というニュースが報道されています(@ITCNET JapanCOMPUTERWORLD.jp)。

MS、「Hyper-V」用ドライバのコードをLinuxに提供--GPLで公開

多くの報道では、ついにマイクロソフトがGPLを採用したという点に注目しています。CNET Japanの報道から引用します。

本当に驚くべきなのは、これらデバイスドライバのコードがGNU General Public Licenseバージョン2(GPLv2)の下で公開されることだ。MicrosoftはかつてGPLを米国の敵と称したが、今ではそれを味方につけようとしている。 まるで神々が乱心したかのような出来事だ。

しかしマイクロソフトが突然ボランティア精神に目覚めて、オープンソースへの貢献を果たすべくGPLへの採用へと向かったのでしょうか? そうである可能性は否定しませんが(笑)、報道されているように、今回提供されたのは同社の仮想化ハイパーバイザーであるHyper-V上でLinuxを実行する際に、性能の低下を防ぐためのデバイスドライバです。@ITの記事から引用します。

公開したのは、Windows向け仮想化環境のHyper-V上の「Enlightened I/O」と呼ばれる準仮想化向けの機能を利用するためのデバイスドライバ。

ハイパーバイザーの弱点はI/O性能

VMWareやHyper-Vなどのハイパーバイザーは仮想マシンを複数作り出す役割を備えています。このとき仮想マシンも物理マシンも命令セットは同じx86であるため、仮想マシン上のx86命令の実行速度にほとんどオーバーヘッドはありません。

一方で、仮想マシンからディスクやネットワークへアクセスする場合には、基本的には仮想マシンでエミュレーションしているデバイス経由でのアクセスとなるためオーバーヘッドが高くなります。つまり、I/O性能が低下しやすいというのが、仮想環境を利用するうえでのボトルネックでした。

今回、マイクロソフトが公開したHyper-V対応のLinux用デバイスドライバは、こうした仮想環境でLinuxを実行した場合でもI/O性能の低下を防ぐために、ハイパーバイザーと協調して動作するものです。

いままでHyper-Vでは、正式サポートしているSUSE Linuxに対してのみこのようなデバイスドライバが提供されていましたが、これでSUSE Linux以外のLinuxへもサポートが広がることになります。

仮想化市場でヴイエムウェアはマイクロソフトに敗れ去るか

現在、ハイパーバイザー市場はヴイエムウェアが大きなシェアを獲得しており、マイクロソフトはHyper-Vでそれを追いかけています。

マイクロソフトは仮想化ベンダとして後発であり、そのおかげでHyper-VはVMwareと比べると機能的に見劣りしていました。特に指摘されていたのは、稼働中でも仮想マシンを別のマシンへ移動可能なライブマイグレーション機能がHyper-Vにはなかったことです。

しかしWindows Server 2008 R2の登場と同時にリリースされるHyper-V 2.0では機能的な面で並ぶといわれています。すると、次に課題になるのがいかに多くのゲストOSをサポートしているか、という点です。マイクロソフトのデバイスドライバの提供は、こうした仮想化市場でHyper-V 2.0での競争力強化の狙いが明確に見て取れます。

マイクロソフトがGPLを採用してまでLinuxデバイスドライバの公開に踏み切ったのは、純粋に冷静なビジネス上の判断として、それがいちばん有利だったからでしょう。

Just a Thought; Will VMware become the next Novell?

マイクロソフトがゲストOSとしてLinuxのサポートに本気で乗り出したことは、仮想化市場でマイクロソフトと競争関係にあるヴイエムウェア、シトリックス、オラクルなど多くのベンダにとって脅威です。VIRTUALIZATION.INFOの記事が指摘しているように、ガートナーの副社長David Cappuccio氏は、かつてネットワークOSの市場でマイクロソフトに破れたノベルのように、ヴイエムウェアは仮想化市場でマイクロソフトに破れるのではないか? と、ブログ「Just a Thought; Will VMware become the next Novell?」に書いています。

しかし現在のヴイエムウェアの社長は、2000年までマイクロソフト社内で開発部隊を仕切ってきたかつての幹部、ポール・マリッツ(Paul Maritz)氏です。ライバル会社の戦略は承知している、といったところでしょう。

主要ハイパーバイザーはいまや無料で配布されており、また基本的な機能や性能は横並びになってきました。今後は管理ツールの充実、プライベートクラウド戦略の位置づけ、そしてサーバを提供するハードウェアベンダとの連係がカギになってくると思われます。そして、これらは総合ベンダであるマイクロソフトにとって有利に働きそうな気配です。

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カテゴリ Docker / コンテナ / 仮想化
タグ  Microsoft , オープンソース , 仮想化


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