オバマ大統領の再選を勝ち取ったITチームは、どんなメンバーで構成されていたのか?

2012年11月14日

2012年のアメリカ大統領選挙は、バラク・オバマ現職大統領の勝利に終わりました。アメリカ大統領選挙とは、いわば米国でもっとも巨大なマーケティングキャンペーンであり、明確な期限があり失敗できないプロジェクトの1つです。

Obama Wins: How Chicago's Data-Driven Campaign Triumphed | TIME.com

今回のオバマ氏のキャンペーンで話題になったのは、ITの活用とその効果でした。

詳細を報じたTIME誌の記事「Inside the Secret World of the Data Crunchers Who Helped Obama Win」によると、オバマ氏の地元シカゴに置かれた選挙対策本部にある「The Cave」と呼ばれる部屋では、効果的な手を打つために各州の有権者のデータを統合、その嗜好や動向を把握、分析。その結果ジョージ・クルーニー氏の影響力が高いと判断して彼による食事会を設けて資金集めに成功したり、スイングステート呼ばれ、勝敗の鍵を握る激戦州での選挙結果をさまざまなシナリオを想定して毎晩6万6000回もシミュレートする、といったことが行われていたそうです。

もちろんオバマ氏が大統領となった2008年の選挙で話題になったFacebookの活用など、ソーシャルメディアによる有権者との交流はさらに進化しており、Tumblrを中心とした画像や動画の共有、オバマ氏自身のツイートなど活発に行われました。

そのオバマ氏の選挙を支えたITチームとはどのようなメンバーで構成されていたのでしょうか。肩書きと仕事の内容、そして彼らの経歴を見ていくと、今回のキャンペーンでITチームが果たした役割がいかに緻密なもので、しかも先進的な取り組みであったかが見えてきます。

Obama for America 2012 Campaign Organization

ここでは、2005年から独自の選挙情報を提供してきたWebサイト「Democracy in Action」の「Key People-President Barack Obama」でまとめられている、Obama for Americaの組織構成をベースに、Mother Jonesの記事「Meet Obama's Digital Gurus」、前述のTIMEの記事、そして主要メンバーのFacebookやLinkdIn、Twitterなどの情報を組み合わせて、オバマ氏の選挙戦を支えてきたIT関連の3つのチーム、「ニューメディア」「テクノロジー」「データ」がどういったメンバーで構成されていたのかをまとめてみました。

この3つのチームに所属していた人たちの肩書きをざっと眺めるだけでも、新しい肩書きや仕事の発見がありますし、どのようにチームが形成されていたかが想像できます。これから新しいチームを構成する際に参考になるのではないでしょうか(その一方で、日本の選挙事務所がこうしたチームを組むようになる日が来るのだろうかと思わされますが、それはPublickeyの話題ではないので置いておきます……)。

ニューメディア担当チーム

このチームが担当したニューメディアとは、オンライン上のソーシャルメディア、動画投稿サイト、写真投稿サイトなどのことを指します。オンラインでオバマ氏のブランディングをいかに高め、有権者とのエンゲージメントを作り上げていくかがミッションでした。

チーム構成を見ると、従来のインターネット広告やSEO/SEM担当、ソーシャル担当と同じチームにデザイン、ビデオといった担当がいて、それらをブランディングのプロフェッショナルがまとめているというスタイルになっているようです。組織化(Organizing)担当が、おそらくソーシャルメディアを使った有権者へのエンゲージメントを担当しているのでしょう。インバウンドライター、メールライターまで抱えている点が注目ですね。

  • チーフデジタルストラテジスト(Chief Digital Strategist) Joe Rospars氏
    責任者であるRospars氏は、ジョージ・ワシントン大学で政治学を専攻、2003年にDean For America(ハワード・ディーン議員の民主党大統領候補選活動)にライター/ストラテジストとして参加。2004年にはオンラインでのソーシャル活動、ブランディング、エンゲージメント、ファンドレイジングなどのコンサルティング会社Blue State Digitalを共同創業。オバマ氏のキャンペーンには2004年3月から参加。

  • デジタルディレクター(Digital Director) Teddy Goff氏
    Goff氏は、エール大学で英文学と政治科学を専攻。2008年のオバマ氏のキャンペーンで激戦州のデジタルディレクターを担当。オバマ氏の大統領就任に当たり、WhiteHouse.govの作成を担当。Joe Rospars氏が創業したBlue State Digitalのアソシエイトバイスプレジデント。

組織化担当

  • デジタルオーガナイジングディレクター(Digital Organizing Director) Betsy Hoover氏

  • エンゲージメントプログラムマネージャ(Engagement Program Manager) Jeff Gabriel氏

ビデオ担当

  • ビデオディレクター(Director of Video) Stephen Muller氏。

デザイン/制作担当

  • デザインディレクター(Design Director) Josh Higgins氏
    Higgins氏は、Departure Advertising社のクリエイティブディレクターで、12年のデザイナー経験を持つ。

  • シニアデザイナー(Senior Designer) Daphne Karagianis氏

  • シニアデザイナー/フォトグラファー(Senior Designer/Photographer) Chris Dilts氏
  • リードプロダクションデザイナー(Lead Production Designer ) Zach Stubenvoll氏
  • アソシエイトデザインディレクター(Associate Design Director) Carla Pearlman氏
  • シニアデザインリード(Senior Design Lead) Taylor LeCroy氏
  • シニアインタラクティブデザイナー(Senior Interactive Designer) Jillian Maryonovich氏
  • リードインタラクティブデザイナー(Lead Interactive Designer) Dan Carson氏

インターネット広告担当

  • インターネット広告(Internet Advertising) Bully Pulpit氏
  • シニア広告ストラテジスト(Senior Advertising Strategist) Sarah Eva Monroe氏
  • デジタル広告ストラテジスト(Digital Advertising Strategist) Chris Choi氏
  • シニアデジタル広告マネージャ(Senior Digital Advertising Manager) Eric Reif氏
  • デジタルメディアプランナー(Digital Media Planner) Yasmin Aslam氏

サーチエンジンマーケター

  • Cliff Doggett氏、Brian O'Grady氏。

分析担当

  • シニアデジタルアナリスト(Senior Digital Analyst) Amelia Showalter氏
  • デジタルアナリスト(Digital Analysts) Aziz Shallwani氏、Timothy Prescott氏、Matthew Rattigan氏、Gaurav Shirole氏

その他

  • 開発ディレクター(Director of Development) Dan Ratner氏
  • デジタル製品ディレクター(Director of Digital Products) David Sebag氏
  • デジタルプロジェクトマネージャ(Digital Projects Manager) Michael Gottwald氏
  • プログラムマネージャ(Program Manager) Sarah Langhinrichs氏
  • ソーシャルメディアコンテントマネージャ(Social Media Content Manager) Jessi Langsen氏
  • シニアアウトバウンドライター(Senior Outbound Writer) Martha Patzer氏
  • メールライター(Email Writer) Caitlin Mitchell氏、Toby Fallsgraff氏

テクノロジー担当チーム

テクノロジー担当チームは、オバマ氏のキャンペーンに必要なシステムやソフトウェアの調達や開発、構築、運用などを担当していました。いわゆる一般的な意味でのIT部門がここに当たります。

このチームではソフトウェアエンジニアが多数いるのは当然として、UXの肩書きを持つメンバーが多数いる点が目を引きます。DevOps担当がいるのも面白いですね。

  • チーフインテグレーション&イノベーションオフィサー(Chief Integration and Innovation Officer) Michael Slaby氏
    責任者のSlaby氏はブラウン大学卒業後、いくつかのスタートアップでマルチメディア、Webデザイン、アプリケーション開発などを担当。また、複数のNPOにおいてコミュニケーション&テクノロジーのアドバイザーを務める。ベンチャーキャピタルTomorrowVenturesでChief Technology Strategistを経て、2008年オバマ大統領選挙のTechnology Directorで長期的な技術計画立案担当。Web戦略、データ統合、インフラ、サイバーセキュリティ標準などを担当。2010年6月 PR代理店のエデルマンにエグゼクティブ・バイスプレジデント兼デジタル分野のグローバル・プラクティスチェア就任。

  • チーフテクノロジーオフィサー(Chief Technology Officer) James Harper Reed氏
    Reed氏はソーシャルソフトウェアやオープンソースに傾倒。コーネル大学でコンピュータサイエンスを学び、ソフトウェアエンジニア、Webプログラマなどを経て、オバマ氏のキャンペーンに参加。

  • チーフテクノロジーオフィサー代理(Deputy Chief Technology Officer) Mike Conlow氏

  • 投票人体験ディレクター(Director of Voter Experience) Anthea Watson Strong氏
  • ユーザー体験ディレクター(Director of User Experience) Jason Kunesh氏
  • UI/UXデベロッパー(UI/UX Developer) Aaron Salmon氏
  • フロントエンドWeb開発ディレクター(Director of Frontend Web Development) Daniel Ryan氏
  • フロントエンドWeb開発ディレクター代理(Deputy Director of Frontend Web Development) Kyle Rush氏
  • エンジニアリングディレクター(Director of Engineering) Dylan Richard氏
  • シニアセキュリティエンジニア(Senior Security Engineer) Ben Hagen氏
  • シニアソフトウェアエンジニア(Senior Software Engineer) Justin Vincent氏
  • デベロッパー(Developer) Ryan Kolak氏
  • エンジニア(Engineer) Angus Durocher氏、Jesse Kriss氏
  • ソフトウェアエンジニア(Software Engineers) Gabriel Burt氏、Clint Ecker氏、Derek Brooks氏、Nick Leeper氏、Zane Shelby氏、Will St. Clair氏

  • リードDevOps(Lead Dev Ops) Scott VanDenPlas氏

  • コミュニティアウトリーチリード(Community Outreach Lead) Catherine Bracy氏

データ担当チーム

データ担当チームは、ビッグデータの収集管理と分析をミッションとしています。このチームで興味深いのは、責任者のDaniel Wagner氏が弱冠29歳と若い一方で、おそらく中心人物であろうチーフサイエンティストのRayid Ghani氏がカーネギーメロン大学で機械学習を専攻し、アクセンチュアテクノロジーラボに在籍というハイスペックな経歴を備えているところです。高度な分析を実現するには、こうしたアカデミックな戦力が重要になってくるのかもしれません。

  • チーフ分析オフィサー(Chief Analytics Officer) Daniel Wagner氏
    Wagner氏は、2008年からオバマ氏のキャンペーンに参加。29歳(それ以外の経歴は分かりませんでした)。

  • チーフ分析オフィサー代理(Deputy Chief Analytics Officer) Andrew Claster氏
    エール大学で政治科学を専攻、Schoen & Berland社でアナリスト、World Bankでコンサルタントなどを経て、2011年からオバマ氏のキャンペーンに参加。

  • チーフサイエンティスト(Chief Scientist) Rayid Ghani氏
    1999年にサウス大学でコンピュータサイエンスと数学を専攻。2001年にカーネギーメロン大学で機械学習を研究。50以上の論文を執筆。アクセンチュアテクノロジーラボのシニアリサーチャー/シニアリサーチアナリストを経て2011年にオバマ氏のキャンペーンに参加。

  • データディレクター(Director of Data) Ethan Roeder氏

  • データマネージャ(Data Manager) Ben Fuller氏
  • データ担当(Data) Warren Flood氏
  • データベースエンジニア(Database Engineer) Noel McKinney氏
  • データベース管理者(Database Administrator) William Wanjohi氏
  • データアナリスト(Data Analyst) Nathan Sterken氏
  • レポーティングマネージャ(Reporting Manager) Daniel Scarvalone氏
  • 地域別データマネージャ(Regional Data Managers)(support state data directors)Midwest Ed Coleman氏、Great Lakes/Mid-Atlantic Lena Tom氏
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Junichi Niino(jniino)
IT系の雑誌編集者、オンラインメディア発行人を経て独立。2009年にPublickeyを開始しました。
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