マイクロソフト、企業向けSaaS「Office 365」発表。デスクトップ版Officeも含む月額課金で、日本では600円~2540円

2010年10月20日

米マイクロソフトは、これまで「Microsoft Business Productivity Online Suite」(BPOS)という名称で展開してきた企業向けのSaaSを刷新し、「Microsoft Office 365」として提供することを発表。専用のWebサイト「Microsoft Office 365」も用意し、ベータプログラムの公開を開始しました。

Microsoft Office 365 - Online Services & Hosted Software in the Cloud

Office 365の最大の特徴は、デスクトップ版Office、Web版OfficeがSaaSサービスと一体で月額課金により提供されるところ。Google Appsに明確に対抗するサービスといえます。

Office 365に含まれる機能と価格

Office 365に含まれるのは、以下の製品およびサービス群です。注目すべきは、デスクトップ版Officeが月額課金で提供されるようになることでしょう。日本円では月額2540円でデスクトップ版Officeが利用できるようになります。

  • Office Professional Plus
    デスクトップ版のMicrosoft Office、Web版のOffice Web Apps
  • Exchange Online
    クラウドで提供されるExchange Server。メールサーバなどの機能を備える。
  • SharePoint Online
    クラウドで提供されるSharePoint Server。ドキュメント共有、グループウェア的な機能を備える
  • Lync OnLine
    クラウドで提供されるコミュニケーションサーバ。VoIPによる電話回線とインターネットとの接続や、インスタントメッセージング、ビデオ会議などを備える

Office 365には、企業規模による2つのエディションが提供されます。主な特徴を以下に記しました。また、このほかに教育機関向けのOffice 365 for educationがあります。

Office 365 for small business

  • 25人以下(最大50人)程度を想定
  • Web版のOffice Web Appsのみで、デスクトップ版Officeは含まず
  • 1人あたり25GBのメールボックス
  • Lync Onlineは、インスタントメッセージングと電子会議機能
  • 1人あたり月額 6ドル/600円

Office 365 for enterprises

  • Office 365のほぼ全機能を提供
  • デスクトップ版Officeなしで、1人あたり月額 10ドル/1000円
  • デスクトップ版Officeありで、1人あたり月額 24ドル/2540円

上記の情報は、Office 365のサイトで公開されているPricing and Plans – Office 365 Fact Sheetに基づいています(マイクロソフト日本法人の発表資料には日本円の価格は含まれておらず、変更される可能性があるかもしれません)。

それぞれのエディションに対するベータ版の申し込みが始まっており、正式公開は2011年初旬の予定です。

次の課題はカスタマイズ

Office 365の発表で、マイクロソフトがSaaSにおいてGoogle Appsと対抗することがより鮮明になりました。

これまでマイクロソフトがSaaSとして提供してきたBPOSには、Exchange Onlineによるメール機能は含まれていましたが、Google Appsが提供してきたワードプロセッサや表計算の機能はありませんでした。

しかしOffice 365はWeb版のOffice Web Appsを統合して機能面で対抗できるようになり、価格もGoogle Appsが年50ドル/6000円に対し、Office 365 for small businessが月額6ドル/600円で、年額換算すると72ドル/7200円と同価格帯になりました(従来のBPOSスイートは月額約1000円から)。

使い慣れたデスクトップ版Office、それに準ずるOffice Web Appsが統合されたSaaSは大きな魅力になるでしょう。さらに来年度には「Microsoft Dynamics CRM Online」も統合する計画とのことです。

これまでBPOS、Office Live、Office Live Small Businessなど、ばらばらでわかりにくかったマイクロソフトの企業向けSaaSが、Office 365のブランドの元で徐々に統一されていき、改善が進んでいることが分かります。

マイクロソフトのSaaSにおける次の課題はカスタマイズでしょう。ライバルのグーグルはGoogle Apps APIの提供やGoogle Apps Scriptによるサーバベースのスクリプティングによるカスタマイズの機能を少しずつ強化しています。セールスフォース・ドットコムでもSalesforce CRMにカスタマイズ機能を備えているだけでなく、Force.comによるPaaSとの強力な連携も可能です。こうした面ではマイクロソフトのSaaSはまだライバルに遅れをとっています。

しかし圧倒的なシェアを持つデスクトップ版のOffice、オンプレミス版のExchange SeverやSharePoint Serverと、SaaSで提供されるサービスの互換性が同社の最大の武器です。当面、マイクロソフトはこうした従来との互換性を全面に押し出してSaaS市場で戦っていくことになるでしょう。

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