見えてきたDocker社の戦略は、Dockerアプリのライフサイクル管理の掌握と、クラウドプロバイダのコモディティ化か。DockerCon Europe 2015

2015年11月18日

スペインのバルセロナで開催されていた「DockerCon Europe 2015」でのDocker社による一連の新発表は、これまで同社が展開してきたDocker関連ツール群を1つの戦略の下にまとめるものとなりました。

Docker CEO、Ben Golub氏が基調講演で示した戦略の柱は「Container as a Service」(CaaS)と呼ぶモデルです。これはDockerを用いてアプリケーションを開発し、本番環境へデプロイし、運用し、改善し続ける一連のサイクルをカバーするサービス群からなります。

同社はこのCaaSを構成するソフトウェアやサービスを、クラウドとオンプレミスの両方で提供する準備が整いつつあることを明らかにしました。

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Dockerの開発に必要なツール群は、WindowsにもMacにも対応した「Docker Toolbox」で提供します。

組織でDockerイメージを共有し、コラボレーションを行う基盤になるのは、クラウドサービスとしては「Docker Hub」、オンプレミスでは「Docker Trusted Registry」です。

そして本番環境にデプロイし、運用管理を行うためのサービスが、数週間前に買収したクラウドサービスの「Tutum」であり、オンプレミスでは「Docker Universal Control Plane」であることが発表されたのです。

同社はすでにDockerアプリケーションをクラスタとして運用するためのソフトウェア群として、Docker Engine、Docker Compose、Docker Swarm、Docker Networkingなどを提供しています。仮想マシンでも、クラウドでも、物理サーバでも、あらゆる環境でプロビジョニング、クラスタリング、オーケストレーションなどを実現できます。

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これで戦略に必要なピースは揃ったように見えます。

Docker社はVMwareを手本としているのではないか

要するにDocker社はバルセロナにおいてこう宣言したのです。

CoreOSやRed HatやGoogleやオープンソースなどたくさんのDocker関連のツールが世の中に存在するけれど、Docker社のツールだけで、開発からデプロイ、運用まで全部まかなえる、と。

さらに、世の中にはDocker対応を表明したクラウドサービスがたくさんあるけれど、Dockerのツールを使えば、Docker対応をしていようがいまいが、どのクラウドでも透過的にデプロイし運用し管理ができるよ、と。

前者は、Docker社のツールを使うことで、Dockerアプリケーションのライフサイクル全体を掌握できる、ということを示しています。

後者は、Docker社のツールを使えばクラウドプロバイダーは自由に選んでよい。クラウドはコンテナの入れ物であり、コモディティのようなものだ、と言わんとしているようです。

振り返ってみれば、Dockerはこの戦略を実現するために、自社での開発に力を入れるだけでなく買収にも積極的でした。主なものだけでもKitmaticを買収しSocketPlaneを買収し、Orchardを買収し、Tutumを買収してきたのです。

仮想化ハイパーバイザの分野で急成長を遂げてきたVMwareは、ハイパーバイザそのものはすでに無料化し、現在ではストレージ仮想化、ネットワーク仮想化、そして仮想化システム全体の可用性向上や運用管理のためのソフトウェア製品群を主力製品としています。同社の付加価値は仮想化ハイパーバイザを核としつつも、その周辺ツール群にこそある、というわけです。

DockerはそのVMwareを手本とし、コンテナ型仮想化の世界でまっしぐらに同様のビジネスモデルを築こうとしているように見えます。

現在、VMwareの競合となっているのはマイクロソフトやRed Hatのような基盤ソフトウェアを中心とした企業であり、そしてAWSやGoogleのようなクラウドベンダです。

Dockerの今回の発表を見ていると、Dockerもそうした企業との競合に手がかかったように見えます。

DockerCon Europe 2015

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