Amazonクラウド互換APIがデファクトになりつつある状況をどう思う? ~ クラウドごった煮パネルディスカッション(IaaS編 後編)

2011年1月25日

国内にあるクラウドのユーザーコミュニティに集まってもらい、ディスカッションを行う日本で初めてのイベント「クラウドごった煮」が、昨年末12月11日に開催されました。Windows Azureのユーザー会(Japan Windows Azure User Group、JAZ)の人たちが中心になり、つてをたどってほかのクラウドのユーザー会などに呼びかけて実現したものです。

(本記事は「Amazon、Azure、Niftyクラウドのいいところ、悪いところを本音で語り合う ~ クラウドごった煮パネルディスカッション(IaaS編 前編)」の続きです)

ほかのクラウドをどう評価している?

fig 画面左奥から、司会 新野淳一、Japan Azure User Group(JAZ)冨田順氏、ニフティ株式会社 山口亮介氏、AWS Users Group Japan(JAWS)横田聡氏。

新野 会場からの質問をもう1つ聞いてみましょう。

会場から 自分が使っているクラウド以外のほかのクラウドを見て、いいところ、悪いところなど思うところを教えてもらえませんか。

横田(AWS) 実は今日、Azureの画面を初めて見たんですよ。で、すごい設定項目がたくさんあって、ああいうインターフェイスが充実してるのはいいなと思いました。普通の人がぽちぽちやってできる感じだったので、そこはすごくいいなと思いました。

クラウドを使っていても、お客さんへの納品というのがあって、そのときに引き継ぎがあったりします。で、引き継ぎのときにAWSのコンソールとかを引き継ぐのは大変かなと思っているので、使いやすい管理コンソールはいいなと思っています。

山口(Nifty) NiftyクラウドからAzureやAWSをみてうらやましいなと思うのは、ユーザー会が充実していると。人がいっぱいいてうらやましくて、そういうコミュニティをどうやって作っていこうかな、というのが課題ですし違いだと思います。まあ、そもそも会社の規模が違います。マイクロソフト! Amazon! で、Niftyですからね(笑)

冨田(Azure) やっぱりユーザーグループがあるのは大事ですね。あと、Amazonさんもよく聞かれると思うのですが「いつ日本のデータセンターできるんですか」って。そういうのをよく聞かれるので、Niftyのように国内でやっているのは、日本の会社にとって大きいと思います。

Amazonの規模と経験はやっぱり大きいと思いますね。Azureは正式に始まったのって今年の2月(2010年2月)なんですね。だから1年たってないんですよ、正式リリースから。そういう経験や機能といった積み重ねの部分についてはAWSさんはリーダーシップをとっていると思います。

AWS互換APIがデファクトになりつつある状況をどう思う?

新野 会場からの質問は一区切りにして、ここで別の質問をパネリストの方に投げかけたいと思います。

最近のIaaSのトレンドとして、APIがAmazonクラウド、AWS互換になってきてますよね。NiftyクラウドがAWSとAPI互換ですし、オープンソースでもAWSとのAPI互換のクラウド構築ソフトウェアがでてきている。でもWindows Azureはそうではない。このことについて、それぞれどう思っていますか?

横田(AWS) 使う側の立場からすると、NiftyクラウドのようなAWS互換APIのクラウドが登場してくると浮気しやすい。お客さんからすると、AWSがヤダという場合に、API互換の別のクラウドがあるのはメリットだと思います。

作る側からすると、クラウドのAPIの上にミドルウェアを作ってもっと使いやすくすることがあると思うんです。例えば、ボタン1発でサーバ3台ロードバランシングで立ち上げてRDSにつなげて、みたいなお手軽セットみたいなツールを作ったりしますが、API互換ならクラウドを変えても使えるので、そういう点でもいいかなと思います。

新野 ということは、AWS互換APIのクラウドを前向きにとらえていると?

横田 そうです。思いっきり前向きにとらえています。

新野 では、そのAWS互換APIを採用しているNiftyクラウドさんはどうですか?

山口 中の人として話してもいいですかね?

新野 はい、いいです。

山口 NiftyクラウドのAPIを作ろうとしたときに、社内ではAWS互換にすることでリリースが1週間や2週間遅くなるのなら、独自APIでやってしまえばいいではないか、という議論がありました。しかし作っている側としては絶対それはだめだと、絶対AWS互換にするんだと。

クラウドを使うエンジニアの人からすれば、それまでのアプリケーションの設定を、AWSナントカからNifナントカに簡単に変えるだけでNiftyクラウドでも「動いた!」となれば、絶対その方が使いやすいだろうと思っています。

今後、われわれ独自の機能が出てきたときには独自のAPIも使わざるを得ないですが、基本的には、戦略的にそのようにさせてもらっていると。

先ほど、管理コンソールのUIがよくできているという話をしましたが、とはいえ30台や40台のサーバを画面からポチポチ設定すると疲れちゃいますから、APIを叩いてまとめてできる方がいいですし、用途としてこのサーバは何月何日に消すんです、というのが決まっていれば、自分で自爆するプログラムも作れますし。

新野 では、Azureユーザー会の冨田さんにもAWS互換APIについて聞いてみましょう。

冨田(Azure) わが道をいっているWindows Azureです(笑)

Windows AzureがAWS互換じゃないとイヤですか? といわれれば、個人的にはそうでもないと思っています。IaaSとしてAzureを見ると変わるのかもしれませんが、PaaSとして使っている分には、どうだろう、という感じですね。

横田(AWS) クラウドを使う側として考えると、AWSのコンソールと、Niftyのコンソールと、Azureのコンソールと、全部使いこなすのってちょっと大変なんですよね。なので、APIは変わったとしても、せめてメニュー構成や表示の仕方を統合して、インターフェイスでマッシュアップして使いやすくしてくれるとうれしいですね。

(次回は、記事「Google App Engineは敷居が高いのがメリット? セールスフォースは開発生産性が高いが制限にも苦しむ ~ クラウドごった煮パネルディスカッション(PaaS編 前編)」で、PaaSを提供しているSalesforce.com、Google App Engine、Herokuのコミュニティ代表の本音に迫ります)

クラウドごった煮パネルディスカッション

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Junichi Niino(jniino)
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