「Google vs Microsoft ~ 将来における戦い」をガートナーが戦略分析

2010年4月21日

クラウドで、そしてエンタープライズ市場で競合関係にあるグーグルとマイクロソフト。グーグルが切り開いたクラウドにマイクロソフトがWindows Azureで参入する一方で、マイクロソフトの牙城であったOSとオフィスアプリケーションに、グーグルがChrome OSやGoogle Appsで攻め込むという激しい戦いの構図となっています。

米調査会社のガートナーが、こうした両社の戦略と今後についての分析を明らかにしました。都内で行われている同社のイベント「未来志向で推進するITインフラ戦略」で今日(4月21日)の午前中に行われたばかりの講演「Google vs Microsoft ~ 将来における戦い」の内容を紹介しましょう。

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「一般には、グーグルがマイクロソフトのOSやOfficeを狙ってマイクロソフトに対抗しようとしているという見方が多いが、私たちは逆だと思っています。つまり、マイクロソフトはWindowsやOffice以外の収益源を求めており、そのために検索や広告の分野でグーグルに挑戦していると見ています」

ガートナーリサーチ バイスプレジデント兼上級アナリストのマイケル・シルバー氏は、両社の関係をこう解説します。以下、シルバー氏の発言をまとめました。

マイクロソフトの弱体化を狙うグーグル

グーグルはカウボーイであり、「情報の民主化」「20億人の次世代ユーザーの取り込み」「何者にも運命を支配する機会を与えない」といった戦略をとっているのに対し、マイクロソフトは「スチュワード」(客室乗務員)であり、「テクノロジの民主化」「規則的な企業成長」「次世代アプリケーションのためのプログラミングプラットフォームの定義と提供」を軸とした戦略をとっています。

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グーグルのクラウドに対してマイクロソフトはWindows Azureで対抗する一方、マイクロソフトのOSやOfficeに対してグーグルはChrome OSやGoogle Appsで攻撃しています。

これは非対称の戦いです。グーグルの戦略は、マイクロソフトの攻撃に1ドルのコストをかけるごとに、マイクロソフトは自分たちの市場を守るためにそれに10ドルをかけるだろう、こうしてグーグルのコストの10倍をマイクロソフトにかけさせることで弱体化させるということです。これがグーグルにとって有利に働くだろうと考えているのだと思います。

マイクロソフトの戦略:新たな成長分野の模索

マイクロソフトの収入源はビジネス分野(Office)とWindowsです。デスクトップ上のソフトウェアであるこの2つでマイクロソフトの収入源の59%を占めています。数年前はこれが80%で、しかも120%の利益を占めていました。つまりこの2つでしか利益がでず、他部門は赤字を出していたのです。最近はその状況も変わってきましたが。

マイクロソフトは既存の収益源で成長するのに苦労しており、それ以外の成長事業として検索や広告を模索しています。しかしいまそこを支配しているのはグーグルです。そのためには、デベロッパーだけでなくデザイナーや広告主への働きかけもしなければなりませんし、クラウドを新たなプラットフォームにしようとしています。しかしマイクロソフトにとってこの変化はなかなか難しいでしょう。

マイクロソフトのクラウド戦略はもっとも果敢です。パブリッククラウド、プライベートクラウドの両方に対応し、サードパーティによるホスティングにも対応します。SilverlightによるRIA、Webブラウザも持っていますし、モバイルにも進出しており、個人と企業の両方をターゲットにしています。収入源も通常のライセンス、サブスクリプション、それに広告ベースのものもあります。

幅広い領域に対応するのはいいことですが、それだけ戦略にはリスクも伴います。

グーグルの戦略:広告以外の収益は伸び悩み

グーグルの戦略も見ていきましょう。グーグルはほかの企業と大きく違っています。マイクロソフトの競合とも違っています。

グーグルは継続的に利益があがるビジネスモデルを備えており、それがマイクロソフトの脅威になっています。彼らは自分たちが何をやりたいかもはっきりと分かっていて、企業運営の方法もマイクロソフトとは異なっています。

グーグルの特徴は、物理的なハードウェアとソフトウェアのインフラをすべて持っていることです。独自のマザーボード、OS、ラック、ネットワーク、配電システムと、何百万ものコンピュータが1つのコンピュータとして機能するかつてなかった能力も備えています。クラウドではリーダーといえるでしょう。

一方で広告以外の収益は伸び悩んでいます。おそらく広告に対して5%~6%程度しかないでしょう。これを2倍にするには、2倍以上の努力をしなければならないはずです。こうした状態は数年続くでしょう。

もう1つの優位点はデータです。グーグルはアメリカ政府をしのぐデータを保有しています。このデータには多くの可能性があります。

例えば、ユーザーが病気や症状、薬などの検索をします。このデータを使えば、グーグルは病気などの流行を政府よりも早く予測できるでしょう。これを人類のために役立てることもできます。また、iPhoneのグーグルマップ検索では、どの場所でどんな検索をしたかが分かります。このデータを使って、例えばスターバックスがどこに新規出店すべきかといったデータをスターバックスに提供することができます。

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マイクロソフトにとっての脅威、グーグルにとっての脅威

マイクロソフトにとって最大の脅威は、ネットブックOSとChrome OSでしょう。マイクロソフトにとって、ネットブック用OSは機能が制限されていますが収益も少ないものになっています。また、グーグルのChrome OSはグーグルが無償で提供するOSです。アプリケーションはすべてWebブラウザ上で使います。これはグーグルが収益を上げようとしているのではなく、マイクロソフトを弱体化させようとしているものです。

Windows 7はマイナーバージョンアップでしたから、Windows 8は大きなアーキテクチャの変化が予想されます。しかしマイクロソフトにはWindows Vistaの教訓があり、大きな変更をすると企業がとびつかないだろうと認識しています。そうするとWindows 8では大きな変更がないのかもしれませんが、そうするとそんなものにお金をバージョンアップするか疑問を持たれることになるでしょう。

HTML5、AJaxといったWebアプリケーションもWindowsを必要とせずに動作するので、これもグーグルが望むとおりにマイクロソフトの大きな脅威になるでしょう。

グーグルは以前は王様のようであり、ネットの象徴でもありましたが、現在では多くの人が警戒するようになりました。欧州では独禁法の対象にもなっています。

それ以外の課題としては、あまりにも早くクラウド化を進めすぎていないか、という点です。また、同社の収入の60%をしめる広告分野で、広告代理店が同社を広告分野のリーダーと見ていないという点もあります。ただし、もしリーダーとなれたとしたら、そこは大きなチャンスかもしれません。

Webベースのソリューションの検討を

マイクロソフトとグーグルについて、よくある質問についてお答えしましょう。まず、マイクロソフトは危機を脱したのか? です。

Windows Vistaの失敗したプロダクトの危機からは脱しました。Office Liveのようなオンラインサービスにも参入し、Windows 7も成功しつつあります。しかしネットブックの収益の不安や、成長分野はまだ必要であるという点でまだ完全ではありません。

グーグルはエンタープライズへの対応準備ができたのか? もよく聞かれる質問です。

GMailはユーザー基盤が大幅に拡大し、ブラックベリーやOutookなどへの対応もしてきました。一方で、マイクロソフトのOfficeに代われるほどではないかもしれませんし、広告以外の大きな収益になっていない点があります。エンタープライズへの対応はある程度できているが、まだ十分ではないといえます。

こうした中で、CIOやエンタープライズ・アーキテクトの方への提言です。

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マーケットは変化してきており、もしかしたら製品の購入方法が変わってくるかもしれません。一部のユーザーはマイクロソフト製品ではなくとも、Web版のオンラインアプリケーションでも十分になってくるかもしれません。そうしたことに準備し対応するべきです。

また、2015年までのマイクロソフトの戦略について言えば、製品の提供方法や収益手段の多様化が予測されます。これにより価格の変化、価格の下落があるかもしれません。こうしたことを考慮したほうがよいと思われます。

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カテゴリ 業界動向 / IoT / その他
タグ  Google , Microsoft


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