Windows時代の幕引きをねらう、Silverlight 4とAIR 2とChrome OS

2009年12月3日

WindowsのようなクライアントOSをターゲットにしたネイティブアプリケーションの時代は終わる。その最終案内を告げるような発表が、先月相次いで行われました。

口火を切ったのはマイクロソフト自身です。11月18日、ロサンゼルスで行われた同社のイベントPDC09で「Silverlight 4」を発表、β版の公開も開始しました。

同じ日、それにぶつけるようにアドビシステムズも「AIR 2」のβ版提供の開始を発表しています

その2日後の11月20日、今度はグーグルが「Chrome OS」の基となる「Chromium OS」プロジェクトの公開を発表しました。

よりネイティブアプリ環境に近づくAIR/Silverlight

Adobe - Adobe AIR 2.0 beta

アドビシステムズのAIRは、Webアプリケーションのデスクトップアプリケーション化というコンセプトで昨年登場。Flash、HTML、CSS、JavaScript、そしてSQLiteのローカルストレージを統合したプラットフォームです。

今回発表されたAIR 2では、マルチタッチやジェスチャーのサポート、印刷機能の改善、新たなネットワーク機能の追加など、よりネイティブアプリケーションの実現に近づいたプラットフォームとしての強化が行われています。

Silverlight 4 ベータ開発環境 - Microsoft Silverlight

一方でそのAIRとFlashを追う形となっているマイクロソフトのSilverlight 4では、AIR 2以上にネイティブアプリケーションを意識した機能追加を行ってきました。AIRと同様に印刷機能の強化などはもちろん、単独のウィンドウとして動作するOut of Browser機能にはTrusted Applicationモードが追加され、ローカルリソースへのアクセス制限が緩和されるようになります。

どちらも目指しているものは1つ。アプリケーションプラットフォームとなることです。

クライアントミドルウェアの台頭

AIRやSilverlightの登場で、いままでWindowsやMacOSなどのクライアントOSをターゲットにして開発されていたクライアントアプリケーションに、AIRやSilverlightをターゲットとする新たな選択肢が加わりました。

実際、多くのツイッタークライアント、例えばTweetDeck、Seesmic DesktopなどはAIRアプリケーションであり、Windows、MacOS、LinuxなどのAIRの動作環境でそのまま実行可能です。それ以外にも多くのAIRアプリケーションが登場しています。

さらにAIRでは先日の記事「オフラインに対応するクラウドアプリケーション、SalesforceとAIRの組み合わせで実現」でも紹介したように、ビジネスアプリケーションのフロントエンドとしての利用も始まっています。

Silverlightでは、まだこうしたアプリケーションの展開で目立つものはありませんが、Visual StudioによるSilverlightアプリケーション開発ではC#やVisual Basicなどの言語も利用可能です。今後、これらの言語に親しんだ開発者が徐々にSilverlightベースのアプリケーションを開発することが予想されますし、マイクロソフトはそれを後押しするような施策を積極的に展開してくるでしょう。

クライアントアプリケーションは徐々に、OSをプラットフォームとして開発する時代から、AIRやSilverlightといったもの。これを総称して何と呼べばいいのか分かりませんが、仮にそれを「クライアントミドルウェア」と呼ぶとすれば、そのクライアントミドルウェアをプラットフォームとして開発するようになっていくはずです。

サーバアプリケーションでは一足先にこの状況が始まっています。いまや、サーバOSネイティブなアプリケーション開発よりも、Java、Perl、PHP、そして.NET Frameworkといった言語とそのライブラリまたはフレームワーク、そしてデータベースの環境が整った「ミドルウェアレイヤ」をターゲットにして、サーバアプリケーションを開発することが一般的となっています。ミドルウェアレイヤさえ同一なら、サーバOSは何でも構いません。

クライアントでも同じ状況が発生すると予想します。OSは何でもよくなり、開発はクライアントミドルウェアをターゲットにして行われ、実行されることになる。これが、これからのクライアントアプリケーションの姿となりそうです。

グーグルはChrome OSで参戦。武器はHTML5

Official Google Blog: Releasing the Chromium OS open source project

クライアントOSは何でもよくなる、この状況を一足飛びに実現しようとしているのが、グーグルのChrome OSといえます。

グーグルは、Webブラウザこそクライアントミドルウェアだとして、ただそれだけを実行する専用のOSとして「Chrome OS」を開発中です。

グーグルの武器は標準仕様としてのHTML5です。HTML5とその周辺仕様には、Flashのような表現力を持つCanvas、マルチメディア再生可能なビデオ、オーディオ機能もあり、さらにローカルストレージ機能や通信機能まで含まれており、JavaScriptによる柔軟なプログラミングが可能です。

グーグルはこうしたHTML5など標準仕様の機能強化によって、ネイティブアプリケーションはWebアプリケーションに置き換えられていくだろう、というビジョンを持っています。

クライアントミドルウェアを制するものは誰か?

Windowsのネイティブアプリケーションが、徐々にWebアプリケーションや、ここで紹介したようなクライアントミドルウェアベースのアプリケーションへと移行していくのは、全体の大きな傾向と考えられます。長くなってしまうので指摘のみにしますが、クライアントミドルウェアの登場の大きな理由として、アプリケーションのモバイルデバイス対応も容易になるという点も挙げておきます。

そして先月のマイクロソフト、アドビシステムズ、グーグルからの相次ぐ発表は、その傾向をはっきりと示してくれた1つの象徴的な出来事でしょう。

と同時に、Windowsからアプリケーションプラットフォームの座を受け継ぐのは、果たしてAIRなのでしょうか、それともSilverlightになるのか、はたまたHTML5という標準になるのでしょうか。今後その競争はますます激しくなると予想されます。

そしてその決定権を握っているのは、クライアントアプリケーションをこれから開発するプログラマーたちだといっていいのではないでしょうか。

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タグ : Adobe Air , Chrome , Flash , Silverlight , Windows



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