Mozillaが大規模リストラ。「すべてが無料だった古いモデルには結論が出た」として今後は新たなビジネスモデルを模索すると

2020年8月18日

Mozilla CEOのMitchell Baker氏は11日、「世界的なパンデミックによる経済状況は、私たちの収益に決定的な影響を及ぼした」(Economic conditions resulting from the global pandemic have significantly impacted our revenue)と、同社の苦しい財政状況をブログ「Changing World, Changing Mozilla」で明らかにしました。

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そのうえで全世界で約1000人の同社従業員の約4分の1にあたる250人を解雇するという大規模なリストラを発表しています(ちなみに2018年の同社のレポートによると、Mozilla Corpは1000人以上。Mozilla Foundationが約80人の従業員を抱えている)。

さらに「私たち自身もまた、より迅速かつ機敏に行動できるよう、自分たちの組織を刷新します」(We’ll also be organizing ourselves very differently, acting more quickly and nimbly.)と、新しい方針の下、新たなビジネスモデルの模索を始めるとしました。

新しいビジネスモデルを模索するMozilla

Baker氏は新しい方針としてブログで、次の5つの分野について説明をしています。

「1. New focus on product.」
「2. New mindset.」
「3. New focus on technology」
「4. New focus on community」
「5. New focus on economics」

1から4までは、人々の問題を解決する製品に焦点を当て、積極的で好奇心旺盛なマインドセットを持ち、テクノロジー面で活発であり、オープンなコミュニティに貢献していくといった、従来の方針の延長と見られる内容が並んでいます。

注目すべきは「5. New focus on economics」(経済面での新たな焦点)でしょう。

Baker氏はこの項目で「すべてが無料という古いモデルには結論が出た」と切り出しています。

Recognizing that the old model where everything was free has consequences, means we must explore a range of different business opportunities and alternate value exchanges.

すべてが無料という古いモデルには結論が出たと認識している。つまり、私たちは別のビジネスチャンスや異なる価値の交換について模索しなくてはならない。

Mozillaによるソフトウェアやサービスのほとんどすべては、Firefoxをはじめとして無料で提供されてきました。

無料で提供することが多くの人に使ってもらうことにつながり、多くのユーザーがFirefox経由でGoogleなどの検索エンジンを使うことで、FirefoxからGoogleなどへユーザーを誘導できます。

そしてそのトラフィックの対価として、Googleなどの検索エンジン企業から金銭を得る。これがMozillaの従来のビジネスモデルになっています。Mozillaの収益のかなりの部分が、こうしたトラフィックから得られていたことが知られています。

しかしBaker氏は、こうしたこれまでのビジネスモデルは古いモデルであると明言し、新しいビジネスモデルを模索しなければならない、としています。

それはどのようなモデルなのでしょうか。Baker氏は次のようにかなりもったいぶった説明をしつつ、具体的説明は避けています。しかしあえて深読みすると、要するにこれまでよりも商業的な製品展開を検討している、と考えているように読み取れます。

How can we lead towards business models that honor and protect people while creating opportunities for our business to thrive? How can we, or others who want a better internet, or those who feel like a different balance should exist between social and public benefit and private profit offer an alternative? We need to identify those people and join them. We must learn and expand different ways to support ourselves and build a business that isn’t what we see today.

私たちはどうすればビジネスチャンスを得て成長しつつも、人々を尊重し、守っていくビジネスモデルへと導いていくことができるでしょうか? 私たち、または、よりよいインターネットを望む人たちや、あるいは社会的公的な利益と私企業の利益にはこれまでとは異なるバランスが存在すべきだと感じている人たちに、どうすれば代替案を提示できるでしょうか? 私たちはそう考える人たちを見つけ出して、一緒にならなければなりません。私たちは、自分自身を支援するための、これまでとは別の方法を学び、拡大し、そしていまあるのとは異なるビジネスを構築しなければなりません。

具体的にそれがどのようなものになるのか。それが見えてくるにはまだ少し時間がかかるのかもしれません。

MDNチームやDevToolチームなどは縮小するも存続

このMozillaの大規模なリストラを巡っては、いくつか未確認の情報が出回っていました。

例えばMDNの全スタッフがリストラされたのではないか、という情報が出回っていたようですが、チームは縮小されるものの、パートナーやコミュニティなどと協力していくとのこと。

MDNは、2017年にマイクロソフトやGoogle、W3Cなどが協力してWeb標準のリファレンスとして一本化されたドキュメントを提供している重要な情報源です。

Developer Toolsチームも縮小されるものの、存続するとのこと。

Rustでブラウザエンジンを実装するServoチームの解散についても心配する声がありますが、すでにServoチームの主要な成果はGeckoに取り込まれており、大きな違和感はないという指摘もあります。これには一定の説得力があるように思えます。

いずれにせよ、インターネットが健全に進歩していくためには、さまざまな選択肢があることが重要です。Mozillaがその重要な一角を担っていることは誰の目にも明らかでしょう。

それゆえに、リストラをはじめとする今回の大きな変化が奏功し、引き続きMozillaが重要な選択肢を担う組織でありつづけられることを期待したいです。

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Junichi Niino(jniino)
IT系の雑誌編集者、オンラインメディア発行人を経て独立。2009年にPublickeyを開始しました。
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