Microsoft Azure上での実行目的ならJavaの長期サポート(LTS)を無料提供、MacやWindowsでの開発用途もOK。マイクロソフトとAzul Systemsが提携で

2018年9月27日

Javaの独自ビルドを提供しているAzul Systemsとマイクロソフトは、Microsoft AzureもしくはAzure Stackで実行する目的であれば、Javaの長期サポート(LTS:Long Term Support)を無料で提供すると発表しました(マイクロソフトの発表Azul Systemsの発表)。

これまでJavaのバージョンを固定し、そのバージョンに対応したセキュリティパッチやバグフィックスを継続的に適用し利用し続けることは無料でできました。オラクルがJavaのLTS対象のバージョンに対するセッキュリティパッチやバグフィクスの提供を無料で行っていたためです。

しかし9月25日付けでリリースされたJava 11からオラクルはこの方針をあらため、LTS対象のバージョンに対して6カ月を超えてオラクルからセキュリティパッチやバグフィクスを受け取るには、同社と有償のサポート契約が必要となりました。

業務システムなどでJavaのバージョンを固定し安定した環境でJavaの開発や運用を行うには、LTS版のJavaを利用し継続的にバグフィクスやセキュリティパッチを適用していくことが望ましい方法です。これまでと同様に無料でこれを実現したいと考えるユーザーにとって、オラクル以外の選択肢に対する模索がはじまったばかりでした。

参考:Java 11正式版がリリース、本バージョンからOracle JDKのサポートは有償に。OpenJDKで無償の長期サポート提供は現時点で期待薄

そこに手を挙げたのが、今回のマイクロソフトとAzul Systemsの発表というわけです。

Azureでの実行用だけでなくWindowsやMacでの開発にも

Linuxにさまざまなディストリビューションベンダが存在しているように、JavaもJavaコミュニティが開発しているOpenJDKのソースコードをもとにバイナリをビルドし、パッケージとして提供するベンダやコミュニティが複数存在します。

オラクルはそのもっとも代表的なベンダであり、Azul SystemsもそうしたJavaのビルドを独自に提供しているベンダの1つです。

今回マイクロソフトとAzul Systemsが提携して提供する「Zulu Enterprise」は、Azul SystemsによるOpenJDKのビルドであり、同社の拡張されたテストによってOpenJDKとの互換性が保たれていると説明されています。

提供されるバージョンはJava 7、Java 8、Java 11の3つ。いずれもLTS対象のバージョンであり、この3つのバージョンとも同社はいまから3年以上となる2021年末までセキュリティパッチやバグフィクスを無料で提供するとしています。しかも、Windows版、Linux版、Mac版が揃っています(ダウンロードページ)。

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利用条件はAzure上での開発や本番環境だけでなく、Azureで実行することを想定している開発であればWindowsやMacでの開発で使ってもいいとされています。「Microsoft and Azul Systems bring free Java LTS support to Azure」から引用します。

You can run Zulu Enterprise builds of OpenJDK in Windows or Linux virtual machines in Azure or Azure Stack. You can also download them for Java development on Windows, Linux, and MacOS:

OpenJDKのビルドであるZulu EnterpriseをAzureもしくはAzure Stack上のWindowsもしくはLinuxの仮想マシンで利用可能だ。そしてWindows、Linux、MacOSでのJava開発でもダウンロードできる。

Azul Systemsは知名度は高くありませんが、オラクルがLTSのサポートを有償化するこのタイミングを狙って、以前からAzul Enterpriseの積極的なプロモーションを行っていました。

今回のマイクロソフトとの提携と提供は、一気に同社のソフトウェアの利用者を増やすことにつながりそうです。マイクロソフトにとっても、Javaデベロッパーに対してAzureをアピールする大きなチャンスになりそうです。

ただし、オラクルがそうだったように、ある企業の方針がこの先5年も10年も同じであるという保証はありません。特に業務アプリケーションの基盤を選択するのであれば、そうした少し冷めた目で見るのがちょうどいいのではないでしょうか。

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Junichi Niino(jniino)
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