ソラコムのビジネスモデルは? 開発期間は? キャリアの大資本参入にどう対抗する? 玉川憲社長に聞く

2015年10月1日

9月30日に、これまでにないIoT向け通信サービスを発表したソラコム。同社のビジネスはは、クラウド上にキャリアグレードのパケット交換機能をソフトウェアとして実装したことを基盤にしています。

ソフトウェアとして実装したことにより、APIを含むさまざまな機能追加の可能性が生まれることが同社最大のセールスポイントであり、一方でクラウド上で実装することにより、高価なハードウェア投資を不要とし(キャリアグレードの交換機を購入することはそもそもスタートアップには困難だろう)、しかもクラウドの従量課金を活用することで、ユーザーが少数であれば同社がクラウドに支払う金額も少額、ユーザーが増えてくればそれに比例してシステムをスケールアウトできるという利点を得ています。

ソラコムはどのように自社の核となるソフトウェアを実装し、ビジネスモデルを組み立てているのでしょうか。代表取締役社長 玉川憲氏に聞きました。

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Amazonクラウドの価格体系に影響を受けた

──── ソラコムのビジネスモデルは?

玉川氏 最大の収入源はデータ通信の料金体系です。原価に対して私たちのコストをちょっとだけ乗せています。サービスをどのように利用していただいたとしても、通信していただかなかったとしても、私たちのビジネスとなるように設定しています。もちろんSORACOM Beamのようなサービスも同様です。

──── 価格表を見ると、AWSの料金体系に影響を受けているように見えます。

玉川氏 影響は受けていますね。基本的にはフェアプライスとオープンプライス。どのお客様もわけへだてなく同じ価格です。そしてサステナブルな価格体系、例えばここをこうすると無料になる、といった悪用がされない価格体系にも気を配りました。

──── Amazonクラウドの上に、キャリアグレードの交換機をソフトウェアで実装するというのは非常にチャレンジングに見えます。どのように開発したのでしょう?

玉川氏 CTOの安川(安川健太氏)はもともとテレコムベンダの研究所にいて、そうした経験がありました。ほかにもキャリア出身のエンジニアがいます。

交換機の部分だけではなく、計測や課金、Beamといった機能をプラットフォームとしてゆがみのない形で作るというのはチャレンジングで面白いいところでした。

設計思想としてはAPIを使ってマイクロサービス的な構造にしています。ネットワークサービスのコアの部分、Webフロント部分、課金や監視の部分がきれいに分かれています。

開発していて、あらためてAWSは便利だなと思いました。性能や耐障害性についても、AWSのうえでテストや実装などに必要な部品が揃っていますし。

開発期間や人数は?

──── ソラコムのシステムの開発期間や人数は?

玉川氏 本格的に開発を始めたのは3月の半ばくらいからで、いま(このインタビューをしたのは9月24日)は9月下旬ですから、半年みっちりです。開発に関わったのは、私を入れて7~8人。このメンバーでがっつり作ってきました。

それぞれのエンジニアは、どの会社でもCTOとして通用するクラスの優秀な人材です。あるエンジニアはデータの通信料の測定と課金を、あるエンジニアはパケット交換機能のコアを、あるエンジニアはSORACOM Beamを開発する、といった分担でした。

──── これからサービスインすると運用も大変になるのでは?

Amazonをはじめとした何世代目かのインターネット企業では、作る人と運用する人は同じで、自分で運用するつもりで作ります。ですので、品質に対するメンタリティがそもそも違います。

何かあっても自動的に回復するようにしてあるとか、自動的に再構築されるとか、そういうところにもケアをしています。

また運用の視点からエンジニアリングを担当しているエンジニアもいます。自動化してメトリクスを取り、Slackで情報共有し、なにかあればエンジニアみんなで対応するようにしたいと日々努力しています。

大資本の参入にどう備えるのか?

──── ソラコムのIoTネットワークビジネスが有望と分かれば、大資本を持ったキャリアが参入してくることも考えられます。どう対抗しますか?

玉川氏 私たちがクラウド上に実装したパケット交換機能は、スケールする仕組みとして特許も出しています。また、お客様の要望を拾い上げて新しいサービスを作り上げる、このスピードこそがコアコンピテンシになると思っています。

その一方で、これが他社に真似できますか、という考えもあります。きちんと真似をするには、その本質を理解する必要があります。けれどクラウドが登場した当初のことを思い出してみるとその本質が理解されるのには時間がかかったし、仮想化しただけのようなクラウドの本質を備えずに実装されたものも出てきました。だからそんなに簡単に真似できないのではないか、とも思います。

あるいは、真似したものが出てきたとすれば、みんなで真似をしたいビジネスモデルが作れたとしたら、そこまでいけば私としては大満足です。

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Junichi Niino(jniino)
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