インタビュー:ネットワーク仮想化で注目される米ベンチャーNicira Networksが実現しようとしていること

2011年11月16日

いまネットワーク業界では「ネットワークの仮想化」や「プログラマブルなネットワーク」という新しいコンセプトの実現に向かって、大きな変化が起きようとしています。

Nicira Networks, Inc.

そのなかで大きな注目を浴びているベンチャー企業があります。米Nicira Networksです。

同社はこの変化のカギとなる標準技術の「OpenFlow」を実質的に開発した企業であり、すでにOpenFlowに対応したソフトウェア製品を開発、提供を開始している先行ベンダーです。それだけでも十分注目に値する企業ですが、同社は現在ステルスモードとして対外的な広報活動をしていないため、戦略や製品の内容が公開されていないことも、同社への注目度をさらに高めています。

Publickeyは、同社がステルスモードにもかかわらずインタビューの機会を持つことができ、その一部分について公開する許可を得ました。インタビューには、同社国内代理店の東京エレクトロンデバイスにご協力いただきました。

Nicira Networks CEOのSteve Mullaney(スティーブ・ムレイニー)氏によると、今回が同社にとって初めてのインタビューになるそうです。同社が実現しようとしていること、OpenFlowとの関連について聞きました。

ネットワーク業界で本質的に起ころうとしていることとは

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──── なぜネットワーク仮想化が注目されているのでしょうか、Nicira Networksはそのなかで何をしようとしているのでしょうか?

ムレイニー氏 コンピュータの世界では、サーバやストレージの仮想化が進み、これによってビジネス効率やスピードが向上してきました。

サーバ仮想化やストレージ仮想化で物理的なハードウェアから論理レイヤが切り離されたのと同じように、ネットワークでも物理的なネットワーク構成から論理的なレイヤを切り離し、ソフトウェアによってこれまでと同じ機能を備えたネットワークを実現することが求められています。

これがいまネットワーク業界で本質的に起ころうとしていることです。

私たちはこれを、お客様の既存の物理的なネットワークインフラを保ったまま、ソフトウェアで実現しようとしています。これが私たちの大きな差別化要因です。

お客様は次世代のクラウドが欲しいといわれる。私たちは、それはいまのお客様のインフラに私たちのソフトウェアを追加するだけでできるんですよ、と答えています。

私たちは自分たちを「Most Disruptive, Non Disruptive company」(最も破壊的で、しかし何も破壊しない企業)だと考えています。というのは、私たちは従来のネットワークモデルを大きく変革しようとしている企業である一方で、お客様の既存のネットワーク環境は壊さずにそれを実現しようというアプローチだからです。

──── Nicira Networksがステルスモードなのはなぜですか?

ムレイニー氏 いくつか理由があります。1つはお客様にフォーカスするためです。いま私たちはネットワークに変革をもたらすという大きな仕事をしています。それを発表する際には、お客様から支持を得た上で行いたいと思っています。NTTのような大手の通信事業者、クラウドベンダー、自社のデータセンターを構築しているような大手企業にも賛同してもらいたいと考えています。

そしてラボで実験しているというレベルではなく、本番環境で稼働しているという実績とともに発表したいと考えています。

また、すでに大手の通信事業者などと交渉やビジネスの話を始めているため、何かを発表する必要に迫れられているわけではないことも理由の1つです。

NiciraとOpenFlowとの関係は?

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CEOのムレイニー氏に続いて、同社Co-Founder&CTOのMartin Casado(マーチン・カサード)氏に、同社の技術面について聞きました。カサード氏はOpenFlowを最初に作ったその人でもあります。

──── Nicira NetworksはOpenFlowの技術とどう関わっているのでしょうか?

カサード氏 OpenFlowはNiciraが作ったものです。というのも、OpenFlowはスタンフォード大学での私の研究から始まったもので、スタンフォードの博士号を取得するための、クラウドを活用するネットワークの研究がOpenFlowを作るきっかけになりました。

私がOpenFlowの最初のドラフトを書き、Niciraの初期メンバーが最初のバージョンを作り上げています。2007年のことです。

そのチームは、私とスタンフォードで私のアドバイザーだったNick McKeown(ニック・マキューン)、Ben Pfaff(ベン・ファフ)、Justin Pettit(ジャスティン・ペティット)で、それをスタンフォード大学に提供してコミュニティ「OpenFlowコンソーシアム」を作ったのです。

重要なのは、OpenFlowはあくまでもスイッチと話すための方法であって、それだけでは何もしません。しかしそれがソフトウェアでネットワーク仮想化を実現するのです。

NiciraはOpenFlowのリファレンス実装、Open vSwitch(OpenFlowに対応したソフトウェア仮想スイッチ)も開発しています。

そして私たちはOpenFlowより先行しています。OpenFlowの標準化は私たちのあとからキャッチアップしてくることになるでしょう。

同社は2月にステルスモードを終える予定

インタビューでは同社がどのような技術と実装を用いてネットワーク仮想化やオーバーレイネットワークを実現しているのかに及びましたが、残念ながらインタビュー時の約束により、まだ技術の詳細をここに書くことはできません。

同社は来年2月にステルスモードを終了する予定としており、終了時にはPublickeyにもいちはやく連絡をいただくことになっています。そのときには、あらためて詳しい内容を紹介する予定です。

fig 写真左からNicira Networks Vice President Asia Pacific Sales F. Matthew Young III氏、VP Marketing Alan Cohen氏、CTO Martin Cassado氏、CEO Steve Mullaney氏、ニシラ・ネットワークス・ジャパン 技術部長 進藤資訓氏

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OpenFlowがどんな技術なのかは、以下の記事をご参照ください。

Tags: ハードウェア 仮想化 OpenFlow ネットワーク

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