クックパッドの海外展開プロダクト開発ノウハウとは(後編)~ORは「オワ」か?「オレゴン州」か? 問題。Cookpad TechConf 2017

2017年1月23日

海外展開するプロダクトの開発にはどんな困難が降りかかるのか。1月21日に都内で行われたイベント「Cookpad TechConf 2017」から、クックパッドの海外事業部でプロダクトの開発を行う滝口健太郎氏のセッション「Go Global」の内容をまとめました。

(本記事は「クックパッドの海外展開プロダクト開発ノウハウとは(前編)~検索結果に言語や宗教が影響する。Cookpad TechConf 2017」の続きです)

開発の段階で翻訳を意識する

次に翻訳です。

文字や言語の成り立ちがデザインに与える影響というのはけっこうあって。

例えば英語でもこんなプログラムを書いたら、男性女性の単語の変化や複数形でやられたりします。

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テキスト中にUIコンポーネントを組み込むと、ほかの言語で語順が変わったときに使えなくなるので、こういうのもやってはいけません。

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各言語で「BUtterfly」をどう表記するかを例にすると、漢字はその文字自体が意味を持っているので1文字で表現できますが、言語によってはすごく長くなるものがあって、エンジニアはつねに、このフレーズが長くなったらどうしようかと考慮しながらコードを書いたりとか。

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フレーズに対して、ここは何文字以内でお願いしますというアノテーションを付けられるので、そういうこともしています。

ORは「オワ」か?「オレゴン州」か? 問題

実装が終わったら翻訳を依頼するのですが、正しく翻訳するというのもけっこう難しい問題です。

例えばこの、「O」と「R」でできた単語を見て、これが「AまたはB」のオワを指すのか、オレゴン州の州コード「OR」を指すのかは、コンテキストがない限りどちらも正解です。

Kindleで「ライブラリに移動」「オレゴン州」「ショッピングを続ける」ということがあったそうです。翻訳でコンテキストを伝えるというのはそれだけ重要なわけです。

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「Premium」という言葉は日本ではわりとポジティブな言葉だととらえられていると思いますが、同僚のイギリス人いわく、英語圏で「Premium」は無課金ユーザーを差別しているようなネガティブな印象を与えて良くないということで、Amazon.comでも国によって単語を変えています。

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クックパッドでも「Premium」というサービスがあるので単語を変えようというのがあったりとか、同じ機能でも国が変わると呼び方が変わることがあります。

翻訳はテキストだけとはかぎりません。

サービスにあるプレイスホルダーの画像ですが、以前はキノコやライスを使っていたのですが、これらは世界中で食べられているわけではないので、もっと一般的な鶏肉やジャガイモに変えたりしていますし、アップストアのスクリーンショットも国ごとに変えて、これは自分の国のレシピが出てくるんだ、ということをアピールしています。

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で、時間がないので少し飛ばします。

国籍はばらばら、世界中に分散している開発チーム

そんなグローバルなサービスを開発しているチームについて。

これがミーティングのようすで、国籍はばらばら、開発者は世界中に分散しているので公用語は英語、ミーティングはビデオチャットでしています。

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複数のタイムゾーンにまたがっているので、全員を完全に同期したりコントロールするのはむずかしいです。

そこで私たちのチームでは「OKR」という評価システムを採用しています。これはみんなで目標を共有して、それに対してどういうアプローチをとってもいいけど、目指す方向だけはぶれないようにしようねと、いうものです。

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で、自分が生活したこともない国について想像であーでもない、こーでもないと言っても仕方がないので、まずプロダクトをリリースできる形に持って行って、そこからログを収集し、状況を見て、ボトルネックになっているところを探して、改善して、というプロセスで、開発プロセスの中に検証も入れています。

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人事も英語対応が必要に。会社全体を巻き込んでグローバル化

採用については海外で全く無名というところから始めたのですが、例えば人事部長がベトナムまで行って現地の学生に説明したり、僕と同僚がスペインでハッカソンに参加したり、海外のカンファレンスでしゃべったり、スポンサーになってブースで店番をしたり、いろいろやっています。

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そうするうちにRailsのコアチームの人が興味を持って入ってくれたり、その人がまたすごい人を連れてきたりとか、そういう感じで採用をしています。

海外展開というのは、もはや海外事業部だけの取り組みではなくて、外国人が働くので勤怠管理のシステムとかも英語対応に切替えたりとか、人事も英語で対応しなくてはならなくなりましたし、実は人もツールもコミュニケーションも、会社全体を巻き込んでグローバル化しています。

そして日本のノウハウを活かして海外事業をやってきましたが、いまは逆に海外事業で学んだノウハウを日本にフィードバックもしていて、お互いに学びながらサービスを作っています。

ご清聴ありがとうございました。

Cookpad TechConf 2017

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